ネットオークションで落札した物が盗品だった!被害者から返せと言われたら?
ネットオークションにはスマホや腕時計、スニーカー、バッテリー、カーナビなど様々な物が出品されている。安いと思って落札し、商品が届いたあと、警察の問い合わせで実は盗品だったと分かり、被害者から返せと言われたらどうなるか。
強力な「即時取得」の規定あり
この点につき、民法には「即時取得」と呼ばれる強力な規定がある。先ほど挙げた「動産」について「平穏」かつ「公然」にその支配を始めた者が、「善意」で「無過失」であれば、直ちにその所有権を取得するというものだ。盗品だと知らず、その点に過失もなければ、落札して出品者からその商品を受け取った購入者の所有物となる。
ただし、民法には被害者を保護するための規定も置かれている。盗品のほか、落とし物や忘れ物などの遺失物であれば、善意の第三者に対しても被害から2年間に限ってその回復、すなわち返還請求できるというものだ。
それでも、被害者には購入代金に相当する金額を負担する義務がある。落札した購入者は被害者にその支払いを請求できるし、被害から2年を超えていれば、被害者の返還請求に応じる必要もない。
詐取品や横領品は返還請求できない
しかも、民法で2年間の返還請求が認められているのは盗品と遺失物に限られており、だまし取られた詐取品のほか、横流しされた横領品には適用されない。これは、第三者の手に渡った過程に被害者の落ち度があるか否かで区別されている。
このように、民法の「即時取得」の規定によって被害者が泣きをみる結果となる。これを避けるためにも、被害者がネットオークションで被害品の出品を発見した場合、直ちに運営事業者に連絡して取引を停止してもらい、警察にも通報すべきだ。
いまにも第三者に落札されそうな至急を要する事態であれば、その前に自分で落札していったん商品を取り戻し、警察に届け出て捜査してもらい、あとで犯人に落札代金分の支払いを求めるといったやり方もあるだろう。
なお、以上はあくまで落札した善意無過失の第三者と被害者との間の法的関係を示したものにすぎない。当然ながら、その物を盗んだり、だまし取ったり、横領したりした犯人は窃盗罪や詐欺罪、横領罪で処罰されるし、被害者から損害賠償を請求されることになる。(了)