メッシの「退団騒動」の余波…バルトメウの進退問題とバルサで求められる改革。
「メッシ退団騒動」の余波だと言えるかもしれない。
バルセロナは今夏、リオネル・メッシが退団を申し出た。8月25日に弁護士を通じてクラブにburofax(内容証明郵便)が送られ、長年エースとして活躍してきた選手から2019-20シーズン終了時の移籍希望が表明された。
だがジョゼップ・マリア・バルトメウ会長はメッシが2021年夏まで契約を残していると主張。契約解除金7億ユーロ(約840億円)が支払うクラブが存在しない限り移籍を認めないと固辞して、最終的にはメッシの残留が決まった。
■不信任動議
しかしながら、Caso Messi(カソ・メッシ/メッシ騒動)の影響は避けられなかった。ジョルディ・ファレ氏とマルク・ダッチ氏がリーダーシップをとり、バルトメウ会長をトップに据える現バルセロナ理事会に対して不信任動議を出す動きが活発化。16521名の署名が必要になるなか、結果的に20687名の署名が集まった。
正式にその署名が認められれば、バルセロナのソシオ(会員)はバルトメウ会長の進退を問う投票を行うことになる。
「断絶ではなく団結を好む。押し付けではなく同意を求め、黙々と働く。私はそんな人間だと思います。私はエキスパートではありません。エンジニアでも、経済学者でも、弁護士でもない。私はベストではないかも知れない。しかしながら良い雰囲気をつくり、そうして困難を乗り越えてきました」
バルトメウ会長は、2015年夏の会長選を前に、そう語っていた。そして、見事、会長選で勝利を収めた。
そもそもバルトメウは暫定で会長を務めていた人物だった。彼の前任であるサンドロ・ロセイが、ネイマールの移籍が裁判沙汰になり辞任を余儀なくされ、当時副会長だったバルトメウが昇任する格好でトップのポストに就いたのだ。
だが2014-15シーズン、バルセロナは苦しい状況に追い込まれていた。ネイマールの裁騒動、ルイス・エンリケ監督とメッシの確執、ピッチ内外で大きな問題を抱えていた。かくしてバルトメウ暫定会長はスポーツディレクターのアンドニ・スビサレッタの解任と会長選の前倒しを決断。そこからチームが立て直して3冠を達成すると、そのシーズン終了後の会長選で「再選」を果たしたのである。
■解決はソシオの手に
この5年のバルトメウ政権は決して良いものではなかった。副会長クラスの人間が5人クラブを離れており、主力選手やOBをサイバー空間で攻撃していた疑いがかけられている「バルサゲート」の問題では6人の幹部が辞職した。
またスビサレッタ、ロベルト・フェルナンデス、ペップ・セグラ、エリック・アビダルと補強を担当した人たちが次々にクラブを離れた。これでは一貫した補強が敢行できるはずがない。2017年夏のネイマールの退団後、3億4500万ユーロ(約415億円)を投じながら彼の代役を確保できなかったのは厳しい現実だ。
加えてL・エンリケ、エルネスト・バルベルデ、キケ・セティエン、ロナルド・クーマンと監督交代が幾度となく行われた。その度に戦術とシステムが変わるため、選手たちとしては堪ったモノではない。そして、敗戦すれば選手が責任を問われる。
バイエルン・ミュンヘン戦の「2-8」を直近の例に、バルベルデの解任、ERTE(レイオフ/一時解雇)をめぐる交渉、メッシを筆頭に選手たちがスケープゴートにされてきた。最後はメッシが愛想をつかして退団希望を示したが、それさえも契約下にあることを盾に移籍を防いだだけだった。バルトメウと現理事会がメッシを納得させたわけではない。
「私なら2万人のソシオが敵になったら即座に辞任する」とはダッチ氏の言葉である。メッシの退団騒動とバイエルン戦の大敗は確かにショッキングであった。しかし、問題は、それ以上に根深い。そして、いま、その解決はバルトメウではなくソシオの手に委ねられようとしている。