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米宝くじ当せんも16億円が「元妻」へ 婚前契約のススメ

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
アメリカのどの街角でも気軽に販売されている宝くじ。(写真:ロイター/アフロ)

今月離婚が明らかになったビートたけしさん。元妻との莫大な財産分与、および慰謝料が話題になったばかりだ。

アメリカでは結婚する際、直前に取り交わす大切なものがある。「婚前契約」だ。誰もが交わすものではないけれど、お金持ちで賢く将来設計をしている人ほど、婚前契約を取り交わしている。

この婚前契約により、婚姻中の財産はもちろん、万が一離婚した場合の財産分与についても「結婚前」に明らかにしておくのだ。

結婚前から「離婚したら」という仮定の話はあまりにも夢がないと思うかもしれない。しかし、離婚を経験した人は特におわかりだろうが、結婚生活というのは常にお金の話がつきものだし、いざ離婚となった場合、財産はもちろんのこと、身の回りのものも(電子レンジ一つに至るまで)、今後どちらが所有していくかという細かい話になる。

今や結婚したカップルの2人に1人が別れる離婚大国アメリカでは、財産分与は切実な問題で、夢がないだの何だのとは言っていられないのだ。

さて、この婚前契約の重要さを、今回改めて教えてくれたカップルがいる。

米ジャンボ宝くじに当せんしたミシガン州デトロイト在住の男性と元妻だ。

リチャード・ゼラスコ(Richard Zelasko)さんは、2013年7月、宝くじ「メガミリオンズ」で大当たりくじ(ジャックポット)に当せんし、8,000万ドル(約86億円)を獲得した。税金や手数料などを引かれても、手元に残るのは3,887万3,628ドル(約40億円)もの大金とされている。

リチャードさんがメアリー・エリザベス・ゼラスコさんと結婚したのは04年のこと。3人の子どもを授かったが、09年から別居。離婚申し立てをしたのは11年末だった。リチャードさんが宝くじに当せんした13年の時点で、まだ2人の離婚は成立しておらず、仲裁人の意見を待っているところだった。

離婚が正式に成立したのは18年のことだが、このたびの判決内容は、「(13年の時点でまだ離婚が成立していないため)当せんした宝くじは夫婦の資産としての一部であり、妻は配当金の中から1,500万ドル(約16億円)を受け取る権利があり、残りの資産も分割するべき」とするものだった。

結婚財産の分与については、法律で「公に結婚が認められた日から離婚が認められた判決の発令日まですべての財産が含まれる」とされている。また判決では「この当せん宝くじを購入したのはこの日が初めてではなかった。婚姻期間中の損失は双方に発生し分担する必要があるため、賞金も双方で分担(受け取り)する権利がある」とした。つまり、大当たりくじを購入した金額は例え100円ほどであったとしても、婚姻カップルの財布から捻出されているので、当せん金は2人のものだという。

このニュースを耳にした人からは、「なんてラッキーな」と元妻を羨む声から、「自由になるにはあまりのも高い代償だ」「殺人事件ドラマのはじまりのようだ」と嘲笑する声、「そんな大金だったらシェアしてもどうってことない」「離婚すると決めたなら、なるべく早く行動に移すべきということがわかった」など、さまざまな意見が飛び交った。

婚前契約を取り交すことについて、あなたはどう考えますか?

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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