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結婚について知っておきたい法知識 その13 婚姻費用分担義務~妻の「へそくり」は夫にも権利がある!?

竹内豊行政書士
妻のへそくりは夫との共有財産になります。ただ、現実はそうはならないようです。(ペイレスイメージズ/アフロ)

今回は、夫婦間のお金の分担についてお話しします。

夫婦には同居義務があります(民法752条)。

(同居、協力及び扶助の義務)

752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

この義務に対応して、婚姻共同生活から生じる費用は、夫婦各自がその資産・収入その他一切の事情を考慮して分担します(民法760条「婚姻費用の分担」)。

その費用は、家事労働という現物出資の形でも構いません。したがって、夫は生活費を入れて、妻は家事をするという役割分業も、婚姻分担の一つの方法になります。

(婚姻費用の分担)

760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

婚姻費用の内容

婚姻費用の内容は、夫婦が未成熟子との家庭生活を営む上で必要な費用です。すなわち、夫婦の財産・収入・社会的地位にふさわしい通常の生活費を意味します。

具体的には、次のようなものが挙げられます。

・夫婦の衣食住

・夫婦の教養娯楽

・子の養育費 など

親や成人した子どもと同居している場合

婚姻費用は一体的な家庭生活の維持費用です。したがって、たとえば、親や成人した子、相手方配偶者の親・連れ子と共同生活をしている場合には、これらの人の生活費も婚姻費用の中に含まれます。

妻のへそくり

婚姻費用として拠出された財産が余った場合、あるいは、貯蓄された場合には、これらは夫婦の共有財産となります。したがって、妻が生活をやりくりして貯めたへそくりも夫婦の共有財産になります。つまり、夫にも権利があるということになります(しかし、妻にこの話をしても、普通は却下されるのがオチでしょう)。

夫の小遣い

婚姻費用として醵出する必要のなかった財産および夫婦共同生活の中で、夫婦の間で話し合って決めてお互いに合意して認めた「小遣い」については、夫婦各自が自由に使用・処分できます。したがって、夫は小遣いを何に使おうが妻から文句を言われる筋合はありません(現実はそうはならない場合がほとんどだと思いますが・・・)。

夫婦生活を営む上で、「お金」は重要です。お互いが「婚姻費用分担義務」を正しく理解して、お金のことで喧嘩をしないように心がけましょう。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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