Yahoo!ニュース

セレブが戦う『スカイキャッスル』で難関校合格も母を亡くした役の大西利空 「子どもの重圧はわかります」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
トップコート提供

韓国の記録的大ヒットドラマをリメイクした『スカイキャッスル』。高級住宅街で暮らすセレブ妻たちのマウントバトルを描き、1話から急展開が続く。軸となる子どもたちの医大付属高校への受験戦争で、いち早く合格した冴島遥人を演じるのが大西利空。母親が自殺し、申し分なく見えた人生が一変した役どころだ。子役時代から数多くの役を演じてきた大西に、そのキャリアも振り返りながら語ってもらった。

小さい頃から人見知りはしませんでした

――物心ついた頃から、子役として仕事をしていたそうですね。

大西 生後5ヵ月で親が事務所に入れてくれました。赤ちゃんの僕を見て、親心で「イケるかも」と思ったみたいです(笑)。

――改めて経歴を拝見すると、『ゴーイングマイホーム』の宮﨑あおいさんの子ども、『なるようになるさ。』の紺野まひるさんの子ども、『3月のライオン』の神木隆之介さんの幼少期も大西さんだったのかと、ちょっとビックリしました。記憶が明確にあるのは、どの辺からですか?

大西 初めて出演したドラマの『ドン★キホーテ』が5歳の頃で、楽しかった記憶がうっすらとあります。『ゴーイングマイホーム』あたりからはわりと覚えています。

――ずっと楽しかったんですか?

大西 はい。現場には母と行ってましたけど、ずっとくっ付いている感じではなくて、お茶場(休憩スペース)で先輩の役者さんたちと一緒にいたり、空き時間になってもスタジオから戻ってきませんでした。なので、母はスタッフさんとよく話していて、いまだに現場で「お母さんは元気?」とよく聞かれます。

――大人にも人見知りはしなかったんですね。

大西 人見知りも怖い感じもまったくなかったです。いろいろな人としゃべれるのが楽しいなと思っていました。

反抗期をこじらせて半年間の休業をして

――将来的にも俳優をやっていこうと決めたのは、何歳くらいでした?

大西 小学3年生か4年生の頃です。徐々に仕事をやってきて、やっぱり楽しかったので。

――それからは、進路に悩むことは全然なかったですか?

大西 中学生になって今の事務所に入って、2年生になる前くらいに半年ほど休業しました。小学5年生ごろから早めの反抗期が始まって、こじらせてしまったんです。ひねくれて何を言われてもイライラして、中学受験して入った学校に行かない時期がありました。精神的に不安定で、仕事ができる状態でもなくて。その時期には、もうやめようかと考えましたけど、ここまで続けてきて、それはないなと思い直したんです。そこでやめなくて良かったです。

――オーディションになかなか受からない時期はありませんでした?

大西 うまくいかないことはあまり気にしてないようにしているのですが、長期間に1コも決まらないことはなかったかもしれません。

――やっぱり天職なんでしょうね。

大西 周りからそう言われますし、自分でも思っているところはあります。

舘ひろしさんのアドリブがカッコ良くて

――役を事前に作り込みすぎないようにしているそうですね。

大西 役の設定や物語の構成はちゃんと頭に入れたうえで、台詞を覚えて多少練習したら、あとは現場でのドライやリハーサルで固めるようにしています。周りの雰囲気や掛け合いで影響を受けることもあるので。作り込まないとどうしようもない役もあって、『水戸黄門』のときは大分弁をかなり練習しました。そういう特別な準備が必要ない現代の役だったら、インして初日に固めて継続する感じです。

――そういう方法論も早い段階で身に付けたんですか?

大西 中学生になって、1人で練習するようになってからだった気がします。(昨年公開の)『水は海に向かって流れる』が今の自分のベストに近づく、決め手になりました。

――広瀬すずさんの10歳年下の相手役として話題でしたね。

大西 泣くシーンで悩んで、オフだった次の日にもう1回やらせていただきました。あれこれ考えるのをやめて、真っ白な状態で撮って。そこで演技への考え方が確立したと思います。

――小さい頃から、大御所の方も含めてたくさんの役者さんと共演してきて、影響を受けたり憧れた人もいますか?

