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「オレ、もう“そっち”なの?」。「ペナルティ」ヒデが語る通販への葛藤と本音

中西正男芸能記者
お笑いコンビ「ペナルティ」のヒデさん

 フジテレビ「ノンストップ!」で2014年から通販コーナーを担当しているお笑いコンビ「ペナルティ」のヒデさん(50)。圧倒的な売り上げで、在京キー局テレビ通販売り上げ7年連続No.1の立役者にもなっていますが、その経験から学んだものを綴った「勝ち癖がつく 最強プレゼン術」も上梓しました。最初に通販番組のオファーが来た時には「オレ、もう“そっち”に行かないといけないの?」という感情が込み上げたと言いますが、その中で感じた葛藤、そして、今の思いとは。

「オレ、もう“そっち”に?」

 通販のお仕事のお話をいただいた8年前、本当にリアルな話「え?オレ、もう“そっち”に行かないといけないの?」と思ったのが本音でした。都落ちじゃないですけど、そういう思いが出たのがその時点での正直な感情でした。

 ただ、その時期に行ったロケで、たまたま移動のロケバスで前の席が寺門ジモンさんだったんです。ジモンさんも通販の番組をやられていて、そこでジモンさんに「少し、お話をさせてもらってもいいですか?」と声をかけたんです。

 すぐさま「笑いの相談だったらダメよ」と言われたんで「大丈夫です。ジモンさんに笑いの相談は絶対にしませんから」と返してから(笑)、通販のお仕事が入りそうだということを相談させてもらいました。そこで、ジモンさんが言ってくださったんです。

 「ヒデ、お前、断ろうと思ってないか?だとしたら、それは大間違いだよ。メチャクチャ面白いし、奥が深い。これからお前が歳を取った時に見てくださるであろう方々がお客さんの年齢層でもあるし、ここから絶対にプラスになるから。だから、ありがたくお受けして、お前なりに楽しめばいいんだよ。オレはそう思うよ」

 その時、初めてジモンさんのことを先輩だと思いました…。それまで心の中ではジモンと呼んでましたけど、心の中でも“さん”をつけました(笑)。本当にジモンさんの言葉は大きくて、すごく強く背中を押してもらいました。

自分の一言で

 そして、実際にやらせてもらうようになって、ある日、スタッフさんから「ヒデさん、ありがとうございます!昨日、ムチャクチャ売れました」と言っていただいたんです。

 やったことのない仕事なので「ムチャクチャ売れた」というのがどれくらいの数字を指すのか全く分からない。

 ただ、ノリとボケも含めて「もしかして、2000万円くらい売れたんですか?」と自分の中であるはずのない大きな数字を言ったら「約1億8000万円です」と言われまして。

 まず驚きましたし、それと同時に純粋にやりがいを感じました。それだけのお金を動かす仕事だし、自分の一言、自分の熱でその数字が変わってくる。これはすごいことだと。

 さらに、あるメーカーさんが本当に社運をかけた商品をこの番組で販売したことがあったんです。その結果、商品がものすごく売れて、そのメーカーさんがそこからV字回復していった。そういうことがあると、これも純粋にうれしいですしね。

 最初は必ずしも前向きではなかったのは事実なんですけど、そういううれしいことに気持ちを“逃がして”ごまかしてるわけではなく、本当に、心底やりがいを感じる。その感覚を身をもって味わってから、さらに前向きになりましたし、その思いが見てくださっている方にもさらに伝わっていったような気がしています。

 いやらしい話になるかもしれませんけど、どれだけ売れても僕にマージン的なものはないですし、ギャラも1年目と変わらず同じ額でやり続けています。

 なんというのか、僕の中では“そこ”ではなくこの仕事と向き合ってますし、自分の力を振り絞ってやった結果、心惹かれると思ってくださる方が増える。満足してくださる方が増える。そここそが、一番のポイントなんだろうなと。

 僕はアナウンサーではないし、うまく説明することに関しては絶対にアナウンサーさんの方が長けてると思います。ただ、芸人である僕は面白く、親しみやすく、商品を紹介する。

 あと、芸人ならではの感覚というか、まずは目の前にいるスタジオのメンバー、スタッフさんを楽しませたい。引き込みたい。その気持ちがあるんですよね。

 そのためには、本音で語りかけるしかないですし、スタジオにいる仲間の信用を得られないと、視聴者の方々の信用が得られるわけがないだろうなと。

 実際、スタジオの出演者さんが本当にそのまま買ってくれるということがすごく多いんですよ。これは僕にとってもナマの反応というか、非常にうれしい部分ではありますね。他のお仕事で一緒になった方も、テレビを見て買ったと言ってくださることも多いですし。

 ただね、これだけ周りの皆さんが買ってくれてるのに、ウチの相方だけは一回も買ってくれたことがないんですけどね。灯台下暗しというか、ここはなかなか難しいところでもありますけど(笑)。

「かまへん、かまへん」

 でもね、そうやっていかに人の心に響かせるか。そこと仕事の中で日々向き合う中で感じたこと。そして、芸人としてこれまでやってきた中で、逆に自分の心が響いた諸先輩方の振る舞い。そういう部分を今回、ご縁があって本にさせてもらうことにもなりました。

 難しいお勉強ではなく、とことん楽しく。しかも、誰もが知っている方々のエピソードを連ねて本にしてますから、これから仕事を始める学生さんにも、ビジネスマンの方にも、家族の中で実権が握れないお父さんも(笑)、どなたが読んでいただいても何かしら感じることがあるとは思っています。

 なんといっても、まずは明石家さんまという名前から本が始まりますから。これはね、賞レースのネタみたいなもので出し惜しみをするとダメなんですよ。「決勝でこのネタを」なんて思っていたら、その前に負けてしまうというね。さんまさんから始まり、最後は松本人志さんで終わっています。

 他にもたくさんの方のお名前とエピソードを使わせてもらったんですけど、皆さんに共通するところは本にする許可を取ろうとしたら、そこに食い気味で「かまへん、かまへん」とか「好きなようにやって!」とか返答をしてくださるんです。

 人の心をつかむ本を書いたつもりだったんですけど、皆さんのこの対応に、こちらがまた心をつかまれました(笑)。

(撮影・中西正男)

■ヒデ

1971年4月7日生まれ。千葉県出身。本名・中川秀樹。市立船橋高校サッカー部時代には全国サッカー選手権準優勝、インターハイ優勝などを経験する。専修大学卒業時、横浜フリューゲルスから誘いを受けるもお笑いの道へ。高校サッカー部の後輩の脇田寧人(ワッキー)と94年に「ペナルティ」を結成する。フジテレビ「ノンストップ!」内の通販コーナー「いいものプレミアム」や静岡朝日テレビ「スポーツパラダイス」などに出演中。著書「勝ち癖がつく 最強プレゼン術」を7月15日に上梓した。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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