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昨年はレギュラーだった外野手同士をトレードで交換。両球団の意図はどこにある!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ランダール・グリチック Aug 21, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 トロント・ブルージェイズとコロラド・ロッキーズは、3月下旬にトレードを成立させ、ブルージェイズはライメル・タピアエイドリアン・ピントを獲得し、ロッキーズはランダール・グリチックと約970万ドルを手にした。

 28歳のタピアと30歳のグリチックは、どちらも外野手だ。昨シーズン、タピアは主にレフトを守り、133試合で打率.273と出塁率.327、6本塁打と20盗塁を記録した。グリチックの出場はセンターが多く、149試合で打率.241と出塁率.281、22本塁打と0盗塁だった。ピントは19歳のベネズエランだ。昨シーズンはドミニカン・サマー・リーグでプレーし、54試合で打率.360、3本塁打、41盗塁。二塁と遊撃にセンターも守る。メジャーリーグでプレーするまでには、あと数年を要するだろう。

 今シーズン、ブルージェイズの外野には、左から右に、ルルデス・グリエルJr.ジョージ・スプリンガーテオスカー・ヘルナンデスが並ぶ。昨シーズンは、スプリンガーが長期欠場し、DHとしての出場が多かった。今シーズンのDHは、アレハンドロ・カークの予定だ(「身長175cm未満で体重120kg以上のメジャーリーガー。それだけでも一見の価値はあるが…」)。彼らをはじめ、ラインナップのほとんどは右打者となる。

 そこで、ブルージェイズは、守るポジションがなくなった右打者のグリチックを放出し、代わりに左打者のタピアを手に入れた。グリチックと違い、タピアはパワーに欠けるものの、ブルージェイズの打線は、グリチックがいなくてもパワフルだ。また、タピアはスピードがあり、センターを守ることもできる。

 一方、ロッキーズは、クリス・ブライアントと7年1億8200万ドルの契約を交わした。ブライアントは、タピアが定位置としていたレフトを守る。この入れ替わりにより、パワーは増したが、それでもまだ十分とは言えず、続いてグリチックを打線に加えた。過去6シーズンのうち、グリチックのホームランが22本に届かなかったのは、短縮シーズンの2020年(12本)だけだ。打者天国のクアーズ・フィールドを本拠とすることで、2019年に記録した自己最多の31本を更新してもおかしくない。ポジションは、センターがメインになると思われる。昨シーズンのセンターは、レギュラーが不在だった。

 グリチックは、今シーズンが5年5200万ドルの4年目。今シーズンと来シーズンの年俸は、約930万ドルずつだ。タピアも、FAになるのはグリチックと同じ、来シーズンの終了後だが、長期契約は交わしていない。今シーズンの年俸は395万ドルだ。単純な1対1のトレードではなく、そこに金銭とマイナーリーガー1人を絡めることで、両球団は合意にたどり着いた。

 3月26日のエキシビション・ゲームに、グリチックはロッキーズの「5番・センター」として出場し、5回裏に有原航平(テキサス・レンジャーズ)から450フィートのホームランを打った。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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