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勝ち点倍増、長友も復活、動員絶好調…1年で再生したインテルは飛躍を続けられるか

中村大晃カルチョ・ライター
10月30日、エラス・ヴェローナ戦で得点を祝う長友佑都らインテルの選手たち(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

成績不振でフランク・デ・ブールが解任されたとき、インテルがわずか1年でこれほど生まれ変わると想像した人はどれほどいただろうか。

現地時間10月30日のセリエA第11節で、エラス・ヴェローナを2-1と下したインテルは、いまだ無敗を保って2位につけている。11試合で勝ち点29はクラブレコードだ。

◆データで見る1年前との違い

ちょうど1年前の11月1日、インテルがデ・ブールを解任したのも、リーグ戦で11試合を終えたタイミングだった。獲得勝ち点は14。今季の半分以下だ。当然、得点数(13→22)と失点数(14→8)も今季は大幅に向上している。

興味深いのは、シュート本数が減り、被シュート本数が増えている点だ。1日付のイタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、シュート数は185本から168本。被シュート数は、112本に対して145本だ。流れの中でのクロスの本数も、263本から210本と昨季から減っている。

それにもかかわらず、クロスからの得点(4→8)は勝ち点同様に倍増。無失点だった試合数(1→5)の差は圧倒的だ。シュート精度(34.25%→46.21%)とパス成功率(83.36%→85.43%)の違いは、今季のインテルの効率の良さを表していると言えるかもしれない。

◆長友ら既存メンバーの活躍

データで違いが顕著なひとりが、昨季の不調でメディアや一部サポーターから酷評され、シーズン前は放出候補とされていた長友佑都だ。地道な努力でルチアーノ・スパレッティ監督の信頼をつかんだ背番号55は、11節終了時の出場試合数(4→9)を倍増させた。パス成功(135→213)、守備での跳ね返し(8→19)、ボール奪取(15→46)と、それぞれ昨季から数字を大きく伸ばしている。高く評価する声があるのは、報じられているとおりだ。

その長友を含め、今季の主軸の多くは1年前と同じメンバー。ヴェローナ戦までの4試合はすべて同じスタメンだったが、イレブンのうち7選手は1年前と変わらない。新顔は1月加入のロベルト・ガリアルディーニと、今季からの新戦力(ボルハ・バレロ、マティアス・ベシーノ、ミラン・シュクリニアル)の4選手のみ。だからこそ、スパレッティ監督の手腕に賛辞が寄せられているのだ。

もちろん、数値が向上しているのは長友だけではない。マウロ・イカルディはシュート本数やボールタッチ数が減っているにもかかわらず、得点(8→11)を増やしている。イヴァン・ペリシッチも得点(2→4)のみならず、ボールタッチ数(486→629)やチャンスメーク(14→27)が大幅に増えた。アントニオ・カンドレーヴァもパス成功(231→362)、チャンスメーク(23→32)、ボール奪取(27→45)と攻守両面で良くなっている。

◆周囲の期待も最高潮

チームが好調なら、当然、周囲の熱も高まっていく。チャンピオンズリーグ出場権が目標のインテルだが、首位ナポリに勝ち点2差、王者ユヴェントスを上回る2位となれば、優勝の二文字がちらつく。『ガゼッタ』のルカ・カラマーイ記者は、10月31日付の記事で「もう隠れることはできない。インテルも優勝候補だ」と断じた。

期待を膨らませているのは、サポーターも同じだ。成績不振だった昨季も安定した観客動員数を誇ったインテルだが、ランチタイム開催の次節トリノ戦(5日)では、なんと動員7万人超えの予想。昨季のホームでのトリノ戦の観客数は3万6446人だったので、ここでもほぼ倍増となる。

1日付『コッリエレ・デッロ・スポルト』によれば、ユヴェントス戦やダービー以外で動員7万人を記録するのは、3冠を達成した2009-10シーズンのホーム最終戦以来、8シーズンぶりのこと。1試合平均の動員は6万人を上回る見込みだ。このペースが続けば、ホーム19試合の総動員数は100万人を超える。

◆最後までもつのか?

ただもちろん、その大台を突破するには、最後までファンがチームに期待できる状況を続ける必要がある。ロベルト・マンチーニの下で年内を首位で折り返しながら、後半戦の失速で4位に終わったのは、たった2シーズン前のことだ。長いシーズンを最後まで戦い抜けるかはまだ分からない。

実際、『ガゼッタ』電子版の10月24日付のアンケートでは、9000人超のユーザーのうち、約6割がインテルはスクデットにふさわしいチームではないと回答している。31日付の『メディアセット』のアンケートでも、1300名超のうち「最後まで上位にとどまる」と回答したのは51%と半数強だった。

また、『メディアセット』のアンドレア・ギスランディ記者は、ローマ戦やナポリ戦などビッグマッチで好ゲームを展開している一方で、スパル、クロトーネ、ジェノア、ベネヴェント、ヴェローナと、下位チーム相手の内容が良くないと指摘している。

その点で、12月9日のユヴェントスまでの4試合(トリノ、アタランタ、カリアリ、キエーヴォ)はひとつの鍵となるかもしれない。ただ、今季は上位勢の取りこぼしが少なく、直接対決が鍵を握るとの見方もあり、ビッグマッチで結果を出しているのは大きいとの声があるのも事実だ。そもそも、完璧なチームなど存在しない。

インテルがこのまま飛躍を続けられるかどうかは分からない。確かなのは、1年前に失意のどん底にいたインテルの選手とサポーターが、名門復活への手ごたえを感じつつあるということだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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