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韓国も“反応”し始めた早田ひなの「特攻資料館に行きたい」発言「シン・ユビンと感動的な抱擁もしたのに」

金明昱スポーツライター
パリ五輪卓球女子シングルスの3位決定戦で健闘を称え合った早田とシン・ユビン(写真:ロイター/アフロ)

 パリ五輪の卓球女子シングルスで銅メダルを獲得した早田ひなが、帰国後の記者会見で「鹿児島の特攻資料館に行きたい」と発言したことと関連し、中国のみならず、韓国でも徐々に反応を見せ始めている。

 中国のSNS投稿サイト「微博(ウェイボー)」で早田が12日に開設したばかりの公式アカウントに批判的な書き込みが増え、男子シングルス金の樊振東選手と女子シングルス銀の孫穎莎選手がフォローを外したことなどが日本でも報じられた。

 これにはいずれ韓国も反応を見せると思っていたのだが、案の定だった。

 スポーツ・芸能専門サイト「OSEN」は「“神風”特攻資料館がメダル獲得後に行きたい場所?シン・ユビンが抱き合った彼女のおかしな回答」と見出しを打ち、こう伝えている。

「シン・ユビンが試合で敗れたにもかかわらず、温かい抱擁が話題になった日本の早田ひなの発言が注目されている。早田は韓国の国民にも印象的な姿を見せたことで記憶に残っている選手だ。早田は卓球女子シングルスの3位決定戦で、シン・ユビンを下した。その瞬間、しゃがみこんで涙を流す早田にシン・ユビンが近づき、慰めて抱き合う姿が注目された。スポーツマンシップは日本からも称賛された」

韓国でも一気に知名度が高まった早田だが…

 まず、早田が今回のパリ五輪で韓国の国民にも広く知られた選手であるということが前提としてある。シン・ユビンとの心温まる抱擁は、大きな感動を呼んだ。だからこそ、早田が会見で「鹿児島の特攻資料館に行って生きていること、卓球ができることが当たり前ではないということを感じたい」との言葉には、かなり驚いた様子が見受けられた。

 その上で「OSEN」は「特攻資料館は第2次世界大戦当時、神風特攻隊の出発地点だった場所だ。爆弾を積み、飛行機で突進する“特攻隊”の遺品と資料が展示されている場所だ。何よりも韓国と中国では、『知覧特攻平和会館』を日本の軍国主義の侵略戦争の象徴と認識している。“平和”と掲げられているが、実際には戦争を美化し、日本の過去の歴史を歪曲していると批判されている場所の一つだ」と伝えている。

 また、「韓国でも徐々に(この発言が)広まり始め、早田に否定的な世論が出始めている。腕をケガするなかでベストを尽くして戦ったシン・ユビンとの感動的な抱擁シーンが、今回の発言で薄れてしまったからだ」とも報じている。

 早田にとっては想像もしていなかった“騒動”に違いないが、有名トップアスリートのこうした発言は、一つ間違えば「意見」として捉えられてしまう節がある。ましてやSNS全盛の現代において、言葉は慎重に選ぶべきとも言われるが、騒動はどのような形で収拾に向かうのか。

 シン・ユビンと早田のような清々しいスポーツマンシップの精神で終わってほしいものだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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