安芸キャンプでしのぎを削る投手陣 ルーキー青柳も実戦に名乗りを《阪神ファーム》
高知県安芸市で行われている阪神タイガース・ファームの春季キャンプ。きのう5日は新人選手たち恒例の『初休日イベント』が行われ、ことしは書道に挑戦したようです。新人がドラフト2位の坂本選手だけの沖縄はイチゴ狩りを楽しんだとか。安芸も、ここ数年続いている“ちりめん丼”の食べ物シリーズかと思ったら違いました。書道で集中力を養ったかな?より気合いを入れて、きょう6日からの第2クールに臨んでいることでしょう。
第3クールは実戦3試合が組まれており、この第2クールはそこに向けてシートバッティングも2日間行われます。メニュー表によれば、きょう6日に田面投手、金田投手、守屋投手、石崎投手が登板。あす7日は筒井投手、小嶋投手、桑原投手、トラヴィス投手、そしてドラフト5位・青柳投手が投げる予定になっています。
ドラフト1位の高山選手もこのクールから本隊に合流して、シートバッティング以外は通常の練習をこなすとか。投手陣では2年目の横山投手とドラフト3位の望月投手がまだ別メニューです。山下トレーナーによれば「もう少し様子をみて、焦らずに」とのこと。横山投手は「そろそろ始動しますよ~!」と、投げたくてウズウズしているようでした。
さて、きょうは第1クールで聞いた投手陣の話をご紹介します。ここまで野手の高山選手や板山選手のことが多く、同じルーキーの投手コメントは書けていなくてすみません。おまけに写真もほとんどなくて…。とはいえ青柳選手の、あの独特のフォームから繰り出す変化球については記事になっていましたし、視察に来られたタイガースOBの方々も「青柳はいいねえ」と口を揃えていらっしゃいます。いよいよ、あすシートバッティングに初登板ですね。
緩い変化球を解禁、青柳投手
では、そのドラフト5位・青柳晃洋投手の話から。新人合同自主トレ中の1月18日に“立ち投げ”で36球というのが最初。その後、休日を除いて一日置きでブルペンに入り、捕手を座らせてのピッチングは1月23日の3球から始まりました。自主トレ期間中に計113球を投げています。安芸キャンプでも初日と2日目に連続で投げ、3日は休んで4日にもピッチングと順調な様子です。
初日のブルペンで視察した掛布監督も「あのシンカー、すごいね!今あんまり見ないよね」と話していた変化球。これは本人が言うところの“ツーシーム”で「ブルペンで鶴岡さんに受けてもらって反応がありました。大学4年の春までまったくだったのが、あのボールを覚えてからよくなり、秋で使って。実戦向きのボールなので、磨いて左打者対策として使っていきたいと思います」。掛布監督に真正面から見られていましたね。「その前に鶴岡さんで…。最初はブルペンキャッチャーの本田に受けてもらっていたんですけど、途中から鶴岡さんに代わって。それで一気に緊張してしまいました」
これは、もしや望月投手と同じ?「自分が(テレビなどで)見ていた時に出ていた人だから、うわ~と思って」。やはり青柳投手も横浜出身、おんなじ反応でしたね。「掛布監督より先に目に入ったんです(笑)。そのうえ、その鶴岡さんに向かって投げるわけで」。そりゃ緊張したでしょう。しかも前触れなく。その鶴岡選手には、投げたあとで「左バッターの外へのボールがあまり良くなくて、でもインコースにボールがいっていたみたいで『そっちからでいいんじゃないか』という話を」してもらったとか。
翌2日には「自主トレを通じても初めて」という連投を経験しました。疲れや違和感はなかったと言い「きのうより、きょうの方がよかったかな」と振り返っています。「きょう初めてチェンジアップを投げました。今度から意識して緩いボールも投げていこうと思います」と、さらに実戦へと近づく青柳投手です。
連投をしたことについては「きのう投げた中でわかったこともあったので、それを修正しようと思って。例えば開きが早かったり、右打者の外へ投げきれていなかったところです」とメリットを挙げました。まだ2日目の時点で、細かい部分をチェックしていますねえ。「合同自主トレで結構投げさせてもらったので」。なるほど。この時にはまだ伝えられていないと言っていた実戦登板ですが、一番乗りしたいかと尋ねたら「いけたらいいですね~」と笑顔が弾けました。
