VAR、1年使ってどうだった? イタリアの総括は「期待を上回る非常に良い結果」
ワールドカップ(W杯)で初めて判定が覆る――その歴史的な瞬間は、大会3日目に訪れた。
6月16日のフランス対オーストラリアの一戦で、今大会から導入されたビデオアシスタントレフェリー(VAR)で判定が覆ったシーンは、世界中で注目を集めた。続くペルーとデンマークの試合でも、VARで判定が修正されている。
VARについては賛否両論あるようだが、ここではその是非はさておき、すでに試験導入していたイタリアでのデータを紹介したい。イタリアサッカー連盟(FIGC)が先日発表した2017-18シーズンの総括は、それぞれがVARについて考えるうえで役立つのではないだろうか。
◆判定修正は117/2023
2017-18シーズンのイタリアでは、セリエAとコッパ・イタリアの397試合でVARが用いられ、チェックは2023回行われた。内訳はPKに関する判定が538、レッドカードが407、ゴールが1060だ。
そのうち、判定が覆ったケースは117回。平均で3.29試合に1回だった。内訳はPKが59、レッドカードが16、ゴールが42。最も判定修正につながるのはPKに関する場面だったと分かる。
主審がピッチ上で映像を確認するオン・フィールド・レビュー(OFR)を経て判定が覆ったのは、117回のうち76回。なお、OFRを経て、判定を修正せず確定させたケースも18回あった。
◆時間かかりすぎ?選手の抗議は?
平均所要時間は31.5秒。最初の3試合では1分22秒だったので、慣れていくうちに大きく短縮できたことが分かる。判定修正があった場合でも、平均所要時間は1分22秒(うちOFRは50秒)。最初の3試合では2分35秒だったので、こちらも次第に慣れていったということだろうか。
実際のプレー時間も、ハーフ平均で50分30秒から51分13秒と前季比43秒増にとどまった。アディショナルタイムは5分28秒から5分41秒と13秒増だ。
顕著なのが、カードや抗議の減少。イエローカードは1719枚から1508枚と12.3%減り、抗議も137から113と17.5%減った。シミュレーションに至っては、34から22と35.3%の大幅減。退場は97から91と7.1%減り、中でも抗議による退場は前シーズンの11回に対してわずか1回だった。
◆「完璧」は不可能も、貢献は確か
VARで誤審が完全になくなるわけではない。FIGCによると、2017-18シーズンは0.89%の判定ミスがあった。だが、VARがなければ、その数字は5.78%に増えていたという。
これらの結果を受け、FIGCのロベルト・ファッブリチーニ特別コミッショナーは「非常にポジティブな結果」とコメント。プロジェクトマネジャーのロベルト・ロゼッティが「素晴らしい結果」、ニコラ・リッツォーリ審判部門責任者も「期待を上回る非常に良い結果」と、満足感をあらわにした。
一方で、「来季からさらに改善可能」(ロゼッティ)、「今後に向けて大いに楽観」(リッツォーリ)と、さらなる向上にも意欲を見せた。平均所要時間の推移から分かるように、慣れも大きな要素となるだけに、新シーズンではさらにスムーズな運用が期待される。
VARは万能薬ではなく、判定を巡るすべての問題が解決するわけではない。だが、ラツィオのシモーネ・インザーギのように、当初から長く否定的だったが最後は有益と認めるようになった指揮官もいるだけに、一定の貢献につながっていることは確かと言えそうだ。