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今年の近江はどうなんだ? 夏の滋賀で近江の独走に待ったをかけるのはこのチームだ!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
昨夏は山田(先頭)の活躍で滋賀大会5連覇を果たした近江。今年の夏は?(筆者撮影)

 全国のトップを切って、沖縄大会が幕を開けた。近畿で唯一、甲子園優勝経験のない滋賀は、近江(タイトル写真)の1強状態が続いている。3年前の「独自大会」を含めても5連覇中で、特にこの2年は山田陽翔(西武)の投打にわたる活躍もあり、全国から注目された。この夏、近江の独走に待ったをかけるチームは現れるか。

秋は早期敗退も春は優勝した近江

 この夏も本命視される近江は、新チームのスタートが遅れた秋こそ3回戦で彦根東に逆転負けを喫したが、前哨戦となった春の県大会で優勝し、夏の第1シード権を得た。常に第1試合で戦えるなど、第1シードは日程に恵まれるため、他校の動向を探れるなどアドバンテージが大きい。2位の滋賀学園、3位の綾羽とは、決勝まで当たらない組み合わせとなる。

課題の投手陣は2年生が中心に

 今チームの近江は、投手陣に不安が残る。春は右腕の西山恒誠と左腕の河越大輝の2年生コンビが中心だった。特に河越は、県の決勝と近畿大会初戦の金光大阪戦でロング救援し、いずれも無失点と安定感が増した。かつての「三本の矢」など、投手の起用に定評のある多賀章仁監督(63)にとって今チームは、腕の見せ所といったところか。

1年夏から甲子園で活躍する近江の横田は、センバツで準優勝旗返還のため一人で行進。「甲子園は皆で試合をしに来るところだと思った」と、最後の夏に懸ける意欲は並々ならぬものがある(筆者撮影)
1年夏から甲子園で活躍する近江の横田は、センバツで準優勝旗返還のため一人で行進。「甲子園は皆で試合をしに来るところだと思った」と、最後の夏に懸ける意欲は並々ならぬものがある(筆者撮影)

 攻撃陣は、不動の4番・山田修斗(3年)に長打は期待できるが、全体的な得点力不足が課題。1年夏から甲子園を経験する主将の横田悟を始め、小竹(しのう)雅斗清谷大輔ら、大舞台を経験している3年生の奮起が待たれる。春以降、中村駿介(2年)が急成長していて、二塁のレギュラーを獲得しそうな勢いだ。

彦根総合は3枚の強力投手陣で対抗

 近江に絶対的な力がない今季は、他校にとって大きなチャンスとなる。ライバル一番手にはセンバツ出場の彦根総合を挙げたい。

彦根総合はセンバツで無失点投球を見せた勝田がエースに成長した。140キロを超える速球を軸に、力勝負ができる。左腕の野下、右腕の武元もいて、看板の投手力で春夏連続出場を狙う(筆者撮影)
彦根総合はセンバツで無失点投球を見せた勝田がエースに成長した。140キロを超える速球を軸に、力勝負ができる。左腕の野下、右腕の武元もいて、看板の投手力で春夏連続出場を狙う(筆者撮影)

 まず投手力が抜群にいい。左の野下陽祐と、右の勝田新一朗武元駿希の3年生トリオは経験値が高く、特にセンバツで好投した勝田は、先発完投から終盤の抑えまで起用法を問わない。課題はセンバツでも沈黙した打線で、田代奏仁(3年)、秋山昌広(2年)らが出塁して、センバツでベンチ外だった4番・蟹江星允(3年)の長打で投手陣を援護できるか。春は4強に残れずシード権を逃したため、強豪との早期対戦もある。

滋賀学園には、近江から本塁打した好遊撃手

 春に準優勝した滋賀学園は投打のバランスがいい。投手陣は、いずれも3年生左腕の大城海翔村田凌摩が軸で、攻撃では3番を打つ岩井天史(2年)が中心となる。岩井は春の近江との直接対決で本塁打を放つなど、期待の大型遊撃手。近年は近江との直接対決を前に不覚をとることが多いため、試合運びに安定感が出てくれば14年ぶりの夏の頂点も見えてくる。

綾羽に近畿屈指の右腕、立命館守山にも左右好投手

 近年の滋賀で安定した戦いを見せる甲子園未経験の綾羽と立命館守山も投手力がいい。

綾羽の野川は近畿屈指の速球派右腕で、将来性も抜群の逸材だ。変化球の精度が増せば、連打を奪うのは難しい。目標は、公式戦で一度も勝ったことがない近江を倒し、甲子園出場をつかむことだ(筆者撮影)
綾羽の野川は近畿屈指の速球派右腕で、将来性も抜群の逸材だ。変化球の精度が増せば、連打を奪うのは難しい。目標は、公式戦で一度も勝ったことがない近江を倒し、甲子園出場をつかむことだ(筆者撮影)

 綾羽の最速146キロ右腕・野川新(3年)は近畿屈指の好投手で、経験も豊富。控えの川那辺葵斐(あおい=3年)も力をつけていて、失点を計算できるのが強み。2年連続夏の滋賀決勝で近江の軍門に下っている立命守山は、昨年の決勝で先発した左腕・加藤優芽(3年)が健在で、右腕の杉本倫太郎(3年)と二枚看板を形成する。滋賀学園も含め、県内では近江に「位負け」することが多く、苦手意識を払拭できるかもポイントになるだろう。

甲子園4強経験の瀬田工、甲西も元気

 夏の甲子園4強の経験がある瀬田工甲西の公立勢も元気だ。瀬田工は秋に準優勝し、近畿大会にも進んだ。粘りの投球が身上のエース・吉田翔湧(3年)は変化球を巧みに使う。昨夏はあと一歩まで近江を追い詰めていて、雪辱に燃える。シード校の甲西は多彩な投手陣とつながりのいい攻撃陣がうまく噛み合い、接戦に強い。注目の好投手・滋賀短大付上藤大輝(3年)を一気に攻めて逆転するなど、終盤の粘りは往時を彷彿とさせる。

彦根東の山田は制球力に優れ、打っても中軸の中心選手。秋は近江を倒し、彦根総合の野下と互角に投げ合った。野下とは彦根東中時代のチームメイトだった(筆者撮影)
彦根東の山田は制球力に優れ、打っても中軸の中心選手。秋は近江を倒し、彦根総合の野下と互角に投げ合った。野下とは彦根東中時代のチームメイトだった(筆者撮影)

 また、秋に近江を倒した文武両道の彦根東は、好投手・山田幹太(3年=主将)の投球に期待がかかる。控えの堀井柊真(3年)らも力をつけていて、投手力で上位校に迫る。

センバツの悔しさ晴らすかベテラン監督

 今季は秋の4強が1校も春の4強に残れず、混戦を印象付けた。実力のある近江や滋賀学園などが夏に向けてチーム力を上げているが、センバツ出場の彦根総合もベテラン・宮崎裕也監督(61)が春季大会で甲西に敗退後、「実力主義で夏のメンバーを決める」と話し、勝利への執念を見せていた。北大津の監督時代から「打倒・近江」への思いは人一倍強く、「今回はチャンス」と直接対決を熱望する。センバツの悔しさを晴らすには、夏の湖国戦線を勝ち抜くしかない。抽選会は20日に行われる。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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