異例ずくめの今年の春一番
遡って関東に春一番
気象庁は3月2日昼前に、前日の1日に関東地方で春一番が吹いたと発表しました。
日本海の発達中の低気圧と本州の南岸に発生した低気圧により、最大の瞬間風速は東京都心で15.7メートル、千葉で21.5メートル、横浜で20.6メートルなど、南よりの風が強まってきたこと、気温は東京都心で20.3度など、関東各地で上昇したことからの発表です(図)。
春一番の基準は地方により異なりますが、立春(今年は2月4日)から春分(今年は3月21日)までの間に日本海で低気圧が発達し、南よりの風が強く吹いて気温が上昇することは目安です。また、基準となっている風速は、すべて平均風速です(表)。最大風速とあるのは、平均風速の最大値であり、瞬間風速ではありません。なお、北日本と沖縄は春一番が吹きませんので、発表基準はありません。
3月1日の場合は、関東地方の基準のうち、立春から春分の間、日本海に低気圧、東京(東京都心)で東南東から西南西の風、前日より気温が高いという春一番の4つの条件は満たしていますが、東京都心の平均風速の最大値は7.7メートルと、平均風速が8メートル以上という基準は満たしていません。
気象庁の発表では、関東地方南部の最大の瞬間風速が記述されています。しかし、春一番の定義は、歴史的経緯から、東京都心部(具体的には気象庁が観測している千代田区)の平均風速の最大値のみが基準となっています。
関東南岸の海辺にある千葉市や横浜市では午前中から平均風速が8メートル以上の風が吹いていますので、文句なしの春一番ではなく、総合判断での春一番の発表であり、これが翌日になってから遡って発表した原因の一つではないかと思います。
前日まで雪が続いていた北陸の春一番
北陸での春一番の発表は、中国地方や九州北部地方と同じ2月14日です。
日本海を低気圧が発達しながら通過したため、低気圧に向かって金沢市の最大瞬間風速が毎秒16.9メートルなどの南よりの強い風が吹き、最高気温も前日より3~9度上がって3月並みの陽気になったからです。
しかし、前日までの北陸地方は雪が降り続いており、記録的な豪雪の中での春一番でした。そして、春一番のあとも、南下した寒気で寒い日が続きました。
2月14日の日本海低気圧では、北陸・中国・九州北部地方では南よりの強い風が吹きましたが、それ以外の地方では、南よりの風が弱かったために春一番が見送られています。
東海地方のほうが近畿地方より先
名古屋地方気象台は、3月1日に、前日の2月28日に東海地方で春一番が吹いたと発表しました。2月28日は、名古屋の最高気温は15度と平年値を上回り、午前中に最大風速が9.6メートル吹きましたが、日本海の発達中の低気圧に向かっての南風ではなく、発達中の南岸低気圧に伴う南風でした。このことが、発表が1日遅れた原因の一つではないかと思います。
大阪管区気象台は、3月1日に近畿地方で春一番が吹いたと発表しました。日本海の発達中の低気圧に向かって強い南風が吹いたためですが、結果として、東海地方より1日遅い春一番となりました。
近畿地方が東海地方より遅く春一番となったのは、平成10年(1998年)以来、20年ぶりのできごとです。
九州南部の春一番
高松地方気象台は、2月28日に四国地方に対して春一番を発表していますので、関東地方で春一番が吹いたことにより、北日本と沖縄を除くと、まだ春一番が吹いていないのは九州南部だけとなりました。
ただ、九州南部は、春一番が吹きにくい地方で、ほぼ2年に1回の割合で春一番が吹かない年があります。最近4年間では、平成29年(2017年)は2月17日、平成26年(2014年)は3月13日に春一番が吹きましたが、平成28年(2016年)と平成27年(2015年)は春一番が吹かないという、五分五分でした。
今年の九州南部の春一番はどうなるでしょうか。
寒かった冬に続き、変則的な春一番と、今年の季節変化は例年とは違うようです。
安全で快適な生活をするため、最新の気象情報の入手に努めてください。
図、表の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。