沢尻エリカ出演分の大河ドラマ10回分の撮影費用は6億円。再撮の必要性は本当にあるのか?
KNNポール神田です。
■公共放送のNHKではテロップ表記だけでよくなかったか?
タレントや役者の不祥事によって、収録された制作物がお蔵入りになったり、再撮や延期、販売中止などの事象がここ数年ホント多くなっている。事件を起こしてからのタレント登用はないまでも、過去の収録分に関しては、テレビの場合はテロップで『この番組は○年○月○日に収録をおこないました』というお断りを入れるだけでほとんどの視聴者は、納得するのではないだろうか?しばし見納めになるとして視聴率も取れるはずだ。
しかし、民放のテレビの場合はそうはいかない。スポンサーが嫌がる為に番組差し替えというのは広告による民放では仕方がないことだからだ。ただ、受信料収入97%で成立している公共放送であるNHKまでが、容疑者の出演収録分を再撮してまで放映する必要性は果たしてあるのだろうか?それは受信料を負担している国民からの運営予算を間接的に毀損していることになるのではないだろうか?
今年、NHKはピエール瀧氏出演の『いだてん』は、氏の出演していた4回分〜8回分はすべて撮り直しが行われている。沢尻エリカ容疑者の再撮影で、年に2度も『大河』が撮りなおしとなった。
■「撮り直ししなくてよい」が半数超え 文春オンライン
N数799票で、半数の人が「撮り直ししなくてよい(反対)」という声が集まっていたにもかかわらず、再撮をNHKは判断したのだ。
■大河ドラマの撮影料は1回あたり6,000万円10回分では6億円!
逮捕によって、緊急の撮り直しとなると、キャステイングの調整から、すでに取り終えた分と今後のスケジュールや不必要だったもろもろの負担も大きい。しかし、一番気になるところは制限時間とコストだ。
沢尻エリカ被告の出演分は、すでに10回分を取り終えている。1本あたり6,000万円の制作費のかかる大河ドラマの10回分でいうと単純計算で6億円だ。しかし、すでに完成し編集が済んでいる作業を再構築する時間的、精神的、いろんなコストを換算すると、1本あたり1億円もらいたいくらいだ。すると損害賠償額は10億円以上にもなるだろう。
沢尻エリカ被告の事務所は、エイベックス・マネジメントという大手なので、損害賠償に応じることができるだろうが、今後タレントマネージメントのリスクコストに反映されていくことは確実だ。そうなると、連続の『大河ドラマ』のような場合は、出演者が毎回、尿検査やキャスティングのデューデリジェンスまでが必要となり、個性的な俳優や奇行癖のあるタレントは起用されなくなる。
ダイバーシティ(多様性)を認めようとする社会との動きと逆行するようなキャスティングとなるとドラマも当然、つまらなくなることだろう。また、薬物依存は犯罪などの事件的側面よりも、仕事から排除されることによって立ち直れなくなる社会的な制裁のことのほうが問題である。
■ネットの署名サイト『Change.org』に寄せられる3.4万人を超える声
署名サイトの『Change.org』では、『NHKは大河ドラマ「麒麟がくる」沢尻エリカさん収録分を 予定通り放映してください!』として、署名が3.4万件を超えて集まっているが、NHKには全く届いていなかったようだ。
Change.orgは誰もが、キャンペーンという名の署名運動をネット上に開設することができる。サイトの運営費用は署名記事を目につくところに表記する為の寄付等によって成立している。署名後にでてくるが拒否することもできる。
この署名サイトは、「ギャンブル依存症問題を考える会」代表の田中紀子さんが発起人。『麻雀放浪記2020』のピエール瀧さんの出演したシーンをノーカットで公開した映画監督白石和彌さんらが賛同者として名を連ねる。
■タレントが一発NGであるならば、NHKも不祥事があったときにはNG対応をすべきだろう
民放や民間の会社であれば、スポンサーに対して、忖度する必要があるが、NHKは国民は法的に義務として受信料を徴収されている立場であり、NHKが一番忖度すべきは受信料負担をしている国民である。NHK職員の不祥事はニュースで扱うだけで終わり、タレントや役者の不祥事は番組ウェブサイトでも、なかった事のようにすべて削除され排除されてしまう。
NHK職員の不祥事について、筆者が個別に質問しても『職員が逮捕されたことは遺憾です。事実関係を確認したうえで、厳正に対処します』としか返答がない。
NHKも職員の不祥事があった場合は、自粛謝罪放送を徹底的におこない、コンプライアンスを協会職員全体でしっかりと、タレントや役者並のペナリティを課すべきではないだろうか?
また、薬物依存を一発NGで患者が、立ち直れない状況に追い込んでしまうドラマを高額で制作する必要性さえ問われる。
■民放にはできない公共放送たる番組づくりがあるはずだ
NHKの地上波の受信料は一ヶ月1,260円だ。一方、NETFLIXのサブスク料金は一ヶ月880円(税込み)だ。大河などは、NETFLIXに外注しても1本あたり6,000万円もかからないだろう。auと提携してNETFLIXの料金が無料になるなどのことができるのだから、NHKの受信料でNETFLIX製作ドラマ枠を買い取るなどで、ドラマ部門やバラエティ部門、音楽エンタメ部門、とドキュメンタリー部門、ニュース部門を明確に分離してみるのはどうだろうか?
公共放送に求められるのは、公平で客観的で第三者的なストレートニュースを提供し、政府に対しても一家言持てる報道としての『第4の権力』メディアである。
政府からは一銭ももらわずに自由に権力批判を行える公共放送へシフトしてはどうだろうか? NHKの事業収入7,247億円のうち、受信料収入は7,032億円で97%を占めている(平成31年2019年度)。97%を100%にするのは難しいことではない。
もちろんそうすれば、総理大臣に経営委員会の委員を任命してもらう必要もなくなる。『公共放送』であるならば、国に忖度しない姿勢も必要だろう。そう、国政選挙で裁判官を選ぶように、NHKの経営委員会も選べばよい。そして、NHKの経営委員会も立候補制にすればもっと変わる。
NHKはぶっ壊さなくて良いので、NHKに対して、ちゃんとした公共放送に国民が変えられる権利を持つべき時期だと思う。