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金で勝利は買えない!?「贅沢税」を課された延べ44球団のポストシーズン進出は…。今年の2球団は明と暗

宇根夏樹ベースボール・ライター
サンディエゴ・パドレス Sep 13, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2003年以降、メジャーリーグは、ソフトなサラリー・キャップ制度を施行している。定められた年俸総額の上限を超えた球団は、超過した金額に対し、通称「ラグジュアリー・タックス(贅沢税)」を課される。上限の設定額は、年によって違う。2021年は2億1000万ドル。この場合の総額は、各選手の実際の年俸ではなく、それぞれの年平均額の合計だ。課税率は、超過の金額と超過が連続している年数によって変わる。

 APによると、2021年に上限の2億1000万ドルを超えたのは、ナ・リーグ西地区の2球団、約2億8560万ドルのロサンゼルス・ドジャースと約2億1647万ドルのサンディエゴ・パドレスだという。今シーズン、ドジャースは2013年から続いていた地区優勝こそ途切れたものの、両リーグで2番目に多い106勝を挙げ、ワイルドカードを手にした。一方、パドレスは79勝83敗で地区3位。ポストシーズン進出を逃しただけでなく、勝ち越すことすらできなかった。前半の貯金13に対し、後半は借金17。勝率は.570と.377だった。

 上限を超えて「ラグジュアリー・タックス」の対象となるのは、今シーズンのドジャースとパドレスが延べ43球団目と44球団目だ。そのうち、3分の1以上をニューヨーク・ヤンキースが占める。

「ラグジュアリー・タックス」を課された年の結果は、以下のとおり。ヤンキースとそれ以外の球団に分け、年の順に並べた。

筆者作成
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 44球団中、地区優勝あるいはワイルドカードにより、その年のポストシーズンへ進んだのは、61.4%の27球団だ。ヤンキースを除くと、28球団中15球団なので、ポストシーズン進出の割合は53.6%に下がる。ほぼ半々といったところだ。

 また、ポストシーズン進出の割合は、球団ごとに異なる。「ラグジュアリー・タックス」の対象となった回数が多い球団のうち、ヤンキースは75.0%(12/16)、ボストン・レッドソックスは50.0%(5/10)、ドジャースは100.0%(6/6)。サンフランシスコ・ジャイアンツデトロイト・タイガースは、33.3%(1/3)と0.0%(0/3)だ。

 この結果からすると、「ラグジュアリー・タックス」を課されるほど年俸総額が高い球団であっても、ポストシーズンへ進めるわけではない、ということになる。ただ、この総額は年平均額の合計だ。例えば、長期の大型契約を持つ選手を何人か擁し、それらの選手が揃って契約の後半を迎えた場合、最初から勝てるような状態ではなく(今シーズンのパドレスはそうではなかったが)、球団の年俸総額は高いまま、順位は低い、ということも起きかねない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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