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車が大好きな愛知県であえて電車に乗る

大宮冬洋フリーライター

●今朝の100円ニュース:名鉄の営業利益 前年比14%増(毎日新聞)

「都内の渋滞のために45分ほどの遅れが生じました。お急ぎのところご迷惑をおかけして……」

長野と東京を片道3時間ほどで行き来する高速バスを使った。特急電車の約半分という料金の安さは嬉しかったが、到着時間が大幅に遅れたのは予想外だった。

30分だけ余裕を持って到着後の予定を入れていた僕は、「国立府中ICあたりで降ろしてもらったほうが早いのでは?」と焦ってしまった。他の乗客は慣れた様子で大人しく座っている。高速バスでは30分程度の遅れは当たり前なのかもしれない。

車より電車のほうが好きな理由はいろいろあるけれど(一番の理由は運転が苦手なことだ)、電車は出発と到着時刻が決まっていることが大きい。電車も大雨や人身事故などで止まることはある。でも、あくまでイレギュラーだ。普段はレールの上をダイヤ通りに律義に走ってくれる。

日本の電車はどの地域でも時間厳守で運行している。スピードアップして早く着くこともできないけれど、遅くなる心配もほとんどない。この安心感は何物にも代えがたい。

毎日新聞によると、名古屋鉄道は2期連続で増収を果たした。鉄道事業に関しては三河線の輸送人員が増えたらしい。名鉄三河線とは豊田や刈谷といったトヨタグループの中心地を通る路線だ。トヨタ車好調の恩恵が電車にも波及しているのかもしれない。

一方で、僕が住む蒲郡を始発とする名鉄蒲郡線は廃線の危機にさらされている。蒲郡を含めた三河湾岸の町を結ぶ路線で、静かな海と低い山を眺めながらのんびり目的地に向える2両編成の赤い電車。しかし、少ない乗客の大半はお年寄りか中高生だ。蒲郡市と西尾市が毎年2億円以上の補助金を出し合ってなんとか支えている。廃線になったら名鉄バスでフォローするらしい。寂しいなあ。

愛知県に引っ越して来て、車好きの人がやたらに多い地域だと感じる。移動手段として必要なだけではなく、車にまつわるすべてが好きなのだ。象徴的なのは道路の充実度と活用度。自治体は常に新しい道を作りたがり、県民はその道を走りたがる。どの道がより快適で目的地まで早く着くか、という話題も少なくない。そして、運転はとても荒々しい(交通事故による死者数・死傷事故件数はともに全国ワースト1位)。

僕も妻が運転する車に週1ペースで乗っている。都内と違って車でしか行けない行楽地や店が多いし、まとめ買いをするときには自家用車は便利だからだ。だけど、好きなのはやっぱり電車。本数は少ないけれど、時間厳守で安全安心の移動手段だ。車の維持費やガソリン代を考えれば運賃も安い。外食店でも全員がお酒を飲める。みんな、もっと電車に乗ればいいのに……。名鉄蒲郡線は今後も走り続けてほしい。明日、久しぶりに乗ろう。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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