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新フォーム挑戦の高橋純平は、悪夢の1.1回9失点KOとどう向き合うのか

田尻耕太郎スポーツライター
現在は振りかぶって投げている(筆者撮影)

阪神藤浪が2軍戦に登板。若鷹打線沈黙

7月19日、福岡ソフトバンクホークスはウエスタン・リーグで阪神タイガースと対戦した。

【7月19日 ウエスタン・リーグ タマスタ筑後 2,104人】

阪神     270001000 10

ソフトバンク 000002004 6

<バッテリー>

【T】藤浪、○小野(2勝0敗1セーブ)、モレノ――長坂

【H】●高橋純(0勝5敗)、大竹、野澤、古谷、飯田――栗原、九鬼

<本塁打>

【T】西田2号、板山2号、3号

<戦評>

 序盤で試合の大勢が決まった。ソフトバンク打線は、阪神先発の藤浪の前に沈黙。4回2死から栗原がチーム初安打を放つと、続く4番コラスもヒットで続いて好機を広げたが無得点。6回に釜元が2点三塁打を放ち反撃。9回裏には周東、曽根の連続タイムリー長打と九鬼の適時打などで4点を奪い返したが、前半のビハインドが大きすぎた。首位阪神と2位ソフトバンクのゲーム差は2.5差に広がった。(了)

高橋純平、新フォーム改造後初めての大乱調

足を上げたときの形も特徴的(筆者撮影)
足を上げたときの形も特徴的(筆者撮影)

 スコアボードにどんどん得点が重ねられていく。まだ2回表の1アウト。しかしソフトバンクベンチは、先発の高橋純平にタオルを投入した。

 初回、四球と死球で招いたピンチから高山に2点二塁打を浴びて先制を許した。修正したかった2回だが、さらに傷口を拡げるピッチングになってしまった。

 まずこの回先頭の西田にいきなり一発を浴びると、安打と2四球で1アウト満塁として江越に3点二塁打、さらに四球後に今度は板山に3ラン本塁打を献上して一挙7失点。ここで交代が告げられた。

 結局、投球回は1回3分の1。打者14人に対して被安打5(うち本塁打2)、与四球4、与死球1、奪三振1、失点9の散々な内容だった。

 試合後、高橋純は「すみません。今日は答えることがありません」とクラブハウスに消えていった。

4戦連続無失点だった

 今季の公式戦は未勝利で、この日で5敗目。不振が続くが、ここ1カ月ほどの内容はかなり改善傾向にあった。6月14日のウエスタン・オリックス戦で中継ぎ登板して1.2回を無失点に抑えると、三軍韓国遠征の三星ライオンズ戦では9回5安打1四死球で完封勝利を飾った。

 さらに帰国して28日のウエスタン・阪神戦に先発して4回無失点。7月7日の中日戦も先発で4回零封と4戦続けて無失点投球を見せていた。

 久保康生二軍投手コーチと取り組んでいるフォーム改造が一定の効果を発揮し始めていた。春先はセットポジションから投げていたが、現在は大きく振りかぶり、左足を高く上げたのと同時に一旦腕を下げたところから、トップを作りに行っている。

 しかし、この日は狂いが生じていた。試合後、久保コーチは「ボールを離す、リリースのところかな」と語った。「指先にボールの重さを感じて投げないと、コントロールもつかないし、いいポイントで離せない。だけど、ピッチャーってそれを感じられない時がある。まるでピンポン球を握っているみたいに」と独特な表現で説明をしてくれた。

振りだしに戻るのは危険か

 高橋純は戸惑い、悩み、苦しみながらマウンドに立ち続けたに違いない。

 これまでいくら好投していても、この一度の登板で疑心暗鬼に陥ることも考えられる。

 久保コーチはそれを危惧していた。「今はまだフォーム固めをしている段階。その日のコンディションなどによって、こういう結果になってしまう時もある。だけど、147,8キロを計測したようないい球もあった」。高橋純は高校ナンバーワン右腕と評され、3球団がドラフト1位で競合した末にプロ入りしてきた。能力の高さを疑う余地はない。1年目のフレッシュオールスターゲームでは自己最速の154キロを計測した。しかし、1軍登板はここまで1試合にだけ。3イニングで4失点した。

 ずっと迷い、悩み、投球フォームもコロコロ変わってきた。今取り組んでいることをまた変えてしまえば、全てが振り出しに戻ってしまう。せめて何かベース(基礎)を築き上げていかなければ、いつまでも前進は出来ない。

「週末に試合が組まれておらず、次の登板はすぐに決められないが、あまり間を開けずに投げさせたい」と久保コーチ話した。

 試合が終わって1時間が経とうとした頃。高橋純は室内練習場に出てきて黙々とシャドーピッチングを行っていたという。試練に真正面から立ち向かってみせる。その意気は感じさせてくれた。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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