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衝撃!高齢者の孤独死が6万8千人~孤独死の相続がモメやすい4つの理由とその回避策

竹内豊行政書士
孤独死が年間6万8千人にも上ることが判明しました。(写真:イメージマート)

孤独死をされた方が年間約6万8千人も上ることが報道されました。

孤独・孤立の問題への対策をめぐり、政府は13日、今年1~3月に自宅で亡くなった一人暮らしの人が全国で計2万1716人(暫定値)確認され、うち65歳以上の高齢者が約1万7千人で8割近くを占める現状を明らかにした。年間の死者数は約6万8千人と推計される。(引用:高齢者の孤独死、推計年間6.8万人 今年1~3月に1.7万人確認

孤独死された方の相続は一般に困難を伴い、紛争になってしまうことが多々あります。そこで、孤独死の相続がモメやすい理由とその回避策をお伝えしたいと思います。

「相続人」を探し出すのが難しい

孤独死をされた方の中には、両親が既に死亡していて配偶者(妻または夫)も子どももいないという方がめずらしくありません。このような場合、相続人は兄弟姉妹になります。その兄弟姉妹も既に亡くなっていれば、甥・姪が亡くなった兄弟姉妹に代わって相続人になります(このような相続人のことを代襲相続人といいます)。

相続人を確定するためには戸籍で証明しなければなりません。代襲相続人が発生する相続は、必然的に相続関係が複雑になります。そして、複雑さに比例して必要な戸籍を集めるには、法律の知識と手間と時間を要します。

相続人に「当事者意識」が低い

ご紹介したような複雑な相続関係の場合、相続人に「自分が相続人である」といった当事者意識が低い方が見受けられます。孤独死をされた方は、親族と長い間連絡を断たれていることがめずらしくなく、当事者意識が低い相続人が出てしまうことも致し方ないことかもしれません。

遺産分けは相続人全員の合意が必要で、相続人全員が遺産分割協議書をはじめとした数々の書類に署名押印をする必要があります。当事者意識が低いと、相続手続に非協力的になりがちです。そういう方が相続人の中にいると、相続手続が停滞してしまいます。

「相続財産」の把握が難しい

亡くなった方に同居している人がいれば、ふつう、その方の生活がある程度わかるので、どこにどの程度の財産があるのかを比較的容易に知ることができます。しかし、孤独死をされた方はそのような方がいない場合が多いため、財産の把握が困難を伴うことがあります。その結果、遺産分けに長時間を要するおそれがあります。

「笑う相続人」が出てくる

孤独死された方の相続人の中には、先に紹介した代襲相続人のように、どちらかというと棚ぼたで相続人になる方が比較的多くいます。そして多額の遺産が転がり込むこともあります。このような相続人を意図せずに財産が転がり込んで笑いが止まらないことから「笑う相続人」ということがあります。笑う相続人になった方の中には、ここぞとばかりに権利を強く主張して遺産分けの話し合いがまとまりにくくなる場合があります。

以上ご紹介したように、孤独死をされた方の相続は困難を伴う傾向があります。そうなると、遺産分けの話し合いがまとまりにくく、その結果、不動産が空き家になってしまったり相続人間で紛争状態になってしまったりすることがあります。

「遺言書」が危険を回避する

遺言書があれば遺産分けの話し合いを設けなくても遺産を残したい方に引き継ぐことができるで、相続争いを回避することが可能となります。孤独死の可能性が否定できない方は万一に備えて遺言書を残すことを検討してみてはいかがでしょうか。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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