東京五輪に向けたチーム作りが加速。パナマ・パラグアイ戦で、なでしこジャパンの多彩な個性は躍動するか
3月17日から31日まで、なでしこジャパンが鹿児島県の姶良市と霧島市で2021年最初の合宿を行った。4月1日には、8日のパラグアイ戦と11日のパナマ戦に臨むメンバーが発表され、海外組を含む25名が選出された。
なお、東京五輪のサッカー競技の組み合わせ抽選は4月21日に行われることが決まっている。
鹿児島合宿時に選手たちに話を聞いた。
(※)取材はすべてオンライン会議ツール「Zoom」で行いました。
GK 池田咲紀子(浦和レッズレディース)
ーー昨年、浦和と代表ではGKの守備範囲が広くなりましたが、代表では、自分の役割をどのように捉えていますか。
後ろからのビルドアップでは安定した配給が求められています。ディフェンスラインの選手とコミュニケーションをとって、GKが守備をまとめていくことも大切だと思います。私自身、今回はGKの中で最年長なので、GKをグループとしてまとめていくことや、試合に出ても出ていなくても、オンやオフでもいろいろな役割があると自分なりに解釈して取り組んでいます。
ーー4月のパラグアイ戦とパナマ戦で積み上げたい部分はどんなところですか?
海外の選手と対戦する中で、いつもと違うテンポで足が出てきたり、ボールの動かし方などが自分たちの予測を上回ることもあります。そこで慌てずに対応して、自分たちらしさを出しながらしっかりと試合に勝つことがまず一番だと思います。その中で自分自身も含めて、いろんな選手がチャレンジすることで、チームとしてプラスの積み上げができていければいいなと思います。
ーー今年、WEリーグでプレーすることになって変化はありましたか?
ありがたいことにプロ契約をしていただくことになったので、会社は一度退社する形です。4月からはプロ選手として活動していくことになりました。会社は、今までは働きながらの雇用契約でしたが、サッカースクールなどもやっていただいているので、これからもそういうところには参加させていただく形で、会社との繋がりは変わらずあります。
ーープロになってできた時間を、どのように活用したいとイメージしていますか。
今までは夜の練習で、昼間に仕事をするリズムだったのですが、これからは午前の練習で、午後は自分に使える時間になります。体のケアはもちろんですが、一つはサッカーの理解を深めるためにサッカーの試合を多く観たり、頭を整理する時間に当てたいと考えています。筋トレなどもしますが、体も頭ももう一レベル上にいけるようにしたいですね。
FW 浜田遥(マイナビ仙台レディース)
ーー合宿では、男子大学生とのトレーニングマッチで2得点しました。合宿を通して得たものを教えてください。
背後への配給は、みんな見えているところが本当に多くて、自分がパスを欲しいタイミングで出してくれて、パスの精度や、視野の広さに生かされました。細かい動き直しやボールを受けるタイミングなどを意識して取り組む中で、うまくいかないことも多かったのですが、スタッフの方に教えていただいたりもしました。そういった環境で長い期間練習できて、たくさんのことを学ばせていただきました。
ーー代表の中で、自分が勝負できるのはどのようなプレーだと思いますか?
自分は足下の技術がないのですが、背後への抜け出しだったり、トレーニングマッチでの得点の形は自分の良さが出た形でした。一瞬の隙を逃さずに、「あとは自分が決めるんだ」という強い気持ちで取り組み続けています。
ーー昨年11月の合宿で初選出されましたが、ようやく代表に選ばれてここまできた、という手応えもあるのでしょうか。
自分が好調だとは思っていないですし、毎日、「自分は下手くそだな」と思いながらプレーしています。上手い選手と一緒にサッカーができるのが本当に楽しいので、もっとみんなと一緒にサッカーがしたい、という気持ちと、「五輪に出たい」という強い気持ちがあります。
ーーパラグアイ戦はホームの仙台で開催されますが、出場したらどのようなプレーを見せたいですか?
