『カロナール』がないとコロナに使用できる解熱薬がなくなる?それ以外にも使用できる解熱薬があります
SNSに、解熱鎮痛薬である『カロナール』が出荷調整になったというトレンドワードが浮上していました。新型コロナに対する解熱鎮痛薬にカロナールがよく使われており、在庫が乏しくなってしまったようです。
では、カロナールが使用できなければ、新型コロナへの解熱薬がなくなってしまうのでしょうか?
そんなことはありません。
そこで今回は、一般名と販売名の違い、カロナール以外にも使用できる解熱鎮痛薬に関して、その目安を簡単に解説したいと思います。
『一般名』と『商品名』の違い
突然ですが、みなさんは『ホッチキス』や『セロテープ』という名称を聞いて、なにを思い浮かべますか?
そう、ホッチキスはこんな製品ですよね。
そして、セロテープはこんな商品を思い浮かべることでしょう。
しかし、これらはあくまで『商品名』であって、本来の一般的な名称は『ステープラ』とか『セロファンテープ』といいます。
さらに他の例えを出してみましょう。
『オレンジジュース』として、どのブランド名を思い浮かべるでしょうか? いろいろな商品名がありますよね。
『カロナール』はあくまで『商品名(正式には販売名)』です。
商品名『カロナール』の一般的な名称、すなわち『オレンジジュース』にあたる名前は『アセトアミノフェン』です。
すなわち、カロナールが手に入りにくくなったというのは、オレンジジュースでいえば、その中のひとつ、たとえば『ファンタ』が手に入りにくくなったという感じと捉えればいいのです。
そして現在も、アセトアミノフェンが配合されている他の解熱鎮痛薬は、入手可能です。ですから、慌てる必要性はないのですね。
では、新型コロナに対しては、アセトアミノフェンしか使えないのでしょうか?
そんなことはありません。
アセトアミノフェン以外の解熱鎮痛薬は?
あくまでアセトアミノフェンは妊婦さんや子どもへ使われることの多い解熱鎮痛薬です。妊婦さん以外の大人には、それ以外の解熱鎮痛薬が使用できるのです。
たとえば、イブプロフェンやロキソプロフェンです。これらの解熱鎮痛薬が熱を下げたり痛みを和らげたりする効果は、アセトアミノフェンよりも少し強めとされています[1][2]。
ですので、イブプロフェンは医療機関での子どもへの処方薬として、アセトアミノフェンよりも少し強めの解熱効果を期待して使うことがあります(市販薬としては15歳未満の子どもでは購入できないことには注意が必要です)。またイブプロフェンは、脳症のひとつであるライ症候群のリスクをあげないことが示されています[3]。
そして、イブプロフェンやロキソプロフェンも、一般的な名称です。
すなわち、商品名が様々あります。これまでの話をまとめて表にしてみましょう。
なお、同じ『イブ』と商品名がついていても、配合された薬効成分に応じ少しずつ異なる商品名がつくことがありますので注意は必要です。もし市販薬を購入する際には、薬のプロである薬剤師さんに尋ねてみると良いでしょう。
今回は、カロナールの入手が難しくなったからと言って、まだ慌てる必要はないことをお話ししました。また、アセトアミノフェンは、子どもさんや妊婦さんに優先して使用することとして、周囲の大人の方はそれ以外の解熱鎮痛薬、たとえばイブプロフェンなども選択肢に入れていただければと思います。なお、ロキソプロフェンは、発熱の症状の緩和に使用できるとメーカーのホームページに記載されています(繰り返しますが、小児には使用できません)[4]。
医療機関が混雑しており、心配なこともおありかと思います。
この記事がなにかの参考になればと願っています。
【参考文献】
[1]Arch Pediatr Adolesc Med 2004; 158:521-6.
[2]Biol Pharm Bull 2021; 44:1427-32.
[3]Arch Pediatr Adolesc Med 2004; 158:521-6.
Jama 1995; 273:929-33.
[4]新型コロナウイルス感染症の流行に伴う各種情報(第一三共ヘルスケア)(2022年7月27日アクセス)
※2022/7/28 0時に文献3、文献4と文章を追加しました。