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堂本光一と堂本剛、赤と青のキセキ。『We are KinKi Kids』

杉谷伸子映画ライター

KinKi Kidsが9月29日から11月2日まで全国7会場で開催した『We are KinKi Kids Live Tour 2016 ~TSUYOSHI & KOICHI〜』。もはや季語にしたいほど、年末年始のドームツアーが季節の風物詩となっていた彼らにとって、約17年ぶりのアリーナツアー。しかも、ツアーのスタートを切るのは、デビュー前の95年以来、約21年ぶりとなる日本武道館。そこには、来年7月21日にCDデビュー20周年を控え、アニバーサリーイヤーに突入した彼らが鮮やかに提示してくれるKinKi Kidsの軌跡と現在があった。

KinKi Kidsといえばドームライブというなかで 彼らのライブに触れてきた身には、とにかく武道館の距離感は「近い!」のひと言に尽きる。だが、この近さは決して、ステージと客席の間の距離だけの話ではない。その距離感はもちろんのこと、巨大会場ではないからこその 楽曲中の堂本光一堂本剛のステージ上の立ち位置の近さも含めて、KinKi Kidsの魅力を改めて捉えさせてくれて新鮮。ドーム会場の壮麗なスケール感に圧倒されるのも快感だが、歌い踊る2人のパフォーマンスが、ごく自然に同時に視界に入るのはまた格別だ。

そのアガる距離で繰り広げられるのは、まさにKinKi Kidsだからこその世界。

デビュー曲『硝子の少年』から 11月2日のリリースに先駆けて初披露された最新シングル『道は手ずから夢の花』までの KinKi Kidsの名曲の数々はもちろん、光一と剛それぞれのソロコーナーも設けた構成が、それぞれのメンバーカラーでもある(堂本光一)と(堂本剛)のライトが象徴的なステージとあいまって印象付けるのは、KinKi Kidsの魅力そのもの。

それを象徴するナンバーが、20周年アニバーサリーイヤーの第1弾としてとして発表された吉井和哉作詞・作曲による『薔薇と太陽』。2人が同じ振り付けで歌い踊るというデュオの常識を覆し、バンドを従えた剛がギターを弾きながら、女性ダンサーを従えた光一が踊りながら 歌うというスタイルは、それぞれのソロ活動で培ってきた個性を押し出しつつ、そんな2人だからこそ創りあげられる世界の広がりを見せてくれたように、コンサートもまた『We are KinKi Kids Live Tour 2016 〜TSUYOSHI & KOICHI~』というタイトルどおり、彼らだからこその世界の広がりに高揚させずにいない。

それぞれにソロアーティストとしてツアーも開催している彼らは、長らくKinKi Kidsのコンサートではソロコーナーを封印してきた。そんな二人が、このツアーではそれぞれのソロを披露。

「剛君のライブに行ったことがあるけど、光一のライブに行ったことがないという人。逆の方も然り、いろいろいると思いますんでね。ああ、こんなことをやってるんだと、知らない人は思っていただければいいなと思っております」(光一)ということで設けられたソロコーナー。「ソロではまた、僕、違うバンドを使っていて。建さん(吉田建)をはじめとしてこのバンドでやらせていただくのは初めてなので。ちょっとサウンドも変わってくるから、そのへんもみなさん非常に楽しめるポイントだと思いますね」と前置きしたナンバーをハードなダンスで魅せる光一のソロコーナーには、剛が登場し、ギターで参加する一幕も。

一方、「大切な時とか記念すべき時ほど穏やかで笑顔でいたいなと。せかせかしたりね、なんか気合入りすぎたりして空回りしてもしょうもないですから。やっぱり、こう21年、22年ということを見ていこうと、いろいろなことにチャレンジしていくことも大事かなと思いますし。だから、そういう意味で、僕はちょっと一人ではバンド組んでやっちゃったりしてるから」と話す剛のFUNKセッションには、光一がPボーンで参加。

そんな粋な趣向で会場を沸かせるコラボも絶妙なら、そのソロコーナーから『薔薇と太陽』へ行く構成もまた最高。上下に可動するステージを使って、2人が上下(奥と手前)という位置取りでも魅せる構成がまた、左右対称だけにとどまらないシンメの魅力を堪能させてもくれる。

初めて武道館に立った22年前のコンサートでは、光一が着替えのためにハケて、ステージに一人になった途端に頭が真っ白になり、ものの2分も経たないうちに「光一、よろしくっ!」と着替えがまだ済んでいない相方を呼んでしまったという剛の失敗談でも沸かせた2人だが、その失敗談をネタ振りに使ってさらに沸かせるなど、KinKi Kidsライブのお楽しみでもあるトークもたっぷり。だが、もちろん最高なのは彼らのパフォーマンスだ。

アーティストとしての個性も方向性も、ステージ衣装のテイストもまったく違う。だが、その揺るぎない2つの個性が、それぞれに美しく、対をなして また美しいのは、まさに「赤」と「青」。

赤と青が印象的な照明と相まって、ステージ中央に掲げられた 赤の「K」と青の「K」を「2」と「0」ががっちり繋ぐツアーロゴも、その感慨を深くする。

「剛くんも言いましたけど、僕らはある意味で周りに流されないKinKi Kidsという時間の流れがあるグループなのかもしれませんね。音楽に対してもそうだし。ただ、今回ジャニーさんが言ったように、YOUたちは堂本剛と堂本光一ひとりひとりがあって、それが集まってKinKi Kidsだよ」(光一)ということを鮮やかに提示したコンサート。それは、堂本光一と堂本剛という2つの才能が出逢って、KinKi Kidsが生まれたという奇跡と、この二人が描いてきた軌跡に、胸の高鳴りを抑えられない時間だった。(9月29日、日本武道館公演を取材)

『KinKi Kids Concert 2016-2017』

12月22日(木)、23日(金・祝)東京ドーム

1月1日(日・祝)、1月2日(月・休)京セラ大阪ドーム

『We are KinKi Kids Live Tour 2016 〜TSUYOSHI & KOICHI~』9月29日セットリスト

M1  Kissからはじまるミステリー

M2  愛されるより 愛したい

情熱

ボクの背中には羽がある

M3  愛のかたまり

M4  モノクローム ドリーム

M5  nakid mind

M6  Summer 〜僕らのシルエット〜

M7  雨音のボレロ

M8  陽炎~Kgiroi〜

〈MC〉

M9  ホタル

M10  Danger Zone 〜to the unknown world〜

INTERACTIONAL

Slave Maker

M11  街

FUNK SESSION

M12  薔薇と太陽

M13  Unlock Baby

Plugin Love

Fall Dance

M14  スワンソング

雨のMelody

涙、ひとひら

カナシミブルー

Misty

Time

やめないで,PURE

Anniversary

ジェットコースター・ロマンス

M15  硝子の少年

EN1  道は手ずから夢の花(新曲9

EN2  夜をとめてくれ

EN3  なんねんたっても

映画ライター

映画レビューやコラム、インタビューを中心に、『anan』『SCREEN』はじめ、女性誌・情報誌に執筆。インタビュー対象は、ふなっしーからマーティン・スコセッシまで多岐にわたる。日本映画ペンクラブ会員。

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