台風5号発生 この時期この海域の台風は北上して東日本接近が多い
帯状に伸びる雲と円形の雲
ほぼ東西に伸びることが多い梅雨前線ですが、令和3年(2021年)の梅雨前線は、沖縄付近から北東に伸び、東日本の南海上に達しています(図1)。
このため、梅雨前線に伴う雲も沖縄本島付近から東日本の太平洋側に帯状に伸びています。
沖縄付近から西日本では、梅雨前線を押し上げる太平洋高気圧が弱いためですが、沖縄と東日本では梅雨空、西日本は梅雨の中休みという変則的な梅雨となっています。
南海上からの暖湿気流入は、西日本よりも東日本で強くなる可能性もありますので、例年とは違った警戒も必要となっています。
こんな中、マリアナ諸島付近の熱帯低気圧に伴う円形の雲がはっきりしてきました(タイトル画像参照)。
台風5号の発生
マリアナ諸島付近の海面水温は、台風発生の目安となる27度を大きく上回る30度もあります。
このため、熱帯低気圧はまもなく台風にまで発達し、台風5号となる見込みです(図2)。
【追記(6月23日10時)】
6月23日9時に、マリアナ諸島で台風5号が発生しました。
昔、台風の進路について統計調査をしたことがあります。
これによると、6月にマリアナ諸島で発生した台風の多くは、北上して東日本に接近してきます(図3)。
5月までの台風のように、西進してフィリピンに達するものはほとんどありません。
つまり、台風5号の進路予報は、統計的に多い経路です。
珍しい経路ではありません。
令和3年(2021年)の台風
令和3年(2021年)は、2月18日にフィリピンの東海上で台風1号が発生しました。
台風1号は、西進してフィリピンのミンダナオ島に上陸するかとみられていましたが、上陸前に熱帯低気圧に衰えました。
台風2号は、4月14日3時にカロリン諸島で発生し、発達しながら西進して18日3時にはフィリピンの東海上で、中心気圧895ヘクトパスカル、最大風速60メートル、最大瞬間風速85メートルの猛烈な台風になっています。
ただ、沖縄の南海上まで北上してきたときには、955ヘクトパスカルの強い台風となり、その後は急速に衰えて東進しています。
5月31日9時、カロリン諸島で発生した台風3号は、フィリピンの島々の間を通過し、南シナ海を北上し、沖縄県先島諸島に接近したあと、日本の南海上を東進しました。
台風4号は、6月12日15時にトンキン湾で発生し、そのままベトナムへ上陸し、熱帯低気圧になりました。
このように、令和3年(2021年)は、これまで台風が4個発生していますが、ほぼ平年並みの発生数です(表)。
台風の接近数は、台風の中心が国内のいずれかの気象官署(約150か所)から300キロ以内に入った場合を指しますが、これまでの2個接近(台風2号と台風3号)も、ほぼ平年並みの接近数です。
台風が前線を刺激しての大雨
気象庁の台風の上陸の定義は、台風の中心が九州、四国、本州、北海道のいずれかに達したときをいいます。
図4は昭和26年(1951年)から令和2年(2020年)までの206個の台風上陸を、月別にまとめたものです。
上陸した台風が一番多いのは8月、次いで9月です。
ただ、平成13年(2001年)以降の20年間でいえば、8月と9月は同じ数です。
また、10月が若干増え、7月が若干減る傾向にありますので、台風の上陸は夏から秋に移動しつつあるといえそうです。
6月に海面水温が27度以上の海域は、北緯25度以下の南の海域です。
このため、台風は北緯30度に達する頃には衰えることが多いのですが、5年に1回くらいは上陸台風がありますので、6月は台風シーズンの始まりの月です。
令和3年(2021年)の台風上陸数はこれまで0ですが、台風5号が上陸する可能性は0ではありません。
また、台風5号が衰えながら北上して、あるいは温帯低気圧に変わってから北上して上陸しなかったとしても、沖縄付近から北東に伸びている梅雨前線を活発化させる懸念があります。
このため、台風から離れた地方でも大雨に警戒が必要となります。
各地とも、最新の気象情報の入手に努め、警戒してください。
タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:気象庁ホームページ。
図3の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。
図4の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。
表の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。