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災害に便乗する犯罪、悪徳な住宅修理商法には要注意!過去の被害から学ぶ、TPOで備える3つの防犯対策。

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

強い勢力の台風10号が九州地方を襲い、各地に大きな被害を出しました。これからも、異常気象による大雨や地震などの自然災害が発生するかと思いますが、その後には必ず、詐欺や窃盗などの犯罪や悪徳な住宅修理商法が出てきます。昨年の房総半島台風は強風により家屋に甚大な被害を出し、東日本台風による大雨は河川を氾濫させ水害被害をもたらしましたが、その時もそうでした。

被害に遭わないためには、犯罪者や悪徳修理業者の行動をTPOで考えた3つの防犯対策が必要です。

「T」時(Time)から見てみると、手口は災害後の時間経過とともに変化していくことがわかります。

今回、多くの人たちが台風襲来に備えて、避難しました。そうすると、家には誰もいなくなりますので、犯罪者らは無人になった家を狙い侵入します。というのも、台風や大雨で玄関や窓が壊れると入りやすく、金品を盗んでも、家のなかがめちゃくちゃになっていると、何が取られたかがわからなくなりますので、そこにつけ入ってくるのです。

昨年の房総半島台風でも、壊れた入口から空き巣が侵入して、100万円以上が盗まれるなど、多くの被害が起きています。

1つ目の防犯ポイントとしては、

避難所に向かうときは、現金はできるだけ家に置かずに持ち出すようにしてください。

もちろん、命を守るために緊急に逃げなくてはいけない時には難しいかもしれませんが、若干の時間の余裕がある時には、お金だけでなく、キャッシュカードも忘れないでください。昨年の災害では、県職員を騙って「台風被害による特別支援金があります」と嘘をついて、盗んだと思われるカードの暗証番号を聞き出そうとする電話もあったからです。日頃から、すぐに持ちだせるような準備をしておくことは大事になります。

次に「P」場所(Place)からみます。

犯罪者は人のいない地域をピンポイントに狙ってきています。なぜ、場所がわかるのでしょうか?これは、すでに言われていることですが、災害時のSNSの発信が大きくかかわっています。救助や支援物資の必要性を訴えるための被害情報の発信も大事ですが、場所があまりに特定されるような写真をアップしてしまうと、人がいない地域が知られてしまい、犯罪者がやってきてしまいます。水害であれば、「水がだいぶ、引いたよ」と地域の写真をアップすれば、「そうか」と犯行車両がくることになります。

昨年来、SNSに被害地域の写真を安易に載せることの危険性について、口を酸っぱくして注意してきましたが、いまだ場所を特定できるようなものもあり、危機感を覚えています。 

2つ目の防犯ポイントとして、

常に犯罪者もSNSを見ているという意識を忘れず、情報の発信には充分な注意をする。

時が経過して、人々が避難所から戻り、被災した家などの後片付けをしていると、次は悪徳な住宅修理業者がやってきます。家が壊れて困っている状況を騙しの「O」機会(Occasion)と捉えているためです。

そこで必要なのが、

事前に、防犯情報の備えを怠りなくしておく。

これが、3つ目の防犯ポイントです。

昨年、千葉県を襲った風台風では多くの屋根が壊れましたが「ブルーシートをかけましょうか?」と業者がやってきて、無料だと思い作業してもらったところ、18万円もの費用を請求されています。突然の出来事に、つい相手の言い値でお金を払ってしまいがちですが、適正価格を事前に知っておいてください。一般的な住宅であれば4~5万円ほどです。

また強引に家に押し入ってくる業者もいます。

昨年の災害では、「屋根が壊れていますね」と家にやってきた業者が、高齢女性が断ったにもかかわらず敷地内に入り、工事を行って25万円を払わせた事例もあります。出て行ってくださいと言ったのに、家を出て行かなければ不退去罪になりますので、警察に通報してください。もしその場で通報できなかったとしても、事後でもよいので必ずお願いします。先の業者は高齢女性の通報により、後に特定商取引法違反(威迫、困惑)で逮捕されています。

こうした防犯情報や対策を知っておくことで、災害後の悪徳な修理業者から身を守れます。

もうひとつ「保険金で、修理がタダになる」の言葉にも、注意をしてください。

さらに時間がたって、台風で壊れている家の個所を見つけることもあるでしょう。

ある男性は、台風によって雨どいが壊れていたので、ネットで調べて安く作業をしてくれる業者を呼びました。家に来た業者は「火災保険には入っていますか?」と尋ねます。

「はい、入ってます」と男性が答えると、業者は「保険金が下りますので、自己負担なしで修理ができます」と言います。

しかし「(壊れてもいない)屋根の修理もしたことにして、保険会社に請求しましょう」と言い、300万円の見積書を後日、送ってきました。すると、業者は「実際には100万円しかかからないので、余ったお金で外壁もやりましょうね」と悪びれることなく話します。当然、男性は断りましたが、保険会社に「台風の影響で」と嘘を言わせて工事を促す業者もいます。

もし嘘をついて、保険金をせしめれば、家人も詐欺罪に問われる可能性がありますし、何よりこうした悪徳業者が行う修理はずさんであることが多いですから、断ってください。

最後に、災害による窮状を好機(O)と捉えているのは、何といっても詐欺師たちです。

昨年の台風では、市職員を名乗り「1口3千円の義援金を支払ってください」という電話があり、今年の熊本豪雨災害でも、役場からきたように装い「水道料金の徴収にきました」と家を訪れて金を騙し取ろうとしています。募金詐欺や、訪問による料金徴収詐欺、そして修理工事をするといって代金を先払いさせ、お金を待ち逃げする詐欺もありますので、警戒してください。

熊本では「荷物のお届けに上がりました」というSMS(ショートメッセージ)詐欺の相談が増加したといいます。被災者には救援物資などが届けられますが、そこに大手の配送業者を騙ったSMSが届くと、それを本物だと思って、アクセスしてしまうかもしれません。そこに待っているのは詐欺サイトで、もしID、パスワードを入力してしまうと、個人情報が盗まれて金銭被害をうけることになります。スマホ経由の詐欺にも注意が必要です。

犯罪者や悪徳業者は、時(T)と場所(P)と機会(O)を利用して、私たちを騙そうとするものです。ぜひ、災害後には3つの防犯ポイントをおさえて、被害に遭わないようにして頂ければと思います。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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