アップル、より大きな「iPad」の狙いとは? 画面サイズは週刊誌大の12.9インチ
米ブルームバーグが伝えるところによると、米アップルは現行モデルよりも大きい「アイパッド(iPad)」を来年発売するようだ。
ブルームバーグは事情に詳しい関係者の話として、アップル製品の製造を手がけるサプライチェーン(部品、部材の供給網)が、この新型アイパッドの生産に向けて準備をしていると伝えている。生産は来年の第1四半期(1〜3月)にも始まる見込みという。
画面サイズは、現行のフルサイズモデルの9.7インチを上回る12.9インチ(約32.8センチメートル)。
これはA4用紙よりは小さいが、週刊誌よりは少し大きいサイズ。ブルームバーグによると、アップルは1年以上前からサプライヤーとこのモデルの開発に取り組んでいたという。
大画面タブレットは法人市場に需要がある
アイパッドは売上高においても販売台数においてもアイフォーン(iPhone)に次ぐ規模の主力製品。だが、今年4〜6月期の販売台数はアイフォーンが1年前から13%増えたのに対し、アイパッドは同9%減少し、2四半期連続で前年実績を下回った。
ブルームバーグが引用した、米ガートナーのタブレット端末世界市場に関する調査によると、昨年1年間における基本ソフト(OS)別の販売台数シェアは、米グーグルのアンドロイドが61.9%で、前年から16.1ポイント拡大した。これに対しアップルのiOSは36.0%で、同16.8ポイント縮小した。
タブレットは、小型、低価格端末の販売が伸びており、その分野に強いアンドロイドがiOSから首位の座を奪ったという。
そうした中、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)はアイパッドの製品ラインアップ刷新に取り組んでいる。
ブルームバーグによると、この大型アイパッドの想定顧客は法人。先頃、アップルと米IBMはアイフォーンやアイパッドなどに対応する法人向けアプリの共同開発などで広範囲に提携すると発表したが、この時クックCEOは、提携の目的の1つは法人市場における販売促進と述べていた。
ブルームバーグは、米IDCの調査結果も引用している。それによると、今年4〜6月期における、企業、教育機関、政府機関に向けたタブレット端末の販売台数は、市場全体の16%を占め、1年前の13%から拡大した。
タブレット端末市場の成長が鈍化する中、こうした顧客層の需要は拡大していくとIDCは予測。とりわけ大画面タブレットの販売は法人市場で好調に推移すると同社は見ている。
アップルの製品戦略は、サイズに制約されない選択肢
もし、今回のブルームバーグの報道が事実だとすれば、アイパッドは現行の9.7インチのフルサイズモデルと7.9インチのアイパッドミニ(iPad mini)に12.9インチが加わり、3モデルがそろうことになる。
一方で、アイフォーンの新モデルについては、現行サイズよりも大きな、4.7インチと5.5インチの2モデルが今秋市場投入されると見られている。
米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)はこうした製品のラインアップについて、サイズによってそれぞれの端末を特徴づけるこれまでの製品戦略とは異なるアプローチだと伝えている。
例えば、アップルのノートパソコン「マックブック」シリーズは、11〜15インチのサイズがそろっており、アイパッドの大画面モデルはこの領域に入っていく。そして5.5インチのアイフォーンはアイパッドミニの領域に入っていくと同紙は指摘している。
同紙によると、アップルはかねて、モバイル端末とパソコンの性能差はやがてなくなっていくと述べていた。これは、顧客がサイズに制約されることなく、ライフスタイルに合わせて機器を選べるようになることを意味していると同紙は分析している。
機器の垣根を越えたユーザーエクスペリエンス
またウォールストリート・ジャーナルは、アップルが今秋リリースするマック向けOSとモバイルOSに備わる連係機能について触れ、これもアップルの新たな製品戦略だと指摘している。
これは機器の垣根を越えて作業を継続できる機能。例えば、アイフォーンで書いていた電子メールの続きをマックで書いたり、アイフォーンにかかってきた電話をマックで受けたりできるようになる。機器が換わっても継ぎ目なく利用できるこうしたユーザーエクスペリエンスをアップルは目指している。
(JBpress:2014年8月28日号に掲載)