ゴロフキン戦を振り返った村田諒太「もっといい勝負ができた、いまだに悔しい」現役への未練は
8月中旬に都内で元ボクシング世界WBAミドル級スーパー王者の村田諒太(37)をゲストにトークショーが開催された。会場には、約150名のボクシングファンが集まり、トークショーの他、質問コーナーやミット打ちの披露、サイン会など大いに盛り上がった。
引退後の生活
3月に引退会見をしてから5ヶ月が経った。村田に現在の生活について聞くと「引退してからのほうが忙しいです。燃え尽き症候群はなくて楽しい」と充実しているようだ。
現役時代はルーティンが決まっている。基本的に、朝にロードワーク、午後にジムワークといった流れだ。特に試合前は厳密なスケジュール管理によって、行動を強いられる。
しかし、引退後はそれが全てなくなる。このギャップに戸惑うボクサーは多い。
村田もそうではないかと懸念したが、仕事で海外に行く機会も増えているようで現役時代とは違った日々を楽しんでいるようだ。
現役生活への未練はないか聞くと「ボクシング以上に熱くなるものはないでしょう。今更持つ必要ないですし、そこまで熱くならなくてもいい」と話していた。
過去の試合について振り返ってもらうと「オリンピックは一番大きかったし、人生が変わりました。しかし、有名になったのが最大の失敗で、自由がなくなった。成功かもしれないけど失敗で、そこに執着が生まれた」と話していた。
村田は2012年のロンドン五輪で金メダル、プロでは2017年にアッサンエンダムを下しWBAミドル級王座を獲得した。これにより日本で初めて金メダリスト兼世界チャンピオンになった。
世界王者になってどのような変化があったかについて「お金が入ったことです。金銭の自由は大きいですよね。余裕ができたことで社会貢献にも目が行くようになりました。社会に何ができるかと視野が広がりました」と答えた。
ゴロフキン戦
村田の集大成と言える試合は、昨年4月に行われたボクシングのWBAスーパー・IBF世界ミドル級王座統一戦、王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との試合だろう。
試合では序盤に互角に戦った村田氏だったが、徐々にゴロフキンにペースを握られ9回TKOで敗れた。
敗れはしたものの、レジェンド王者をあと一歩のところまで追い詰めた。
その一戦について振り返ってもらうと「(ゴロフキンは)ボディはそこまで強くなかったが、顔面が非常に打たれ強かった。パンチ力も想像以上ではなかったし、低い重心で戦っていたらもっといい勝負ができた」と語った。
試合中に「2ラウンド目にゴロフキンに勝てると思って疑念が生まれた」と語っている。
実際に観戦していて、ゴロフキンの表情も苦しそうで、あと一歩まで追い詰めていた。
敗戦の理由として村田氏は「試合後に映像を見ると倒れた瞬間にニコッとしていた。やっとボクシングが終われるとほっとしている自分がいた。そのマインドでは勝てない。もっと貪欲でクレイジーでないと」
試合後も悔しさがふつふつと湧いてきて、もう一度リングに立ちたい気持ちもあったようだ。しかし、「負けた後は悔しいし、いまだに悔しい。心の中ではもう一度ボクシングをやろうかと思う時もあるが、やるかやらないかで考えるとやるには傾かなかった」と話している。
今後に向けて
引退を決断をした理由について聞くと「これ以上ボクシングをする理由が見つからないし、迷わず引退の気持ちだった。キャリアを振り返ってみて帝拳でやらせてもらったのが一番良かった。心の底から感謝できるし、これだけ感謝できる人が生まれたのは大きかった」と感謝を述べた。
世界王者になるために環境は大切だ。海外での試合や重量級のタイトルマッチを組めるのも、広いコネクションを持つ帝拳ジムだからこそだ。
今後に向けて「ボクシングで培ったことをどうやって社会貢献できるか、ボクシングを活かせるキャリアづくりで関わっていきたい。追いかけるより応えていきたい」と意気込みを語った。
トークショーの最後には豪快なミット打ちも披露してくれた。
ボクシング界に留まらず、引退後もキャリアを活かし活躍してほしい。