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緊急事態宣言を全都道府県に発令しないワケ 13都府県に宣言区域拡大、まん延防止等重点措置も16道県に

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
政府は、緊急事態宣言の対象地域を13都府県に拡大することとした(写真:Nobuyuki_Yoshikawa/イメージマート)

政府は、8月17日、緊急事態宣言を7府県に追加して発令することとし、対象区域は13都府県に拡大することとなった。あわせて、まん延防止等重点措置の対象区域も10県追加して、16道県に拡大することとなった。

緊急事態宣言が全国を対象に発令されたのは、2020年4月16日から5月14日までだった。それ以降、全都道府県を対象とした緊急事態宣言は発令されたことはない。

ちなみに、それ以降で、緊急事態宣言の対象都府県が最も多かったのは、2021年1月8日から2月7日までの11都府県だった。今回の追加発令で、その数を上回ったことになる。

緊急事態宣言については、感染「第5波」に直面して、日本医師会や日本病院会など9つの医療関係団体が合同で、7月29日に緊急声明を発表し、対象区域を全国にすべきと要請している。

「新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大への緊急声明」(2021年7月29日 日本医師会)

また、全国知事会も、政府が全国一斉の緊急事態宣言を再び発令するよう求める声が上がり、「全国に緊急事態宣言を発出したと同等の大胆かつ実効性ある感染拡大防止対策を断行」するよう政府に求めた。

「過去最大の感染拡大を踏まえたまん延防止等重点措置区域の大幅拡大を受けて」(2021年8月5日 全国知事会)

しかし、政府は、今のところ、緊急事態宣言の対象区域を全国に広げるつもりはない。

確かに、緊急事態宣言を発令しても、1回目(2020年4月)の宣言発令時のように新規感染者が急減するような効果は、今や見込めない。4回目の発令となった東京都では、宣言発令後にむしろ新規感染者が急増する事態となっている。

加えて、今となっては、緊急事態宣言の発令は、飲食店での酒類提供の終日停止と20時までの時短営業の要請がセットになっている。全国に発令すれば、感染者が多くない県でも、こうした飲食店への要請を行うこととなり、経済的打撃は計り知れない。

感染者が少ない県では、今のところ、新型コロナ対応の病床確保が十分にできており、病床の使用率が極めて低位に推移していて、病床の逼迫はほとんどない。

緊急事態宣言の発令に伴う経済的打撃が大きい割には、発令による感染抑止効果が小さいことが、全国を対象とした宣言発令に躊躇する理由の1つとなっている。

ただ、あまり報じられていないが、全国一斉の宣言発令をしない理由が、他にもある。

それは、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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