決め球はやっぱり監督も大絶賛の変化球?「ツーシーム、スライダーかな。大学でも速いボールで勝負していたので。ツーシームとスライダーを覚えて左バッターを打ち取るのが楽になったし。大学レベルですけどね」。掛布監督は「ファームからスタートしたことを理解して、無理せずに時間を費やしてほしい。非常におもしろいよ。気持ちが強くて実戦向き」と楽しみでならない様子に見えます。
竹安投手も3日目にブルペン入り
次にドラフト3位・竹安大知投手。先月30日の新人合同自主トレ最終日以来、今キャンプでは初めて3日にブルペン入りしました。この日は筒井投手と守屋投手が投げ、ピッチングをしたのは竹安投手を入れて3人のみ。掛布監督は見ていませんでしたが、安藤統男さんや真弓明信さんなどOBの方々が視察する中で、捕手を立たせて30球を投じています。
この日の登板については「久保投手コーチと、次はいつ投げられるかについて話しました。前回30日に投げたあとも、ヒジの張りとかなかったので、どんどん調整ペースを上げていきたい」と言います。どれくらいの力でだったかを聞かれ「感覚的には7割くらいの力で投げました。暖かかったので、もう少し投げたかったという気持ちもありますけど。ヒジの方も、前に比べたら違和感はない。今後はトレーナーさんと話し合いながら、一段一段やっていきたいです」と答えました。
安定感と球速アップ?守屋投手
2年目の守屋功輝投手は、1日のシートバッティングで打者7人に29球を投げ、ヒット1本、四球2つという内容。2度打席に立った一二三選手(結果は二ゴロと二飛)が「守屋の球、速くなった!」と言っていた通り、私も確かに速く感じました。何よりも軸や踏み込んだ足、フィニッシュの際のどっしりした雰囲気が違いますね。久保投手コーチは「速いのはまだ疲れてないから」と笑いながらも「確かに安定感は違うね。ピタッと止まるでしょ?体幹ができてきたからでしょう」と話しています。
この日、100球くらい投げたところで守屋投手は「最後に3連続で終わります」と、受けていたブルペンキャッチャーの本田さん、打席で構える副寮長の西口さんに宣言しました。これは“同じところに3球続けて投げられたら終了”と、自分に対して締めの課題を与えたもの。狙いはアウトローですが、なかなか続きません。2球までいっても3球目で外れ、また最初からやり直し。本人も「あー!もお!」と自分に腹を立てている様子。
やがて西口さんから「自分のため、女房のため、子どものためで3本こいっ」という名言が。1球目が決まり「よし、まず1本は自分。次は女房や。集中してこい」と西口さんにゲキを飛ばされたものの…3連続はならずじまい。球数が増える一方で、本人が「すみません。ラストいきます」と区切りをつけました。結局、全部で146球を投げた守屋投手。でも本田さんに「いいよ~。メシ食える高さやで」と声がかかるような低めの球や、力強く速い真っすぐも多かったですね。
守屋投手に、安定感が増したと感想を告げたら「それは僕も、だいぶ感じます」という返事でした。“だいぶ”ですよ。1日のシートバッティングのあとで話した時、フォームが変わった?と聞いても「変わりました、いろいろ」と答えただけだったのですが、つまりはウエートで上半身も下半身もしっかり鍛えた成果なのでしょう。数字は確認していないものの、スピードも上がっていると思われます。自分で実感はあるかと尋ねたら「勝手に球がいくようになりましたね。体ができてきたんで」とのこと。
ちなみにラストの“3連続締め”には「3つ同じとこへ、ということです。アウトローを狙って。でも続かなかったですねえ。球数を投げすぎたので諦めました」と苦笑い。146球って試合ではなかったし、去年のキャンプもそんなに投げていない?「そうですね。プロ最多です(笑)」。この安芸キャンプの投手陣の中でも、もちろん最多。見守っていた高橋投手コーチの「これで、完投できるってこと証明してくれましたね」という言葉に、また苦笑いの2年目右腕でした。