『R-1』で話題の「アマチュア芸人」とはどういう立場なのか、「フリー」とはなにが違うのか
ピン芸人のナンバーワンを決める『R-1グランプリ2024』のファイナリストが2月11日に発表された。決勝戦には、サツマカワRPG、吉住ら人気芸人も顔を揃えたが、もっとも注目を集めているのが大会史上初となるアマチュアで決勝進出を果たした、どくさいスイッチ企画だ。
そこで一部で話題になっているのが「アマチュアとはどういう立場なのか」と「フリーとはなにが違うのか」という部分。
「アマチュア」はほかに本業を持ち、お笑いはあくまで趣味感覚でやっている
どくさいスイッチ企画はXの固定投稿に「お笑い芸人さんではありません」と記している。本業は会社員で、お笑いは「趣味」であると公言。このように本業がお笑いではなく、趣味感覚の場合は「アマチュア」としてくくられる。ちなみに、どくさいスイッチ企画の場合は自ら「芸人ではない」とも語っているので、彼の紹介時に用いられる「アマチュア芸人」の肩書きは、厳密には正しいとは言えない。
お笑いを生計の軸としているか、していないかがプロやフリーとアマチュアの線引きだとする意見もある。ただ、その意見は難しいところでもある。この場合は、芸能関係の事務所に所属しているかどうかもポイントになるのではないか。前提としてフリー、アマチュアは事務所無所属だ。
たとえば事務所所属の若手芸人の場合は、アルバイトの稼ぎの方が多いことがあり、バイトとお笑いのどちらが「生計の軸」なのか言い難いパターンもある。そこで「好きでやっている」と本人が言えばそれは「趣味」と捉えられるかもしれない。ただやはり「事務所所属」がプロアマの分かれ目ではないか。
吉本興業が運営しているお笑い養成所の最大手「NSC(吉本総合芸能学院)」に在学している生徒たちはアマチュアとして『M-1』などにエントリーしている。近年も、『M-1』の2021年大会でNSC在学中の軍艦がアマチュア扱いながら準々決勝へ進出し、ベストアマチュア賞も獲得して脚光を浴びた。NSCはあくまで“学校”なので、1年間のカリキュラムを経るなどし、さらに劇場にちゃんと立って活動するようにならなければプロ扱いされないようだ。
そんなアマチュアで“伝説化”しているのが、変ホ長調だ。同コンビは芸能事務所に所属せず、会社勤めをしながら『M-1グランプリ2006』の決勝へ進出し、8位という結果を残した。当時の『M-1』でのキャッチコピーは「史上最強のアマチュア」だった。さらに『THE W 2023』にもアマチュアで出場し、決勝へ進出している(ファーストステージ敗退)。『THE W』はほかにも、女ガールズ(2021年)、押しだしましょう子(2017年)がアマチュアで決勝まで進んだ(両組ともファーストステージ敗退)。
フリーは無所属で本業がお笑い、近年はラランドやシンクロニシティなどがフリーで飛躍
「フリー」は、「アマチュア」と似ているようで異なる立場だ。
フリーも事務所には所属していないことが前提だが、たとえほかの仕事に就いていてもあくまで「本業はお笑い」としている場合にそのように呼ぶ。
『M-1グランプリ2019』で準決勝まで進んだラランドは当時、サーヤが会社員、ニシダが学生で、芸能事務所に所属していないアマチュアコンビだった。その後も芸能事務所には入らずフリーへ“転向”してコンビ活動を続け、個人事務所を設立してプロになった。2023年4月に吉本興業所属となったシンクロニシティも、以前は会社員をしながら芸人として活動。立場的には「フリー」を名乗り、『M-1』の2022年大会では準決勝へ進出するなどした。
『THE W』の2020年大会、2022年大会では、にぼしいわしがフリーで決勝へ進出。インディーズライブが主戦場だったこともあり、2022年大会決勝出場時のキャッチコピーは「地下劇場の星」だった。2024年春開催『ytv漫才新人賞決定戦』進出をかけた予選会「事前ROUND」には、ボニーボニーが大会史上初となるフリーで登場。ちなみに「事前ROUND」は3度おこなわれたが、いずれも手見せ審査を通過しないと出場できない。ボニーボニーはすべてクリアして「事前ROUND」へ駒を進めたが、決定戦進出とはならなかった。それでも同大会のMCを担当する藤崎マーケットにインタビューした際、ボニーボニーについて「フリーの立場で手見せ審査を通って『事前ROUND』まで来られるのはすごい」と驚いていた。
逆にアマチュアとフリーの共通点は、プロに比べるとお笑いに割ける時間が限られるところ。プロはまわりにも同業の芸人がたくさんいて、アドバイスなどを得られる機会も多々ある。つまり自然と経験値を上げることができる。それがプロの現場で活動する強みだ。ただ、アマチュア、フリーはなかなかそういう風にはいかない。そう考えると、アマチュア、フリーが大型賞レースの決勝やそれに近いところまで進出できるのはまさに「快挙」である。