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ワールドカップ・アメリカ代表戦は11日 エディー・ジョーンズHCが決意示す【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
サモア代表戦直前。眼光鋭く。(写真:ロイター/アフロ)

ラグビー日本代表は10月11日、ワールドカップイングランド大会の予選プールBの最終戦でアメリカ代表とぶつかる(グロスター・キングスホルムスタジアム)。自力での準々決勝が難しいなか、エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)が勝利宣言をした。

チームは加盟する予選プールBでのここまでの勝ち点は8。他会場の試合結果を受け、5チーム中暫定3位となった。準々決勝へ進める上位2チーム以内に入るには、まずアメリカ代表戦で勝ち点5(勝利により4とボーナスポイントによる1)を獲得し、13まで積み上げなければならない。暫定1位で勝ち点11の南アフリカ代表と暫定2位で勝ち点10のスコットランド代表の試合結果次第では、それでも目標を果たせないこととなる。予選プールで3勝しながら決勝トーナメントへ進めなかった例は、いまだない。

もっとも、指揮官らはかねて「まずは勝つことに集中する」とし、勝ち点の計算はあえて考えない方針を貫いている。

以下、26-5で制したサモア代表戦(10月3日/ミルトンキーンズ・スタジアムmk)翌日のジョーンズHCの共同取材時における一問一答(一部)。

――サモア代表戦のけが人進展。

「キンちゃん(ロック大野均)はハムストリング、マレ・サウ(センター)は膝の怪我で病院に行っている。進展は今夜(4日夜)わかります」

――同じ日に頭を打ったウイング山田章仁選手は。

「素晴らしい復帰を遂げています。あとは脳震盪のプロトコル(発症後7日は静養)に従うだけです」

――サモア代表戦から一夜明け。

「アメリカ代表戦のことばかり考えています。眠れなかったです。日本で最も大事な試合です。しっかりとした準備が必要です。いままで、日本がラグビーに対して真剣だというところは見せられた。ただ、仕事は完璧にやらなければいけない。アメリカ代表戦に勝てば任務完了。それ以外のことはコントロール外です。その後に小さなプロジェクト(決勝トーナメント)があればいいですが、そこは、気にしていません」

――サモア代表戦と同日、トゥイッケナムスタジアムではオーストラリア代表がイングランド代表を33-13で撃破。イングランド代表は開催国ながら予選プール敗退しました。

「昨日はオーストラリア人として誇れる日でした。赤ワインを飲みました。素晴らしい試合だったと思います」

――(当方質問)アメリカ代表戦に向け、日々どんな準備をするか。

「アメリカ代表戦でどう戦うかの構想は、すでにあります。戦術的にジャパンの微調整を加えるだけで、大きな変更はありません。アメリカ代表は7日に南アフリカ代表と試合をします。そこでレギュラーを出すかはわからない」

――サモア代表戦での戦術遂行がうまくいったわけ。

「全ては選手たちの準備です。ラグビーに対して大人な対応をしています。フィジカル、メンタルがしっかりできていて、戦術的な練習も自らおこなっている。シニアプレーヤーは特に褒めたい。リーチ(マイケル主将、フランカー)、(副将のフッカー堀江)翔太、ゴロー(フルバック五郎丸歩副将)。しっかりと前線で引っ張ってくれています」

――規律あるプレーができた。

「そこの大事さを選手が理解したからです。レフリングの重要性もわかっていた。ラグビーにおける規律は、チームのために自分を犠牲にすること。今回は誰も目立ちたがり屋はいませんでしたし、自分たちの与えられた任務についていました」

――それを身に付けさせるために、HCは何を。

「情報を与えて、それを選手たちにやらせる。コーチの仕事は、選手のやりたくないことをやらせることです」

――満足しているか。

「満足はしていない。2トライ、落とした。残念です。まだまだやるべきことはある。我々には80分(1試合)、残されています」

――満足することはありますか。

「ラグビーはダイナミックなスポーツです。常に向上する部分はあります」

――選手たちの疲労度。

「いい状態です。この先2日間(4、5日)は軽いプログラムをおこなってしっかりとリカバリー。火曜日(6日)から本気の練習をさせます」

――サモア代表のスタンドオフ、トゥシ・ピシ(ジョーンズHCがかつて指揮を執っていたサントリーに在籍)にメッセージは。

「サモアはラグビーに誇りを持って取り組んでいる国です。ワールドカップの歴史で素晴らしい成果を残している国です。昨日の結果にはがっかりしているでしょうが、次のスコットランド代表戦(10日/ニューカッスル・セントジェームズパーク)は国のプライドをかけて戦うはずです」

