ジュディ・オング&橋本愛の歌、船山基紀×武部聡志の言葉でめぐる、稀代のヒットメーカー・筒美京平の世界
“時を超えた、ここでしか聴くことができないサウンド”がコンセプトの音楽番組『Sound Inn S』(BS-TBS)の4月17日放送回は、昨年10月に亡くなった、作曲家としてのシングル総売上げが7560万枚(1位)という日本音楽界の巨人・筒美京平さんの、その音楽と人柄をクローズアップする“筒美京平メモリアル”だ。
筒美作品最大のヒット曲、ジュディ・オング「魅せられて」を河野圭のアレンジで披露
約2800曲といわれている筒美作品の中で最大のヒットは、1979年に発売されたジュディ・オングの「魅せられて(エーゲ海のテーマ)」で、120万枚を超える売上げを記録。この年の「日本レコード大賞」の大賞を受賞している。この日は、この名曲を河野圭のアレンジでジュディ・オングがスーパーバンドとセッション。音合わせの合間には、彼女が河野にこの曲のレコーディング秘話を語っている。「この曲のサビは言葉数が多くて、どうしても遅れるので悩んでいたら、京平先生が優しく『この曲はノリがサンバだから、そう思うと遅れないよ』って言ってくださいました」。筒美自身がアレンジも手掛けているこの作品を、河野はリスペクトしながらも、ストリングスの美しさを更に際立たせ、リズム隊の力強さを強調し、優雅に艶やかに歌うジュディ・オングのボーカルを、よりドラマティックに彩るアレンジを作り上げている。この日のセッションについて彼女は「今回『Sound Inn S』で新しくアレンジされた『魅せられて』は、今風のリズムの中になんとサンバが織り込まれていました。無言のうちに作家の伝えたいことが編曲者の河野さんに聞こえたのでしょうか」と語っている。時代を経ても名曲としての佇まい、輝きを失わない、筒美メロディの代表曲であることを、改めて感じさせてくれる。
橋本愛×島田昌典「木綿のハンカチーフ」。「私より私になれるのが歌」(橋本)
2曲目は女優・橋本愛が「木綿のハンカチーフ」(太田裕美)を島田昌典のアレンジで披露。橋本がこの曲を歌った人気YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」は、約360万回再生(4月16日現在)と大きな話題を集め、彼女の歌が一躍注目を集めた。生バンドで歌うのはこの日が初めてという橋本は、そんなことを感じさせない圧倒的な表現力で歌い、島田も「淡々とウィスパーで歌っていても、世界観をしっかり確立している」と絶賛。イントロのストリングスから引き込まれてしまう島田のアレンジは、アイリッシュフルートの郷愁感を感じる音を差し色に、優しさや健気さが印象的なこの曲の世界観、彼女の歌から伝わる切なさを、まっすぐ伝えてくれる。サウンドにも感動し、歌でも泣かされる、そんな名演になっている。橋本はこの歌について「筒美さん、松本隆さん、太田裕美さんが作った大事な曲を、今を生きている人にきちんと伝えるのが役割」と語り、さらに女優と歌手の“表現方法”を聞かれた彼女は「曲の中の人の心は自然と出てくる。そこは意識せずに、意識したとたん演じようとするので、歌で演じるは本意ではありません。役者は他人になるのが仕事ですが、歌では他人になりたくなくて。私より私になれるのが歌です」と“理想の歌”を教えてくれている。
船山基紀×武部聡志が語る、筒美京平の素顔、人柄、メロディの秘密
さらに、筒美作品を最も多く手がけている編曲家・船山基紀と、斎藤由貴「卒業」他、筒美とタッグを組みアレンジを手がけ、トリビュート盤『筒美京平 SONG BOOK』(3月24日発売)の総合プロデュースを務めた音楽プロデューサー/編曲家・武部聡志との対談も見どころのひとつだ。あまりメディアに登場しなかった筒美の素顔、人柄、そして筒美メロディの秘密が語られている。また、TBSの貴重なアーカイブ映像で構成された、筒美京平名曲ヒストリーも必見だ。
『Sound Inn S』(BS-TBS)の“筒美京平メモリアル”は、4月17日(土)18時30分からオンエアされる。なお、番組放送終了と同時に「Paravi」で未公開映像と共に独占配信される。