籠池夫妻の判決 来年2月19日に 無罪主張は通るか?
森友学園の補助金不正事件で詐欺などの罪に問われた籠池泰典前理事長と妻の諄子元副園長の刑事裁判の判決が、来年2月19日に大阪地裁で言い渡されることがわかった。裁判所と検察、弁護側の3者による非公開の協議で決まった。関係者が明らかにした。
籠池氏「国策捜査だ」検察と法廷で対峙
籠池夫妻は、国と大阪府・市の補助金合わせて1億7000万円あまりをだまし取ったとして詐欺などの罪に問われている。今年3月の初公判で籠池前理事長は「国策捜査、国策逮捕、国策勾留は絶対許せません」と宣言。無罪を主張した。補助金事件は、森友学園への国有地の大幅値引き販売への安倍政権の責任から目をそらし、自分たちの口封じをするための国策捜査なのだと。検察側は「裁判と無関係だ」と発言を制止しようとしたが弁護側が反論。いきなり波乱含みで裁判は始まった。
キャラ立ちしている被告・検事・弁護士
ドラマはキャラが立っていないとおもしろくないという。とすると籠池夫妻の裁判は、被告の夫妻はもちろん検事も弁護士も実にキャラ立ちしている。
例えば検察側主任の堀木博司検事は、籠池夫妻の自宅をガサし、逮捕から約40日間取り調べた、因縁のコワモテ元特捜検事だ。対する籠池氏の主任弁護人秋田真志弁護士、諄子さんの主任浦功弁護士はいずれも大阪で名うての刑事弁護士だ。検察と弁護側は法廷で厳しく対峙してきた。
そこに諄子さんという不確定要素が加わる。コワモテ堀木検事が被告席の諄子さんを指さし「発言しています!」と声をあげたことがある。法廷で不規則発言をしているという指摘だ。すると諄子さんの横にいた浦功弁護士が語気も荒く「何も言うてへん!」堀木検事が腰を浮かせ「何を!」…互いに見得を切った。まさに法廷の籠池劇場である。
鬼の目にも涙
諄子さんが法廷で声を震わせハンカチで顔を覆って号泣したこともあった。夫妻の長女、町浪(ちなみ)さんが証言に立った時だ。籠池前理事長の後を継ぎ森友学園の理事長を務めている。夫妻は保釈の条件で、町浪さんと会うことができない。
裁判官が「あなたのお父様お母様にどういう気持ちでいらっしゃいますか?」と尋ねた。しばらく沈黙していた町浪さん。思い切ったように語り始めた。
「私は前園長(籠池泰典前理事長)が幼児教育に真剣であったのを見てまいりました。子どもたちに我が子のように接していたのを一教員として見てきました。このことに関しては今も敬意は持っております。敬意を表しながら、新たに私自身がまとめる園としてやっていこうと思ってます」
諄子さんの涙腺が崩れた。「涙が吹き出たのよ。かわいそうな思いをさせたなあって」
鬼の目にも涙だ。
諄子さんが検事に“愛の告白”
法廷の裏でも別のドラマが展開した。例えば休憩時間、通路に出てきた堀木検事に向かって諄子さんが「堀木さ~ん、ありがとう~大好きよ~」と“愛を告白”したというのだ。最初は知らぬ顔をしていた堀木検事も最後は振り返り、2人はしばし見つめあったという…こういう被告人と取り調べでも公判でも向き合う運命にあるとは、ご苦労様なことだ。
私はこのことを翌日の日刊ゲンダイで記事に書いた。すると次の公判で、堀木検事が弁護団に歩み寄り「被告人に検事への声かけをやめさせてもらいたい」と申し入れた。すぐさま弁護団から笑いが起きた。記事を意識していることが明らかだったからだ。
実はこれには伏線がある。その記事が出た7月5日は、大阪地方検察庁の毎夏恒例のビールパーティーの日だったのだ。“大阪の迎賓館“と称される名門リーガロイヤルホテルで大阪の全検事が参加する。堀木検事は特捜部の一団と話し込んでいたというから、記事の話題も出たのかもしれない。
それをわかって書く私も人が悪いが、その日の深夜、特捜部の事務官が女子トイレに侵入して逮捕されたから、大阪地検はそれどころではなかったろう。
自分を有罪にしようと頑張っている検事に「頑張ってね」
その後、諄子さんはまたも法廷の裏で堀木検事に話しかけた。
「堀木検事~きょうもありがとう~もう検事辞め~弁護士なったらいいやん」
夫妻によると、堀木検事は泰典さんの方を向いて「籠池さん知ってるでしょ」と答えたという。籠池前理事長の逮捕後の取り調べの中で堀木検事が、検事を辞めたら弁護士になるという話をしたらしい。
最後に諄子さんが「頑張ってね~」。すると堀木検事は「頑張ってます」…この方はあなた方夫妻を有罪にするために頑張っているんですけど、それでいいんですか? 諄子さんの言動は常人の理解を超えている。
そして堀木検事。いかつい風貌に似合わず、意外にいい人なのかもしれない。
28日 籠池前理事長の被告人質問が最大の山場
裁判は、検察と弁護側の証人尋問がすでに終わっている。この後、今月28日に籠池泰典前理事長、9月2日に諄子元副園長の被告人質問が行われる。
特に28日の籠池前理事長の被告人質問は、弁護団の質問に答える形で籠池氏が持論を展開するであろうし、逮捕後の取調官だった堀木検事との直接対決も予想されるだけに、今回の裁判の最大の山場となるだろう。
そして10月30日、検察の論告求刑が行われて結審する。その後の判決の期日は、これまで決まっていなかった。
「粛々たるや 我が心」「無罪を確信」
判決日が決まったことを受けて、籠池前理事長は次のように語った。
「罪に陥れようと思えば仕立てられる検察に対し、籠池がどのような言論を発していくかが問われる」
「森友学園への国有地売却と公文書改ざんをめぐり、財務省の官僚や役人たちについて検察審査会が不起訴不当と議決を出したのに、大阪地検特捜部は再び不起訴にした。一方で私たち夫婦は逮捕・起訴され300日間も勾留された。これはなぜかというのが大きなポイントでしょう」
「そこを裁判官がどう認識するか。単純な刑事事件と見るのか、安倍首相を守るための検察の忖度の一環と見て取るか、そこですね」
ここで一句。
「粛々と 粛々たるや 我が心」
そして諄子さんが一言。
「無罪を確信していますから」
判決は来年2月19日午前10時から、大阪地方裁判所で言い渡される。
【執筆・相澤冬樹】