「М-1グランプリ2024」は「令和ロマン」が史上初の連覇を成し遂げました。

審査員として圧倒的な存在感を放ってきた松本人志さんがいない。その影響を懸念する声もありましたが、最終決戦の3組のネタはそんな外野のザワザワを完全に吹き飛ばすような内容でもありました。

3組に残ったのは「令和ロマン」「真空ジェシカ」「バッテリィズ」。その中で最もフレッシュで、最も急な上昇カーブを描いたのは綴るまでもなく「バッテリィズ」でした。

「М-1」で求められる大きな要素は“鮮度と勢い”。しかも、進化に進化を重ねた精緻なネタが次々と出てくる中で、バカバカしさと人間の魅力という根源的なものをとことん示す。まさにど真ん中の直球で強烈なインパクトを残しました。

二人は芸人野球チームのチームメイト。目が離せない存在感を持つエースさんとその魅力を最大限に引き出す寺家剛さんの的確なツッコミで地元・関西でも賞レースで注目されてきました。

今年2月、拙連載取材でインタビューをした時に痛感しましたが、二人を押し上げた原動力。それは「ブレない方向性」だと痛感しました。

取材メモを振り返ります。

―昨年「М-1」準決勝、敗者復活戦を経験して感じたことはありましたか？

寺家：確かに大きな舞台でしたし、いつもと違う空気をたくさん吸った。そういう刺激はあったと思います。

エース：…あ、スミマセン、一瞬ボーッとしてました…(笑)。ひとつ前の質問のことを考えてたら、今の質問が聞けてなくて。何でしたかね？

―ややこしいことを聞いてすみません。「М-1」の敗者復活戦を経験し、今思うこと、変わったなと思うことはありますか？

エース：そうですねぇ、僕は何も変わっていないですね。

寺家：結局、僕らはエースの魅力をいかに出すか。それが全てだと思っているんです。

今の話もなんですけど、何があってもエースは変わらない。エースの考え方はもう出来上がっているし、あとはそれをいかに気持ちよく、強く、投げられるか。エースがやるのはそこだけなので、考えたり、変えたりするのは僕だけなのかなと思っています。

我を出すことなく、何がチームのための最適解かを認識している。そして、それぞれの能力値が高い。もうシステムとして完成している。あとは売れるだけ。まさにその二人が“売れる”ドアを開けたのが今回の大会だったと痛感しました。

来年はすさまじい数の仕事が舞い込むことでしょう。その中でまたエースさんの新たな魅力やこれまでにないシステムも確立されることだと思います。

「令和ロマン」がすごい。こんなことは綴るまでもないことですが、こうやって新たなスターがしっかりと生まれる。大会のオープニングで「М-1」を作った島田紳助さんの言葉が出てきましたが、20回も示してきたことながら、改めて「М-1」が夢につながる扉であることを示した。そんな夜でもあったと思います。