神童がついにプロボクサーへ 那須川天心の無限の可能性とは
9日、後楽園ホールで元キックボクシングの神童・那須川天心(24)が、ボクシングのプロテストを受け話題になった。
天心は2022年6月の試合を最後にキックボクシングを引退し、プロボクシングへの転向を表明していた。
プロテストとは
プロボクサーになるためには、日本ボクシングコミッション(JBC)のプロボクサー新人テストを受けなければならない。
プロボクシングのライセンスには、A級、B級、C級があり、多くの選手がC級(4回戦に出場可能)から受験する。
しかし、実績のある選手はC級での試験が免除され、B級(6回戦以下に出場可能)での受験が可能となる。天心もキックボクシングでの実績が評価され、B級での受験となった。
試験内容は主に筆記と実技の2つがあり、両方で合格基準に達した選手が晴れてプロデビューを果たす。
筆記では、主にルールについての問題が出され、基本的な知識を身につけていれば問題ない。
実技ではスパーリングを実施する。ここでは勝敗ではなく、ボクサーとしての実力を審査される。C級受験の選手であれば受験者同士でスパーを実施するが、B級受験の天心の相手にはプロで活躍する日本バンタム級1位の南出仁(27=セレス)が呼ばれた。
私もB級でのデビューだったが、プロテストのスパーリングは緊張感があるものだった。
3ラウンドのスパーを終えた後、南出は天心の実力を高く評価し、「自分もスピードには自信を持っているが、全てが速い。洗礼を浴びせてやろうとしたが、ダメだった」と語っていた。
合格通知は当日に発表され、晴れてプロボクサーとなった。
プロテストだけで約100名もの報道陣が駆け、多くのメディアで報道されるなど、天心の影響力の大きさを物語っていた。
天心の可能性
天心がボクシング転向後、入門した帝拳ジムはボクシング界の名門と言われるほど由緒あるジムだ。
日本歴代2位の記録を持つ12度の連続防衛を果たした山中慎介氏やミドル級世界王者の村田諒太、3階級王者のホルへ・リナレスなど数々の世界王者を輩出した。
天心について帝拳ジムの本田会長は「学習能力が高い。人の3倍の早さでの成長を期待していたが、10倍くらい早く学習する。1年以内には間違いなく日本タイトルに挑ませたい」と展望を語った。
天心のポテンシャルは非常に高い。特に目を見張るのがスピードとカウンターのタイミングだ。相手の攻撃にカウンターを合わせることで、キックボクシングでも多くのKO勝利を積み上げてきた。
パワーは筋トレなどで鍛えられるが、一瞬の隙をつく攻撃は天性のものだ。このカウンターはボクシングの世界でも武器となる。
関係者の間で「天心はボクシングで世界王者になれるか」と話題に上がることも多いが、その可能性は高いだろう。
世界王者になるには努力や才能も必要だが、環境も必要になってくる。帝拳ジムであれば、近い階級にアマからプロに転向した同世代のライバルも多く、トレーニング環境も揃っている。
また海外とのコネクションも強く、世界戦の実現も期待できる。私も現役時代に所属していたが、ジムのサポート体制は手厚く、整っていた。実力を発揮し世界で活躍していくためにこれ以上ない環境だろう。
近い階級のライバル達
デビュー戦は4月上旬に予定されており、実力者との対戦が期待される。
今回のプロテストではスーパーフェザー級リミット近くの58キロで受験した。キックボクシングの試合に比べ、ボクシングの方が階級の幅が小さいため、より適正な階級で試合に臨める。
おそらく主戦場とするのはバンタム級(53.52kg以下)からフェザー級(57.15kg以下)あたりになるだろう。
この階級には天心より先にプロデビューしたK1出身の武居由樹や、アマチュア13冠の堤駿斗など若手ホープもいる。先にデビューを果たしているライバル達との関係は刺激となるだろう。
また、近い階級には井上尚弥が存在している。彼の存在も重要な位置付けにあるだろう。
天心がボクシングに転向したことで大きな注目を集めている。業界の活性化にも注目したい。
格闘技でも数々の伝説を残してきたが、プロボクサーのキャリアを今後どのように歩んでいくのか楽しみだ。