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「腹痛で学校に行かれない」娘に起こった「身体症状」その原因と回復まで【不登校初期対応】

保健師ノンオイル料理研究家茨木くみ子ノンオイル健康料理研究家(保健師)

こんにちは保健師・ノンオイル料理研究家の茨木くみ子です。
今日は子育てに関する体験談を少しさせていただきたいと思います。
毎年9月になると思い出すのが、長女が小学2年生の時の「謎の腹痛」です。

突然始まった「謎の腹痛」

長女は小学2年生の夏休み前に突然「謎の腹痛」が始まり、不登校気味になりました。
はじめは朝は元気なのに、給食の時間になると、お腹が痛くなり、学校から電話連絡が来てお迎えに行きました。
娘は保健室で青白い顔をして、迎えを待っていました。
手をつないで家に帰るころには、会話もでき、腹痛はよくなり、熱もないため、病院に連れて行くほどではないかなあと様子を見ていました。
そんなことが数回続いた後、次第に「謎の腹痛」は朝も起こるようになりました。

朝起き、朝食の時間になると「お腹が痛い・・・・」朝ご飯は食べられず。
そして顔色は真っ青。
これでは学校には出せない。
しかたなく、「今日は休もうか」と娘に声をかけ、学校に電話連絡。
しかし1時間くらい経つと、「謎の腹痛」はよくなり、顔色もバラ色に。
そんな娘の様子を見ながら、わたしは「これは身体から来ている腹痛ではない」と感じていました。
わたしの頭の中に「不登校」の文字がちらつき始めました。

毎朝、励まし、背中やお腹をさすり、だましだまし、朝の時間を過ごしました。
「今日は登校できるだろうか・・・・」
家を出発できても途中でお腹が痛くなり断念することもしばしばありました。
そこで担任の先生にお願いしてスクールンカウンセラーに相談させてもらうことにしました。

わたしは、その年の3月に次女を出産したばかりでした。
8年ぶりの赤ちゃんの子育てと料理家の仕事で、毎日忙しくしていました。
長女は赤ちゃんを大変喜び、お世話もたくさん手伝ってくれていました。
わたしは、そんな家庭での様子をスクールカウンセラーに話しました。
するとスクールカウンセラーは、「次女さんが生まれたことが今回の不登校と大いに関係しているかもしれません」と言いました。

「えっ!8歳も離れていて、赤ちゃん返りの代わりがこの不登校??」とわたしは驚愕しました。

スクールカウンセラーから頂いたありがたい助言

「愛情をたくさん注いであげてください。親がどんなに上の子に気を使い対応していても、親の愛情は2倍にはなりません。一人っ子の時と比較するとどうしても寂しさを感じてしまうのです。」と説明してくれました。

愛情不足だったか・・・・・
「ごめんなさい。許してね・・・・」
愛情を注げば、この「謎の腹痛」は治るの???
とりあえずスクールカウンセラーが示してくれた提案を実践することにしました。

【スクールカウンセラーからの提案】

・赤ちゃんより長女。長女を優先する。
 長女のいる時間は赤ちゃんより長女。そして赤ちゃんのお世話はできるだけ主人にお願いして、わたしが長女の世話をするようにしました。

・長女と二人きりの時間を毎日作る。
毎日お風呂の時間を長女との時間と決め、二人きりで入ることにしました。
そしてお風呂の中で、しりとりやなぞなぞ、窓に絵を描いたり、ゲームなど、二人きりで楽しむ時間を作りました。

・家族そろって寝る。
小学生になったころから長女は一人部屋でベットで寝ていました。
親は親のベットで赤ちゃんと三人で寝ていましたが、敷き布団を購入し、家族4人で同じ部屋で、私が長女の隣で寝るようにしました。

・手料理で愛情を注いで
スクールカウンセラー曰く、私の仕事が料理家なので、胃腸症状が出ているのではないかと。料理を通じて愛情を注いであげてほしいと。
娘のリクエストメニューを優先して作り、たくさんお料理のお手伝いしてもらい一緒にお料理をしました。

・無理やり登校させたり、病院めぐりをしていないので治りは早いのではないかとのことでした。
(病気を見つけようと病院を巡り、検査を受けさせ連れまわすことは、子どもの不安を大きくし心の傷を深くしてしまう可能性があるとのことでした。)

夏休みは元気な娘

夏休みになり、わたしは長女との時間をたくさん作りました。
長女は学校のお友達ともよく遊んで、お腹が痛くなることもほとんどなく元気に過ごしていました。
私は長女はすっかり元気になった。謎の腹痛は「治った」と思いこんでいました。

しかし9月が近づくと、娘はだんだん元気がなくなってきました。
学校が始まり、腹痛が再発。
「治ってなかったんだ」とわたしは大いに落胆しました。

学校に行かれなくて不安なのは子ども自身だった

謎の腹痛はいつまで続くのだろう。
このまま学校に行かれなくなってしまうのだろうか。
この子の人生はどうなるのだろうか・・・・
学校には行かれないのに、家ではとても元気で楽しく遊んだり、テレビを見ている娘の姿を見ると「さぼり癖を付けてしまったのか」
わたしの子育てが間違っていたのかと、とても不安でした。

