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残り2か月で年俸6億円超え!ジャイアンツが今季浪人していたトレバー・ローゼンタールを獲得したワケ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ジャイアンツとメジャー契約に合意したトレバー・ローゼンタール投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ジャイアンツがベテラン投手を補強】

 7月21日のシーズン後半戦の開幕を控え、ジャイアンツが選手補強に乗り出し、通算132セーブを誇る32歳のトレバー・ローゼンタール投手の獲得を発表した。

 今シーズンのローゼンタール投手は、ここまで所属先が決まらず浪人生活を送ってきたが、ジャイアンツが発表したリリースによれば、合意内容は450万ドルのメジャー契約で、さらに計200万ドルのパフォーマンス・インセンティブ(登板数やクローザー登板数によりボーナスが支払われる)が加えられている。

 ジャイアンツは今回の契約合意に伴い、ローゼンタール投手を即座に26人枠に加えるとともに15日間の負傷者リストに入れ、アリゾナのキャンプ施設でリハビリを開始する予定だ。

【中継ぎ投手陣が崩壊状態だったジャイアンツ】

 シーズン前半戦終了時点で48勝43敗の成績を残し、ナ・リーグ西地区で3位につけるジャイアンツ。地区首位を走るドジャースに12.5ゲーム離されているが、ワイルドカード争いでは圏内のフィリーズとカージナルスを0.5ゲーム差で追っており、後半戦でも熾烈なポストシーズン争いが待ち受けている。

 だが今シーズンのジャイアンツは、明らかに中継ぎ投手陣に苦しんできた。先発投手陣の防御率はMLB5位の3.43と健闘しているものの、中継ぎ投手陣は同22位の4.19に低迷していたのだ。

 やはりジャイアンツとしても、信頼できる中継ぎ投手の補強は急務だった。そのため残りシーズンが2ヶ月余りになったこの時期に、高額年俸を支払ってでもローゼンタール投手の獲得に動いたわけだ。

【昨シーズンも登板無しで終わったローゼンタール投手】

 ただ今回のローゼンタール投手獲得は、相当なリスクを伴っている。今シーズンここまで浪人生活を送ってきたことだけではなく、昨シーズンも公式戦に1試合も登板できていないのだ。

 昨シーズンのローゼンタール投手は年俸1100万ドルでアスレチックスと契約したものの、開幕直後に胸郭出口症候群の診断を受け手術を受けた後、シーズン終盤でも股関節唇損傷が判明し、さらに手術を受け、そのままシーズンを終えていた。

 もちろんジャイアンツがローゼンタール投手の事前調査をした上で、メジャー契約を提示しているのは間違いないところだが、彼が本当に手術前の投球ができるのかは、やはり未知数な部分がある。

【左肩負傷からMLB復帰に失敗したハメルズ投手】

 昨シーズンもローゼンタール投手と類似したケースがあったのをご記憶だろうか。

 先発投手陣に負傷者が続出したドジャースが、昨年の8月4日になって2020年シーズンにわずか1試合の登板に止まり、それまで浪人生活を送っていたコール・ハメルズ投手と年俸100万ドルでメジャー契約を結んだ。

 ハメルズ投手も2020年シーズンのスプリングトレーニング中に左肩を負傷し、新型コロナウイルスの影響でシーズン開幕が遅れリハビリを続けていたのだが、結局1試合しか登板できなかった。2021年シーズンもドジャースと契約するまで左肩のリハビリを続け、浪人生活を送っていた。

 だがマイナーリーグで実戦登板を開始する前に、首脳陣が見守る中ドジャー・スタジアムで行われた模擬試合登板で左腕痛を訴え、そのまま登板を中断。結局登板機会がないままシーズンを終えているのだ。

 当時のハメルズ投手は37歳と高齢だった一方で、ローゼンタール投手は前述通りまだ32歳と、かなりの年齢差がある。しかもMLBには胸郭出口症候群から復活した投手も少なくない。

 果たしてローゼンタール投手は、ジャイアンツの期待に応えることができるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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