作業基準&事故処理基準を検証!知床遊覧船
2022年5月30日に詳説!知床遊覧船の安全管理規程を書きました。今回は続編として、運航管理補助者、更に安全管理規程の後半として作業基準と事故処理基準に触れます。扱う資料は、有限会社知床遊覧船の安全管理規程(外部リンク)と国土交通省が定めるひな形(外部リンク)。
どうしてもマスコミ報道は大きな制約があるため断片的になります。本来なら国土交通省などが何を元に判断しているかを、全容を見て検証する事が必要でしょう。今回は以前フェリー会社で運航管理補助者業務を行った立場で解説していきます。
運航管理補助者とは?自分の経験より
運航会社は安全統括管理者、運航管理者を海上運送法に基づき選任しなければならない事を、詳説!知床遊覧船の安全管理規程と知床遊覧船事故で注目!安全管理規程とはで紹介しました。
一方運航管理補助者は安全統括管理者や運航管理者の下、運航会社の社員のうち運航管理業務に関わる人のことで、人数は会社や事業規模によって様々。運航管理者と運航管理補助者の間に副運航管理者を定めている会社もあります。
運航管理者や副運航管理者の指揮の下、気象情報を収集し他の陸上社員や船長に報告します。また状況によっては社内の他、官庁やその他の関係先とも協議。更に船からの定点連絡や事故・海難報告を確認する事も行います。
知床遊覧船事故で、ウトロ事務所にいた陸上社員がどんな動きをしたか、どのような責任と任務が与えられたかを理解する事が原因解明には欠かせません。
港での業務を定める!作業基準
有限会社知床遊覧船の作業基準を見ていきます。報道ではほとんど触れられていない、ひな形とどれだけ近いかを書きます。
第1章(第1条)
ひな形と同じ。安全管理規程に基づき定める事が書かれています。
第2・3章(第2・3条)
ひな型に沿っていますが、人数が少ない会社なので、
「運航管理補助者が陸上作業員の業務を行っている場合運航管理補助者が自ら」
「船長以外に乗組員が乗船していない場合は、船長自ら」
「船長が運航管理者を兼任している場合を除く」
という文言が追加されています。
第4章(第4条から8条)
第2・3章と同様、人数が少ない会社なので、
「船内作業員を配置していない場合は、船長(に連絡)」
「陸上作業員を配置していない場合は、運航管理者又は運航管理補助者」
「船長が船内作業員の業務を行った場合は除く」
「陸上作業員を配置していない場合は、自ら配置につく」
という文言が追加されています。また乗客の乗船は、原則として離岸20分前とする事も。
第5章(第9条から11条)
第9条がひな形と同じ。
第10条ではひな形にある
「高速航行におけるシートベルトの着用」
第11条では
「(2)12歳未満の児童には、泉質内にいる場合を除き、常時、救命胴衣を着用させること」
が不要なので削除されています。
実際はどうだった!事故処理基準
第1章(第1条から3条)
ひな形と同じ。
第2章(第4・5条)
こちらもひな型に沿っていますが、やはり人数が少ない会社なので、
「船長が運航管理者を兼任している場合は、運航管理補助者」
が追記されています。
第3章(第6条から9条)
第6条・8条はひな形と同じですが、第7条・9条では人数が少ない会社なので、
「船長が運航管理者を兼任し経営トップである場合は、運航管理補助者」
が補足れています。驚くのはひな形にはある第11条(事故調査委員会)の項目がないこと。人数が少ない会社のためでしょうが、委員会を作るまでもないと経営トップが考えている事は想像出来ます。
なお自分が以前勤務した会社では当然あり、やむを得ず事故が発生した場合は機能していました。
まとめ
1.運航管理補助者の業務は、運航管理者の指揮の下行われる。
2.作業基準は国土交通省が定めるひな形にほぼ沿っているが、人数が少ない会社という事情が読める補足がある。
3.事故処理基準も国土交通省が定めるひな形に沿っているが、人数が少ない会社という事情が読める補足のほか、事故調査委員会の項目がない。
ここまで全体を見通してから重要箇所を判別する作業を報道各社がやっていたかは、報道を見る限り考えにくい状況です。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。