――過去のアメリカ代表戦について。

「ワールドカップでの日本代表のアメリカ代表戦の歴史を観ていると、全敗しています。特に思い出すのは2003年(10月27日/ゴスフォード・ブルータンスタジアム/26-39で敗戦)。父が観戦に行っていました。日本が勝てると思われていた。簡単に負けてしまいました。今度の日曜日も同じ状況です。フィジカル、メンタルの強度を高く、歴史は関係なく戦います。それができなければ、歴史は繰り返されます。フィジカル、メンタル、戦術を整えられれば、歴史は塗り替えられます」

――(当方質問)アメリカ代表戦に向け、どんな戦術を。先ほど微調整がある、とも。

「戦術面のことはいつも聞かれますが、教えません」

――相手の分析。

「選手です。スタッフはただの枠組みを作るだけ。それを理解する選手たち。チームの変化は、そこです。自律、独立しています。(こちらを観て)先ほどの質問ですが。アメリカ代表は大きくフィジカルなチームです。だから、我々としてはアスレチックコンタクト(単純な力比べ)はしたくない。それがアメリカ代表戦の戦術」

――先ほどあった、サモア代表戦の「2つトライを取り切れなかった」というのは。

「それは終わったことです。いまはアメリカ代表戦を考える。サモア代表には26-5で勝ちました。トライを取ることだけではなく、色々改善点があります。後半、ブレイクダウンの精度が若干、落ちた。キックオフの部分も十分ではなかった。やることはたくさんあります」

――サモア代表戦。プロップ稲垣啓太はフル出場。

「いいスクラムが組め、タックルもよく。過去最高のプレーをしています。フロントローはいい仕事をしています。堀江は世界クラスのフッカーだと証明しました。セットプレーもタックルもよかった。畠山(健介)もいいスクラムを組んだ」

――稲垣選手の成長。

「去年秋のジョージア代表戦(2014年11月23日/ミルヘイ・メスキスタジアム/24-35で敗戦)ではスクラムが全く組めず、シンビンにもなった。目まぐるしい成長です。パナソニック、レベルズ(国内外の所属先)に感謝します。ジョン・プライヤー(日本代表S&Cコーディネーター)の仕事は、選手を大きく強く80分走り回れるようにしてくれたこと」

――海外のクラブから選手情報を聞かれることは。

「…あります」

――ベスト8達成に向けて。

「そこはコントロール外のこと。コントロールできることは、アメリカ代表に勝つことだけ。他の試合がどうなるかは、コントロール外。知りません。確固たるテーマを持って臨む」

――ボーナスポイ…。

「考えません。テストマッチ(国際間の真剣勝負)には勝つことだけを求めます。いいプレーができればボーナスポイントもあるかもしれませんが、気にしません。リーダー陣はゲームのマネジメントをうまくできます。サモア代表と対戦して、完全に封じ込めることなんて、いままでありましたか? 最高のパフォーマンスです。ボーナスポイントの質問にはお答えできません」

――アメリカ代表の特徴。

「大きな誇りを持っている。国家を大声で歌い、フィジカルでジャパンを蹴散らせると思っている。我々はその逆のことをする。プライドとパッションを持って、フィジカル面で当たっていく。そうすることでジャパンの戦い方を遂行できる。アメリカにもいい選手がいる。フランスでプレーする大きなバックロースコット・ラヴァラ)、フルバックのクリス・ワイルズ(主将)です。ブレイン・スカリーも身長が高く、ジャンプ力に長けます。才能豊富なチームです。アメリカ代表も、ジャパン戦は絶対に勝たなくてはならないと思って臨むでしょう」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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