南極オゾンホール 規模の拡大止まらず
日本の70倍の大きさに
世界気象機関(WMO)は29日、南極のオゾンホールが観測史上3番目の大きさとなったと発表しました。
NASAの観測によると、10月2日にオゾンホールの面積が2820万平方キロメートルに達し、1979年観測開始以降、2000年(29.9万平方キロメートル)、2006年(29.6万平方キロメートル)に次ぐ3番目の大きさです。
大きさを比較すると、南極の約2倍、アメリカ合衆国の約3倍、日本の約70倍ですから、とてつもなく大きな穴ですね。
もともと、南極のオゾンホールは(南極の冬から春にかけての時期)、8月ごろから発生し、10月ごろにピークを迎え、11月ごろに消滅するという季節変化をしています。
毎年、オゾンホールが拡大しているというわけではなく、2012年は小さく、2013年は大きいというように、最近は大きくなったり、小さくなったりを繰り返しています。
今年は人的なフロンなどのオゾン層破壊物質に加えて、成層圏の温度が極めて低くなったことで、オゾン層の破壊が進んだとみられています。
世界気象機関の専門家は「オゾンホールの問題は今なお続いている。過度の警戒は必要ないが、今後もオゾンホールの変化を注意深く見ていく必要がある」と述べています。
日本人が発見した
オゾンホールとはオゾン量が減少し、オゾン層がまるで穴のあいたような状態になることから名づけられ、現在では世界的な環境問題として有名です。このオゾンホールを世界で初めて報告したのは気象庁の研究官でした。日本の昭和基地で行われていた地道なオゾン観測の結果です。
オゾンホールが発見された1980年代初めは、現在の5分の1以下の大きさでしたが、みるみるうちに拡大し、1990年代には今と変わらぬ規模になりました。
世界的な環境問題の解決の難しさ
オゾン層の保護を目的とした世界的な取り決め「モントリオール議定書(The Montreal Protocol)」が締結されたのは1987年です。フロンなどオゾン層破壊物質の製造や移動が世界的に厳しく制限され、冷蔵庫やエアコンなどにフロンガスは使われないようになりました。
しかし、オゾン層破壊物質の放出がストップしても、影響は数十年間にわたって残り、オゾン層が1980年代の規模に戻るのは今世紀半ばとみられています。
モントリオール議定書は世界的な環境問題の取り組みとしては成功例といえるでしょう。それでも、もとの状態に戻るまでに数十年、半世紀と、人生と同じような時間が必要です。
ひるがえって地球温暖化を考えるとき、オゾン層保護以上に複雑で、各国の利害が絡む温暖化問題はとほうもなく難しいと思わざるを得ません。オゾンホールの問題は世界的な環境問題を解決する難しさをも表していると思います。
【参考資料】
世界気象機関(WMO):Large Antarctic Ozone Hole Observed,29 October 2015
気象庁:オゾン層・紫外線
NASA:Ozone Hole Watch
気象庁気象研究所:オゾンホールの発見
環境省:オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書