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本日より「休業支援金」が大企業の非正規で受付開始! 制度の「最新情報」を解説します

今野晴貴NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。
(写真:SunnySide/イメージマート)

 二度目の緊急事態宣言の影響でシフトが減り、困っているパートやアルバイトの方が多いのではないだろうか。

 こうした方々が生活に困らないように創設されたのが休業支援金・給付金という制度だ(正式には「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」という)。

 本日2月26日からは、今まで対象外とされていた大企業に勤める非正規労働者の申請受付が開始された。

参考:厚生労働省リーフレット「『新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金』〜大企業の一部の非正規雇用労働者も対象となります〜」

 そこで、本記事では、パートやアルバイトの方向けに休業支援金・給付金制度についての最新情報を紹介していきたい。ぜひこの記事をお読みいただき、利用可能な制度であることに気がつかずに期限を過ぎてしまうということがないようにしていただきたい。

 特に、後述するように、中小企業に勤める方の場合、2020年中の休業についての申請期限が2021年3月末となっており、あと1ヶ月程度しかないので、申請漏れがないよう注意が必要だ。

一般人が思い浮かべる「休業」でなくても申請できる

 休業支援金・給付金については、制度の利用が思うように進んでいないことが課題になっている。2月18日時点の累計支給決定額は約753億円であり、予算5,442億円のうち、わずか14%に過ぎない。せっかく作られた支援策の効果が必要な人々に行き届いていないのだ。

 その一つの要因と考えられるのが「休業支援金」という名称だ。この名称からすると、誰もが、「休業」している人に対する支援金だと認識するだろう。

 しかし、実は、この制度では、一般に「休業」という言葉で私たちが連想するような状態でなくても支給対象になるケースがある

 典型的なのが、シフトの減少だ。例えば、以前は週5日シフトに入っていたのが、コロナの影響を受けて週3日になったという場合、一般的には「休業」とは認識されにくいが、休業支援金・給付金の制度上は「休業」に該当する。

 また、時短営業をしている店舗などで、普段よりも1日あたりの勤務時間が短くなった場合にも、制度上は「休業」に該当し、支給対象になる。

 このように、コロナの影響を受けた労働者を広く救済するために、制度上は、「休業」を一般的な感覚よりも緩やかに解釈している。要するに、勤め先から明確に「休業してくれ」と言われていなくても支給を受けられる可能性があるということだ。

 それにもかかわらず、このことがあまり知られていないため、本来は支給対象になるにもかかわらず、「自分は「休業」をしていないから関係ない」と思ってしまう方が多いようなのだ。

 上に述べたとおり、「シフトの減少」などの場合でも、この制度における「休業」に該当する可能性があるため、「コロナの影響でシフトが減ったのに何の補償も受けられなかった」という方は申請を検討していただきたい。

 同様に、事業主側にも「休業」させているという認識がないために、労働者が休業支援金・給付金の申請に協力するようお願いしても、応じてもらえないケースがある。ただし、この点については、後述するように、一定の場合には事業主の協力が得られなくても支給を認めるように運用が改善されているため、諦めずに申請していただきたい。

勤め先の企業規模によって制度に違いがある

 ここからは、制度の詳細について解説していこう。

 休業支援金・給付金については、その労働者の勤め先が中小企業であるか大企業であるかによって、対象となる雇用形態、対象期間、支給額等に違いがある。

 そこで、以下の説明では、中小企業に勤める労働者向けの制度と大企業に勤めている労働者向けの制度を順番に紹介していく。

 「中小企業の範囲」については、以下の表を参照してほしい。「資本金の額・出資の総額」か「常時雇用する労働者の数」のいずれかを満たす企業が「中小事業主」に該当することになる。

中小企業の範囲
中小企業の範囲

中小企業に勤めるパート・アルバイトの場合

 中小企業に勤める方向けの制度の概要については、以下のとおりだ。

(1)対象となる労働者

 次の2つの条件に当てはまる方が休業支援金・給付金の支給対象となる(2021年3月中に緊急事態宣言が全国で解除された場合)。雇用形態は限定されておらず、正社員、パート、アルバイトのいずれも対象になる。

・2020年4月1日から2021年4月30日までの間に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業主の指示により休業した中小企業主の労働者

・その休業に対する賃金(休業手当)を受けることができない方

(2)支給額

 休業の実績に応じて、休業前賃金の8割(日額上限11,000円)が支給される。

 シフトが減少した場合など、申請する期間中に一定の就労をした場合には、就労した日数分を減じて支給額が算出される。

 具体的には、4時間以上の就労であれば1日として、4時間未満の就労であれば0.5日としてカウントする。ただし、4時間未満の就労であっても、所定労働時間が4時間未満の場合に、所定労働時間どおりに就労している場合は1日としてカウントされる(例えば、所定労働時間が3時間の場合、3時間就労した場合は1日としてカウント。2時間就労した場合は0.5日としてカウント)。