日頃、応援してくださっているサポーターの皆さんや支えてくださっている方が見てくれると思いますし、東日本大震災から今年で10年目ですが、明るいニュースを届けたいという強い気持ちを持ち続けてきました。出場機会をもらえて、ゴールという結果を残せれば、少しでも見ている方に何かをお届けできるのではないかなと思います。結果を出し続けることでしか自分は(代表で)生き残っていけないと思うので、誰よりもゴールという結果にこだわっていきたいと思います。
MF 中島依美(INAC神戸レオネッサ)
ーー今季は例年よりもオフ期間が長かった中で、コンディションはどのように上げてきましたか。
(皇后杯が)終わってからは、昨年末までは体を休めていました。代表活動もあるので、1月初めから少し動き初めて、中旬からはINACの下部組織の(レオンチーナの)練習にも参加させてもらって、体を動かしていました。
ーー4月のパラグアイ戦とパナマ戦の2試合で、どのようなことを積み上げたいですか?
代表活動も限られた時間の中でやっていかなければいけないですし、いろいろな方の協力があって試合をすることができます。その2試合は五輪に向かって、今まで積み上げてきたものを発揮できる場所でもありますから、今、自分たちがやろうとしているサッカーをしっかり表現できるようにしたいと思います。まずはチームとして勝つことを目標に頑張りたいと思います。
ーー海外でプレーする選手が増えて、代表では集まりにくくなる面もあると思いますが、どのように感じていますか?
海外にいくことで、日本で体験できないスピード感やフィジカルを体験できると思いますし、(国内でプレーしている)自分たちもこういう代表活動の場所に来ないと、世界と戦える場所はなかなかありません。そういった面では、海外でいろいろな情報を得られることはチームにとってもプラスだと思います。こういう(コロナ禍の)状況で、集まるのも難しいのですが、チームでやるべきことは全員が理解していると思うので、一人ひとりがサッカーに対する考え方などを高めながら積み上げることができれば、合流してもしっかりとできるのではないかなと思います。
DF 高橋はな(浦和レッズレディース)
ーー今年はWEリーグが9月の開幕で、プレシーズンが長くなりますが、現在のコンディションはいかがですか。
チームの活動は2月に入ってからスタートしたのですが、それよりも前から自分で体を動かしていたので、始動してからの入りもスムーズでしたし、この代表合宿に向けてもコンディションを上げてきました。
ーー今回の合宿は、個人的にどのようなテーマを持って臨んでいますか。
いろいろな選手とサッカーができることを楽しみにしてきました。東京五輪に向けて、チームとしての積み上げのところで、自分はまだ日が浅いので、このチームでより必要とされる選手になるために、チームの意図をもっと理解してプレーに落とし込めるようにやっていこうと考えています。
ーー強みでもある1対1や、課題として取り組んできたビルドアップで、継続してきたトレーニングが身についた手応えを感じていますか?
フィジカルのぶつかり合いやスプリントはトレーニングを重ねてきましたが、普段、チーム(浦和)で菅澤優衣香選手や南萌華選手など(代表選手)とマッチアップしている経験が生きているのではないかと感じています。後ろからの組み立てでは、自分のところでは100%の成功率でパスをつなげるようにして、チャンスがあれば前の選手に鋭いボールを入れることにもチャレンジしています。周りの選手のレベルが高いので、自分がボールを持った時に選択肢が複数あるので、そういう面でも新たな発見や学びがあります。
ーーチームではムードメーカーの一人だと思いますが、代表ではいかがですか?
静かになりすぎず、でもでしゃばり過ぎないようにしています(笑)。自分よりも下の選手もいるので、そういう選手がやりにくい環境にはならないように、自分もまだまだですが、助け合いながらやっていけたらと思っています。
MF 木下桃香(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
ーー初めてなでしこジャパンの活動に参加していかがでしたか?
