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全国高校7人制ラグビー大会で輝いた桑山聖生(鹿児島実業3年) ナドロ級の衝撃! 

斉藤健仁スポーツライター
準々決勝の東福岡戦でパスをする桑山聖生(撮影:斉藤健仁)

7月19日から21日まで、長野県上田市の菅平高原で行われた第1回全国高校7人制ラグビー大会「アシックスカップ2014」が開催された。個々の判断とスキル、組織的ディフェンスに優れた東福岡(福岡)がカップトーナメント決勝戦で御所実(奈良)を26-12で破り、栄えある初代王者に輝いた。東福岡は春の選抜大会と合わせ「2冠」となった。

「セブンズ」と呼ばれる7人制ラグビーは、2016年のリオデジャネイロオリンピックから正式種目になることが決まっている。15人制ラグビーとほぼ同じルール、同じ広さのグラウンド(試合は7分ハーフ)で行われるため、15人制より一人ひとりのスピード、スキルの高さが際立つ競技とも言える。

今大会の注目を一身に浴びた逸材

そんなセブンズの高校初の全国大会であるアシックスカップでは、一人の選手がメディアや関係者の耳目を集めた。とある強豪校の監督は「馬のような走り」と称していたが、初めてフィジー代表のCTB/WTBネマニ・ナドロ(NEC/クルセイダーズ)を生で初めて見たときの衝撃に近かった。

その選手とは、鹿児島実業(鹿児島)の桑山聖生(3年)である。

準々決勝で優勝した東福岡に敗れた(21-35)ものの、身長184cm、体重84kgの体格とスピードを生かして、弟・淳生(2年)らと躍動した。桑山は15人制では最後尾の「15番」FBだが、セブンズでは「1番」のPRを務め、スクラムやラインアウト、キックオフで相手にプレッシャーをかける。さらに豪快な走りでは4試合で9トライ、さらにキッカーも務めて18ゴール(合計81得点)という獅子奮迅の活躍を見せ、同校ラグビー部を史上初となる全国大会ベスト8に導く大きな原動力になった。

実は桑山は、中学時代は陸上の短距離などで全国大会に出場し、100mは11秒台で走るスプリンターだった。ただ、小学4年生から「友人の平井継之助(流通経済大柏3年)の影響で」土日のみ、「鹿児島オールブラックス」で始めたラグビーを、中学になっても継続していたという。ラグビーの将来性を買われ、城西中3年生にして、当時高校2年生だった松田力也(帝京大2年)、山沢拓也(筑波大2年)らとともに世界で戦えるユースの育成、発掘する活動の「セブンズアカデミー」に選出された。

世界で負けた悔しさから楕円級に専念することに

それでも、本人は「陸上でオリンピック」という思いから、「高校生になったら陸上に専念するつもりだった」と振り返る。たが、日本代表CTB中村亮土(サントリー)らを育てた鹿児島実業ラグビー部の富田昌浩監督は「あの走りはラグビー界の宝ですから」と惚れ込み、「陸上とラグビーを両方やってもいいから」と本人を説得し、鹿児島実業に進学することになったという。

だが、桑山の「二刀流」生活は、そうそうに終わりを告げる。高校1年生の1月、オーストラリアで行われたセブンズの国際大会(オーストラリアン・ユースオリンピックフェスティバル)に竹山晃暉(御所実3年)らとともにユース日本代表として出場し、南アフリカやオーストラリアといった世界の強豪と対戦したが大敗を喫した。「悔しい思いをしました。陸上との掛け持ちが上手くいくはずがない」(桑山)と楕円球に専念することに決めた。

昨年度の「花園」こと全国高校ラグビーではケガのため輝きを見せることはできず「全国区」にはなれなかったが、その後も「セブンズアカデミー」などで研鑽を積んだ。また、自らのセブンズの経験をチームに伝えるなどして、3月から15人制と合わせて、チーム一丸となって強化を進めたことが、今回の結果に結びついたというわけだ。

ラグビーで世界と戦いたい!

ただ、ベスト8では決して満足していない。桑山は「相手のプレッシャーの中で自分がミスしてしまい流れを悪くしてしまった。メンタルを強くしないと世界で戦ってはいけない。ただ東福岡と対戦して、いい経験になりました。今日の敗戦を反省して上を目指していきたい」とキッパリ。

そんな桑山のラガーマンとしての目標は世界大会に出場すること。「少し難しくなってきましたが、身近なところでは、藤田慶和選手(早稲田大学3年)が高校生で出場していたので、(セブンズのサーキット方式の世界大会である)ワールドシリーズに参加してみたいです。また(7人制の)オリンピックも(15人制の)ワールドカップも出場してみたい」

2019年には日本でラグビーのワールドカップが開催され、2020年には東京にオリンピックがやってくる。18歳の夢は大きく広がるばかりだ。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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