(3)対象期間・申請期限・申請方法

 2021年3月中に全国で緊急事態宣言が解除された場合、対象となる休業の期間と申請期限は以下のとおりとなる(全国で緊急事態宣言が解除された月の翌月末までが対象になる)。

中小企業における対象休業期間及び申請期限
中小企業における対象休業期間及び申請期限

 2020年4〜9月の休業については原則としては申請期限が終了しているが、例外的に2021年3月31日まで申請が認められるケースがある(下記(4)を参照)。

 また、既申請分の支給(不支給)決定に時間がかかり、次回以降の申請が期限を過ぎてしまったという場合も、支給(不支給)決定が行われた日から1ヶ月以内に申請すれば、受け付けてもらえる。

 申請方法については、以下のリンク先のリーフレットをご参照いただきたい。

参考:『新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金』のご案内

(4)シフト制、日々雇用、登録型派遣の方への特別な取扱い

 休業支援金・給付金の支給にあたっては、原則として、労働者と事業主が共同して作成した「支給要件確認書」という書類で、支給の対象となる「休業」があったことを確認している。

 だが、労働者が「休業」だと認識しているのに、事業主がそれを認めないケースもある。特にシフト制や登録型派遣の場合にこのようなトラブルが生じやすい。

 事業主の協力が得られない場合でも諦める必要はない。というのも、実際にこのようなトラブルが相次いだため、シフト制、日々雇用、登録型派遣の方に限っては特別な取扱いがなされるようになっているのだ。

「10月30日に公表されたリーフレット」には、支給要件確認書において休業の事実が確認できない場合でも、以下の(ア)、(イ)いずれかのケースであれば、支給の対象となる「休業」として取り扱われる旨が記載されている。

ア 労働条件通知書に「週○日勤務」などの具体的な勤務日の記載がある、申請対象月のシフト表が出ているといった場合であって、事業主に対して、その内容に誤りがないことが確認できるケース

イ 休業開始月前の給与明細等により、6か月以上の間、原則として月4日以上の勤務がある事実が確認可能で、かつ、事業主に対して、新型コロナウイルス感染症の影響がなければ申請対象月において同様の勤務を続けさせていた意向が確認できるケース(新型コロナの影響以外に休業に至った事情がある場合を除く)

 このような客観的な資料がある場合には、事業主の協力が得られない場合であっても、支給対象として認められる可能性がある。少しでも生活費を得るために、審査が通るかどうかわからなくても、該当しそうな場合、とりあえずは申請してみるべきだ。

 また、上の「10月30日に公表されたリーフレット」に該当する場合には、2020年4〜9月の休業であっても、2021年3月31日(水)までに対象となる疎明書を添付して申請すれば、受け付けてもらうことができる。

参考:疎明書の参考様式

大企業に勤めるパート・アルバイトの場合

 大企業に勤める方向けの制度については、本日、詳細が公表された。

 大企業に勤めている労働者向けの休業支援金・給付金制度では、対象となる労働者と対象となる休業期間が以下のとおり限定されている。

(1)対象となる労働者

 対象となるのは、シフト制、日々雇用、登録型派遣で働く労働者に限定されている。このような雇用形態で働いている方のうち、事業主が休業させ、休業手当を受け取っていない方が支給対象となる。

(2)対象となる休業の期間及び支給額

 対象となる休業の期間については、下表のとおり限定されている。また、昨年4月から6月までの間の休業について、支給額は休業前賃金の60%とされ、勤め先が中小企業の場合とは差が設けられている。

大企業における対象休業期間及び支給額
大企業における対象休業期間及び支給額

 ただし、昨年11月7日以降に時短要請を発令した都道府県については、それぞれの要請の始期以降の休業も対象となる。例えば、東京都では、11月28日から酒類を提供する飲食店などに営業時間を午後10時までに短縮するよう要請したため、11月28日以降の休業が休業支援金・給付金の対象になる。

(3)申請方法・申請期限

 申請期限は2021年7月31日(土)である。

 申請方法については、以下のリンク先のリーフレットをご参照いただきたい。

 中小企業の場合と同様に、事業主の協力が得られない場合でも申請できるケースがある。具体的な内容はリンク先のリーフレットに記載されているため、ご確認いただきたい。

参考:厚生労働省リーフレット「『新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金』〜大企業の一部の非正規雇用労働者も対象となります〜」

参考:厚生労働省新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金HP

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NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。

NPO法人「POSSE」代表。年間5000件以上の労働・生活相談に関わり、労働・福祉政策について研究・提言している。近著に『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(青土社)。その他に『ストライキ2.0』(集英社新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)など多数。流行語大賞トップ10(「ブラック企業」)、大佛次郎論壇賞、日本労働社会学会奨励賞などを受賞。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。専門社会調査士。

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