女性支援団体Colaboの炎上分析
年末くらいからネット上で,女性支援団体Colaboに対する不当会計疑惑等が指摘され,ツイッター等で話題となっています.
そこで,ツイッター上で関連するツイートを収集して,どのような意見がネット上にあるのかを分析するため,ツイートの収集を行ってみました.2022年7月12日から2023年1月2日まで,「colabo, 仁藤夢乃, 仁藤, 夢乃, 暇空茜, 暇空, 暇アノン, #暇アノン, #colabo」を含む4,280,488ツイートを収集しました.関連ツイートを投稿したアカウントは303,126ありました.
収集したデータから,そこそこ大きな炎上になっていることがわかりました.では,このデータを分析していってみましょう.
なお,この記事はあくまでもツイートのデータを分析したものであり,女性支援団体Colaboに対する特定の意見を表明するものではありませんし,なんらかの結論を提示するものではありませんのでご注意ください.
3行まとめ
・Colaboの炎上を分析したところ,反Colaboクラスタのほうが圧倒的に拡散していた
・反Colaboには保守系のアカウントが多く,Colabo擁護クラスタには共産党系のアカウントが多い.
・一部のアカウントの頑張りが通常よりもすごい.
クラスタ分析
まず,どのような内容のツイートがあったのか分析するため,クラスタ分析を行ってみました.なお,今回はアカウント分析においては排他的処理を行っており,両方のクラスタに所属するツイートを拡散したアカウントは分析から除いています.
クラスタ分析の結果得られたネットワーク図を以下に示します.
中央の大きな塊が,Colaboを批判する内容を中心としたツイート群です.仮に反Colaboクラスタと呼ぶこととします.このクラスタには,158,968アカウントによる,4,125ツイートと2,571,006リツイートが含まれていました.拡散全体の46.1%がこのクラスタに含まれていることになります.
このクラスタに含まれるツイートで最もリツイートされたものは以下のものです.
一方,右側にある小さめのクラスタがColaboを擁護するツイート群です.仮にColabo擁護クラスタと呼ぶこととします.このクラスタには,20,622アカウントによる,1,382ツイートと187,467リツイートが含まれていました.拡散全体の4.3%のツイートがこのクラスタに含まれています.
こちらのクラスタのツイートで最も拡散されたものは以下のものです.
反ColaboクラスタがColabo擁護クラスタと比較して,ツイートベースで10倍程度拡散しており,アカウントベースでも10倍程度所属していることがわかりました.
時系列変化
次に,反ColaboとColabo擁護各クラスタのツイート数がどのように変化していったのかを1日ごとにプロットしてみました.
11月末あたりから特に反Colaboクラスタのツイートが増加しています.ちょうどこのころ,Colabo側が「誹謗中傷を投稿を繰り返した男性を提訴」するために記者会見を行った時期です.一般メディアでも取り上げられたことによって大きな話題になったとも考えられます.Colabo側が記者会見を行ったことによって逆に批判が拡散したというのは興味深いところです.
情報拡散者は何者か?
今回の件,いったいどのようなアカウントによって批判と擁護が行われているのでしょうか?炎上のきっかけの一つとしてColabo代表の仁藤氏が温泉むすめを批判したことや共産党とかかわりが深いことなどが指摘されています.一方で,批判している側はいわゆるネトウヨである,オタクであるといった議論も存在するようです.
そこで,反Colaboクラスタのツイートを拡散したアカウントと,Colabo擁護クラスタのツイートを拡散したアカウントがそれぞれ過去どのようなクラスタのツイート拡散を行っていたのかを調べてみました.
まず,温泉むすめコンテンツ関連でいくと,反Colaboクラスタの25.7%が温泉むすめ炎上時に批判する人たちを批判する「批判の批判」クラスタに所属していたことがわかります.一方で,Colabo擁護クラスタの26.2%が温泉むすめ批判系ツイートを拡散していましたので,温泉むすめというコンテンツとの関係性は強いように思われます.とはいえ,温泉むすめを応援するクラスタのツイートを拡散していたアカウントはほとんどいない(4%未満)ので温泉むすめというコンテンツを好んでいた人たちがColabo批判を行っているわけではないということもわかります.つまり,「温泉むすめを燃やされたから仁藤氏に恨みを持ってColaboを批判している」ということはなさそうです.もともとフェミニズム的運動に関してツイートを行っていたアカウントが温泉むすめというコンテンツをネタに炎上していたのが実体かと思われますので,今回もその流れと考えることができそうです.事実,反Colaboクラスタの46%が反フェミニズム系ツイート拡散したことがあり,Colabo擁護クラスタの49%がフェミニズム系のツイートを拡散したことがあることがわかっています.
次に,共産党系かどうかという点についていくと,Colabo擁護クラスタの77.5%が共産党を応援するツイートを拡散したことがあることがわかりました.仁藤氏が共産党に近いかどうかは知りませんが,Colabo擁護クラスタの多くのアカウントが共産党を応援するアカウントであるといってよさそうです.ちなみに,Colabo擁護クラスタの85%が自民党批判ツイートを拡散しているので,共産党系というよりは反自民党系というほうが正しいかもしれません.