もっと子どもの心を学ばなくてはと、わたしは不登校に関する本を読み漁りました。
本を読むことで
親の不安を「今日は学校行かれそう?」「またお腹が痛いの?」「明日は行かれるといいね」と会話で娘に背負わせ、プレッシャーをかけていたことに気づきました。

そして、「このまま学校にいかれなくなったらどうしよう」と一番不安に感じているのは娘自身だったことにも気づきました。
そして不安そうにしている娘に「学校に行かれなくても大丈夫。無理することないよ」と声掛けして、娘の不安を解消することに努めました。

このまま腹痛が治らなくても、命に係わる病気ではないのならば、ゆったり待とう。
たとえ学校に行かれなくなったとしても、生きてさえいてくれたらそれでいいと思うようになりました。
親の心が定まったころ、娘の表情が少しずつ変わって明るくなっていきました。

人もスマホも家でエネルギーを充電

充電中です。
充電中です。

わたしは本からたくさんのことを学びました。
子どもは学校という社会で毎日身をすり減らして頑張っていることも知りました。

「子どもの世界も何かと大変なんですね。」
ある本には「エネルギーが溜まれば、子どもの世界に戻りたくなる。」と書いてありました。
今振り返ると、本当、そのとおりだったと思いました。

スマホは一日外で使ったら、家で一晩充電します。人も同じです。外で使ったエネルギーを充電しなければ外で頑張れない。
はじめ、学校に行かないのに家で楽しそうに遊んでいる娘の姿を見守ることは、辛く、大いに悩みました。
しかし、「家は充電場所」と理解できてからは
家で楽しく遊んでいる姿。テレビをみてゴロゴロしている姿。ゲームも、リラックスしている姿を見ると、娘の背中から充電の線が見えるような気持になりました。
「あっ今充電中ね。たっぷり充電してね」とほほえましく思えるようになりました。

手作りのお弁当

秋になり、担任の先生がお弁当をもって登校したらどうかと提案してくれました。
娘に聞くと大変喜んだので給食と同じメニューを私が手作りしお弁当箱に入れて持たせることになりました。

保健室や職員室で食べたり、担任、養護教諭、スクールカウンセラーなどたくさんの先生が協力してくれました。

すぐに「謎の腹痛」は治ることはありませんでしたが、親の心の成長とともに長女は安心感を取り戻したのか、3~4年くらいかけて、少しずつ良くなっていきました。


どんな時も、子どもを信じられる親になりたい

長女はその後、中学生、高校生、大学へ。
今は保育士として幼児教育をする側になって頑張っています。子どもの心に寄り添える保育士になりたいとのことでした。
最近大人になった長女にあの頃のことを聞くと、「あの頃は食べ物が飲み込んでも落ちていかなかった。飲み込んだ食べ物が胃から上がってきて困った」と言っていました。
赤ちゃんだった次女も、来年は大学生になります。

ここまでの子育てでも、何度か「この子はこのまま学校に行かれなくなるのか・・・・」と思うときがありました。本当に不登校はちょっとしたことから始まります。
周囲の環境もありますが、敏感・繊細さなど、子の心の特性が大きく影響するように感じます。
そんなガラスの心を持った子もいろいろな体験を積むことで、少しずつ強く柔軟に社会生活ができるようになってゆきます。たくさん躓いた子ほど自分をよく知っているように思います。
心のエネルギーが枯渇したら休みながらその子のペースで成長していってほしいと思います。

子どもが苦しい時ほど
「わが子を信じよう。わが子の生きる力を信じてあげられるのは親だけ。きっと大丈夫。時間はかかっても、きっと乗り越えてくれる。大丈夫だよね」
これがわたしたち夫婦の合言葉です。

最後までお読みいただきありがとうございました。
現在は子どもの心の相談場所がたくさんあります。
腹痛・頭痛・起きられないなど身体症状も心のSOSと考えて、一人で抱え込まずに「子どものこころの専門医」のいる医療機関やスクールカウンセラー・子ども家庭支援センターなどに早めに相談してください。
茨木くみ子

わたしは自身が摂食障害・不安障害・吃音などを体験しています。
子どものころに親から受ける影響はとても大きく、成長し大人になった後も生きづらさを残してしまうことがたくさんあります。
子どもを一人の人間として尊重して、子の気持ちに沿った対応を進めていっていただきたいと思います。

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ノンオイル健康料理研究家(保健師)

産業保健・特定保健指導・子育て相談などの相談業務を長くしてきました。また自身が過食症・摂食障害を克服し約-20kgのダイエットに成功その体験から日本人に合った健康な食生活は和食だったことを再確認。高脂質な洋食・中華・洋菓子・パンを日本人に合った低脂質な和食に近づけたレシピをご紹介しています。著書多数最新刊「ふとらないクリームのお菓子 」「ふとらない米粉のお菓子」【現在の活動】オンラインや自宅で料理教室にて健康情報や料理レシピを発信保健師業務は「うららか相談」にて個別相談を受けています。料理制作動画はYouTubeにてInstagramでは最新情報とライブをしています。

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