最初に呼ばれた時は驚いて、緊張もしましたが、合流してからは先輩方もいい雰囲気を作ってくださって、とても楽しくサッカーができています。今まで自分がやってきたことがどれぐらい通用するかに挑戦したいと思っています。
(4月の)試合でデビューして日本を背負って戦いたいな、という思いがありますが、自分より何段階も上の選手がたくさんいてレベルが高い中で、今は少しでも自分をレベルアップできるように頑張っています。ベレーザのチームメートのプレーはわかりますが、他チームの選手のプレーを見て、たとえば「こういう守備のやり方があるんだ」とか、新しい発見がたくさんあります。
ーー代表では、自分の良さを生かしてどのようなプレーを見せたいですか。
ゴールに直結するプレーや、ドリブルやスルーパスでのアシスト、チャンスメイクに関わるプレーは代表でも見せたいと思っています。今年は、守備面でさらにレベルアップしていかなければいけないと思っているので、(合宿では)守備目線で他のチームの選手からも「いいところを盗みたいな」と思い、意識して見るようにしています。先輩方からも、A代表の海外選手のスピードやパワーはアンダー世代とはまったく別物だと聞いていて、そういう相手と戦ってみたいです。自分がどれだけできるか、できなかった時には(試合の中で)どれだけ修正できるか、慣れて対応することができるかが楽しみです。
ーー参考にしている選手を教えてください。
メニーナに中学一年で入った時から、憧れの選手はずっと阪口夢穂選手(大宮アルディージャVENTUS)です。夢穂さんは、100%が「上手い」で構成されていて、とにかく(すべてのプレーが)上手いんです。自分はスピードに乗ったドリブルが武器ですが、世界と戦っていくことを考えたときに、その「うまさ」をもっと上げていかなければいけないので、本当にお手本になります。
FW 宮澤ひなた(マイナビ仙台レディース)
ーー今回の合宿に参加して、改めて、代表での自分の強みをどのように感じましたか。
一番はスピードだと思います。その中でも、カットインからの選択肢や、サイドバックと(連係して)どう崩すかといったアイデアとか、突破だけではなくアシストというところでも相手の裏を見ることを意識してプレーしています。そういうところは、今回の代表活動を通して、これまで合わせたことがない選手でも、それぞれの選手の特徴を掴んで一緒にプレーすることができたかなと思います。
ーー1対1の場面ではスピードに乗った中での球際の強さも持ち味だと思いますが、スピードの生かし方で成長したと感じることはありますか。
そこまで体が大きいわけではないですし、対人では負けることもありますが、一瞬のはがすスピードは得意としています。その中でも(相手の)レベルが上がると、ただ走っただけではボールが取れなかったり、抜くことができないと、今回の合宿でも感じました。ちょっとしたタイミングの取り方とか立ち位置、相手の視野から消えるなど、そういうスキルはもっとレベルアップしていかなければいけないなと思います。
ーー2019年のW杯はバックアップメンバーに選ばれていました。五輪で最後の18人に入っていくためには、何が大切だと思いますか?
自分の特徴を出しながら、他の選手を生かしたり、生かされるプレーを試合で出していきたいと思います。代表はその時に集まった選手でプレーをするので、集まった仲間で面白いサッカーができる、どんな選手でも合わせられるような対応力も必要だと思います。まずは、自分の持っているものをすべて出し切ることが、五輪のメンバーに入っていくために一番大切なことだと思います。
ーー初戦のパラグアイ戦は仙台で行われます。宮澤選手は今年仙台に加入しましたが、出場機会があればどんなプレーを見せたいですか?
(ホームの)仙台でプレーできることは運命だなと思いますし、マイナビ仙台レディースの選手として試合をするよりも先に、日本代表としてプレーすることは、また違う思いがあります。震災10年の節目の年ですし、仙台の地で自分のプレーを見せて、テレビ越しや、スタジアムに来ていただいた方に少しでも勇気や笑顔をお届けしたいです。
※写真はすべて筆者撮影