一方,反Colaboクラスタはネトウヨかというところで分析すると,反Colaboクラスタの59.3%が自民党を応援するツイートを拡散しており,39.5%が共産党批判ツイートを拡散しています.この点から,ネトウヨかどうかまではわかりませんが,反Colaboクラスタは保守系アカウントが多いということがわかります.ちなみに,保守系アカウントとして有名だったDappiの記事を拡散していた割合は35%程度でした.
なお,統一教会系であるとか,Qアノン系であるという言説も一部ではみられるようですが,統一教会系クラスタによるツイートの拡散はほぼ見られませんでした.一方で,反Colaboクラスタの9%程度がQアノン系クラスタのツイートを拡散していたことがわかりました.なお,Colabo擁護クラスタでは1.8%です.割合として多いのかといわれるとそんなことはありませんが,一部のQアノン系クラスタの43.9%が反Colaboクラスタに所属していたりするので,反Colaboクラスタが陰謀論系のアカウントを引き寄せている可能性はありそうです.ただし,反ColaboクラスタがQアノンだというわけではありませんので,その点はご注意ください.
作られた炎上か?
炎上の多くは極一部のアカウントの拡散によって作られることがあります.そこで,今回の炎上はどのくらいのアカウントによって拡散されていたのかを分析しました.以下の図は,横軸何割のアカウントによって,縦軸何割のツイートが拡散されたかを示しています.
この結果から,どちらのクラスタでも非常に少ない割合のアカウントがほとんどの拡散を担っていることがわかります.反Colaboクラスタでは全体の50%の拡散が3.7%のアカウントによって行われており,Colabo擁護クラスタでは全体の50%の拡散が4.6%のアカウントによって行われていました.
その意味では,大規模に拡散しているものの,どちらのクラスタも少数のアカウントの頑張りによって拡散のほとんどが占められているといってよいでしょう.過去の経験から50%の拡散が10%以下のアカウントによって行われているとだいぶ頑張っている感じがありますが,3.7%,4.6%というのは相当なので,一部のアカウントは相当頑張って拡散をしているなあという印象です.
とはいえ,参加アカウント数は十分に多く,最近作られたアカウントによる拡散が多いというわけでもないので,一部のアカウントが頑張っているという事実はあるものの,ツイッター上での注目度はそれなりに高いといえそうです.
なお,反ColaboクラスタとColabo擁護クラスタでツイートの拡散数の比をみると,全体では反Colaboクラスタのほうが10.8倍ほど拡散していますが,拡散数が5回以下のアカウントによる拡散だけ見ると,反Colaboクラスタのほうが5.3倍ほど拡散していることになります.その意味ではものすごい頑張って拡散しているアカウントを除いても反Colaboクラスタのツイートのほうが拡散しているといえそうです.
まとめ
女性支援団体Colaboに関する炎上についてツイートの分析を行いました.その結果,反Colaboクラスタのほうが拡散していることがわかりました.また,党派性については一般に言われている通りの結果となりました.
一方で,どちらのクラスタも一部のアカウントの頑張りが拡散の大半を担っていることもわかりました.
なお,この記事はツイートあくまでもデータがこのようになっているということであり,どちらが正しい,正しくないということについて結論を出すものではありません.もし自分のツイッター上のタイムラインと違った印象で見えたとすれば,おそらくエコーチェンバーの中から見ているということだと思いますので,ご注意いただければと思います.
なお,個人的に気になるのはQアノン系等の陰謀論系の一部アカウントが反Colaboクラスタに興味を持っている点です.人間には「悪い人はすべての面で悪い人である」「悪い人の味方は悪い人である」と思ってしまう認知バイアスがあります.二重過程理論でいうところのシステム2では「世の中そんなに単純ではない」と理解していてもついついシステム1によって認知バイアスが生じてしまうのですが,それによって生じる認知的不協和を解消しようとすることが陰謀論的な解釈に結びつくことがあります.「敵の味方は敵」と考える認知的均衡理論はかなり強力なので,今回のように二つに意見が割れている炎上を見る際には,認知バイアスがあることを意識した解釈を行うことが必要かもしれません.
追記(2023/1/7):
本記事に対して分析が足りない箇所についてのご指摘をいくつかいただいています.残念ながらあまり詳細まで分析している時間は取れそうもありませんが,幸いなことに本記事はオープンなツイートデータを使っておりますので,誰でも分析が可能です.Web Tweet Crawler等でツイートデータを収集可能ですので,本記事で分析が足りない,あるいは間違っているのではないかとお考えの方は,ぜひご自身でもデータを使って分析を進めていただければと思います.多様な視点からの分析が,より事象の理解を深められると思いますので,データに基づく間違いの指摘や新たな視点での分析は大歓迎です.