初期宇宙にしかない恒星「Quasi-star」がヤバすぎる
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どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「初期宇宙にあった最強天体Quasi-star」というテーマで動画をお送りしていきます。
●Quasi-starはどんな天体?
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/00199221/internal_1646161397560.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
Quasi-starは、宇宙誕生直後の初期の宇宙でのみ存在したとされる、非常に特殊な天体です。
Quasi-starは恒星と同じ見た目をしていたとされていますが、最大の特徴は、その中心部になんとブラックホールが存在していることです。
さらにQuasi-starの質量は太陽の1000倍以上あり、既知のどの恒星よりも遥かに重いです。
諸説ありますが、表面温度は約4000度とされていて、約5500度の太陽よりも少し低温なようです。
そしてその大きさは尋常ではなく、半径が50億kmにもなり、太陽の7000倍以上を誇ります。
太陽から海王星までの距離が約45億kmなので、Quasi-starが太陽の位置にあれば海王星軌道まですっぽり飲み込むほどの巨大さです。
![Credit:Sauropodomorph](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/00199221/internal_1646161500000.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
これまで発見された最も巨大な星で太陽の2000倍程度なので、Quasi-starは既知のあらゆる恒星よりも遥かに巨大なんですね。
●Quasi-starはどのように作られる?
初期の宇宙は現在の宇宙と比べて非常に高密度な世界であり、ダークマターの作用も相まって、そこで誕生する恒星は現在のものとは比較にならないほど大質量で巨大だった可能性があるとされています。
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現在発見されている中で最大質量の恒星は、大マゼラン雲にある「R136a1」であり、その質量は太陽の320倍程度と考えられています。
![Credit:平野信吾](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/00199221/internal_1646161679141.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
ですが2017年9月に発表された研究成果によると、初期の宇宙では太陽の数千~数万倍もの超巨大な質量を持った恒星が誕生していた可能性が、コンピューターシミュレーションによって示されたそうです。
このように初期宇宙にしか存在しないようなとてつもなく大質量な恒星は、現在の宇宙にも存在するような通常の大質量星とは異なる最期を迎えると考えられています。
一般的に恒星は核融合反応で外側に膨張しようとする力と、自身の重力で内側に落ち込もうとする力が釣り合い、安定して形を維持することができています。
ですが太陽の30倍以上の質量を持つ大質量な恒星では、核融合がどんどん進行して最終的に最も安定な元素である鉄が形成されると、核融合がこれ以上進まなくなり、自身の重力で星全体が押しつぶされ、ブラックホールが形成されます。
ブラックホールが形成される際、その反動の衝撃波で星の外層全体が吹き飛び、これが超新星爆発として観測されます。
現在の宇宙にも存在するような、一般的な大質量星はこのような最期を遂げます。
しかし太陽の数千倍を超えるようなとてつもない大質量星となると、一生の最期にブラックホールが形成され、星の外層に衝撃波が伝わるものの、星の外層が分厚すぎるために、衝撃波を吸収してしまうそうです。
そのため星の核融合は終わって中心にもブラックホールが形成されているのに、外から見ると恒星の姿を保っているという、特殊な天体(=Quasi-star)が形成されるのだそうです。
その後も中心のブラックホールに大量の物質が降り注ぐことで放出される膨大なエネルギーが、星の重力と釣り合うことで、核融合が終わった後も数百万年にわたりその姿が維持されると考えられています。
●ブラックホール進化の謎を解明!?
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この宇宙には非常に多くのブラックホールが発見されており、特にほとんど全ての銀河の中心部には、太陽の数百万~数百億倍の質量に相当する、超大質量ブラックホールが存在していると考えられています。
さらに超大質量ブラックホールは、宇宙誕生後たった数億年後の非常に初期の宇宙でも発見されています。
ですが実は、このような短期間でこれほどの大質量のブラックホールが形成されたメカニズムについては、未だはっきりとは解明されていません。
現代の宇宙でも見られる通常の大質量星が形成するような、太陽の数倍~数十倍程度の低質量のブラックホールが超大質量ブラックホールまで成長するには、たった数億年ではどう考えても足りないというわけです。
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/00199221/internal_1646161915219.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
ですが初期宇宙にて太陽の数千倍以上の超々大質量星が存在しており、さらにそのような星がQuasi-starへと進化したと仮定すれば、Quasi-starの中心部では太陽の数千倍以上の質量を持った比較的大質量のブラックホールが非常に効率よく形成されることになります。
つまりQuasi-starはブラックホール成長の謎を解明する手掛かりとなるわけです。
初期の宇宙ではこのような奇妙な天体が発見されていて非常に面白いですね!
https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2008MNRAS.387.1649B/abstract
https://www.newscientist.com/article/dn12982-biggest-black-holes-may-grow-inside-quasistars/
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/info/5566/