エボラ・ファイターが続々志願 大流行のリベリアで感染減速
死者5千人突破へ
世界保健機関(WHO)は29日夜、西アフリカを中心に流行するエボラ出血熱の死者(疑い例を含む)は27日の時点で米国やスペインを含む8カ国で4922人、死者を含む感染者数は1万3703人に達したと発表した。
リベリア 感染者6535人(うち死者2413人)
シエラレオネ 同5235人(同1500人)
ギニア 同1906人(同997人)
22日時点よりも感染者数の合計が一気に3562人も増えたのはそれ以前にさかのぼって包括的にカウントし直したからで、感染が拡大したわけではないという。実際の死者はすでに5千人を突破しているとみられている。
ブルース・エイルワードWHO事務局長補の説明では、最も感染が深刻なリベリアで感染が縮小しており、「エボラウィルスに対して私たちは優位に立ちつつあるという自信を感じている」という。しかし、まだエボラが制圧されたわけではないとも釘を刺した。
「国境なき医師団」への志願者3千人超
対応の遅れで感染を拡大させたと批判されているWHOと違って、緊急医療援助団体「国境なき医師団(MSF)」は初期の段階から最前線でエボラの猛威と闘ってきた。このため16人が感染、うち9人が死亡している(20日時点)。
にもかかわらず3千人以上が「国境なき医師団」に志願、エボラ制圧の隊列に加わることを希望しているという。
「国境なき医師団」UKのビッキー・ホーキンス常任理事は「医療従事者は命を失う危険を冒しながら感染者を治療している。流行の初期段階で対応した地域では致死率を20%に抑えられた施設もある。柔軟に対応して感染者に早期治療を施す必要がある」と語る。
リベリアの首都モンロビアで「国境なき医師団」に参加している女性Salome Karwahさんはエボラ感染から一命を取り留めた。女性を病院に運んだ親類からSalomeさん姉妹と両親、姪、婚約者に次々と感染した。
Salomeさんは激しい頭痛と高熱に襲われ、意識を失った。体の内部から激痛が走った。両親が死亡した。しかし、Salomeさん姉妹と姪、婚約者は助かった。
絶望に陥らないように自分を励ましながら薬剤、水分補給を続けたからだ。そして、生きるためにスープを口にした。
エボラ感染の刻印
18日後、Salomeさんは帰宅を許された。しかし、近所の人はエボラに感染するのを恐れて近づかなかった。「エボラの家」と言いはやす人もいた。しかし、ある女性が「母親を病院に連れて行って」とやってきた。
Salomeさんには免疫ができ、再感染はしないと考えられている。女性の母親を病院に連れて行ったことがきっかけとなって、エボラ治療センターで働くようになった。センターに運ばれてくる患者にとってエボラを克服したSalomeさんの言葉は大きな励ましになっている。
英イングランド南東部サフォークの男性ウィリアム・プーリーさん(29)はシエラレオネの最前線でエボラ感染者を介護していて発症。未承認薬ジーマップを投与され、死線を乗り越えた。
8月にいったん英国に帰国したが、居ても立ってもいられずシエラレオネに舞い戻った。再感染の恐れがない自分こそがエボラとの闘いの最前線に立つべきだと考えたからだ。
英軍は医療・兵站・エンジニア関係者ら300人を西アフリカに派遣、今月末までに750人に増員する。米軍も最大3900人を派遣する計画だ。しかし、国際社会がエボラ感染の初期段階で動いていれば、ここまで被害は拡大していなかっただろう。
「国境なき医師団」UKのホーキンス氏は「エボラの流行が制圧されたら、国家レベル、グローバル・レベルがどんなにまずく対応したかを反省しなければならない」と話している。
(おわり)