大西 小さい頃に『なるようになるさ。』で、舘(ひろし)さんと一番関わったんです。面白い方でアドリブがすごくて(笑)。リハーサルの段階から「これをやってみようよ」という感じで、あんなにアドリブがある現場は初めてでした。自分も臨機応変に演じる力が培われましたし、舘さんは見た目からカッコ良かったです。

明るい弟役は自分に近かったと思います

――最近だと、『真夏のシンデレラ』に『さよならマエストロ』と弟役が続きました。

大西 僕はひとりっ子なので、姉を持つ感情は少し難しかったです。そこも周りの方と演じているうちにわかってきました。

――『さよならマエストロ』の海だと、家族に「みんないつも俺に気をつかわせて。一番年下なんですけど!」と爆発したりもしてました。

大西 そんな感じでした。海も『真夏のシンデレラ』の海斗も、いろいろあっても明るい子で、自分に近い役だったと思います。

――海斗は彼女が二股をかけて妊娠したのに、自分の子どもだと庇って「学校をやめて結婚する」と言ってました。

大西 本当にいいヤツだなと思いました。自分は何もしてなくて、明らかに彼女が悪いのに、ウソをついて相手の親に「すいませんでした」と謝って。友だちからも「いい子だね」と好評でした。

セットが高価なものばかりでビックリ

――『スカイキャッスル』の冴島遥人はより複雑というか、難しい役ではないですか?

大西 今回も家族の話ではありますけど、遥人は表と裏の顔があって、確かに複雑で難しいところはあります。表向きは礼儀正しく、他の家のお母さんともちゃんと会話ができて、愛想が良くて。

――そこは大西さん自身にもあるものだと思いますが、あんな長いテーブルで四家族のパーティーとか、やったことありますか?

大西 ないです(笑)。あのシーンがセットの初日でした。何かの番組に松下(奈緒)さんたちが出られていたとき、香盤表に「セットがとても高価なものなので気をつけてください」と書かれていたという話をされていて。現場で僕たちもスタッフさんからそう言われて、セットに入ったら、もうビックリ(笑)。テーブルも後ろに飾ってあるものもすごかったです。冴島家もすごく広くて、家の作りも豪華で。

――大西家と比べると?

大西 あの家と比べると狭すぎるくらいに感じます。

(C)テレビ朝日
(C)テレビ朝日

自分で受験勉強して自分でイヤになって

――その裏で遥人がタブレットに残した日記には、成績が落ちると父親に殴られたり、母親に勉強だけを強要されたりで、「僕の自我は崩壊寸前」「この家は地獄」とまで書かれていました。

大西 遥人がどういう気持ちなのか想像して、「わかるよ」と思いながら台本を読んでいました。僕も勉強はあまり好きでないので、そこまで強要されたら、いい気はしないだろうし。お父さんが病院の院長候補で、期待やプレッシャーも含めて、すごくストレスだったのは理解できました。

――先ほど出た大西さんが学校に行かなかった時期も、勉強がイヤということもあったんですか?

大西 それもあったと思います。小学校の頃に中学受験で勉強しすぎて、そのときは苦でなかったんですけど、合格して中学に入ってリバウンドみたいになった節はあります。

――大西さんは中学受験を、ご両親に強要されたわけではなくて?

大西 自分でやりたくて受験勉強を始めました。両親から「勉強しろ」と言われたことはなくて、父親は「しなくてもいいよ」と言っていたくらい。僕が自主的に取り組んでいたんです。自分で勉強して自分でイヤになって、意味のわからないことになっていました(笑)。

――CMにも出演している「家庭教師のトライ」で勉強していたんですよね?

大西 学校に行ってなかった期間から、また学校に行き始めたあとまで、トライさんの家庭教師をお願いしていました。学校に行ってないと外にも出たくなかったので、当時の僕にはありがたかったです。

どういう心境で泣いているのか確認しました

――今回は現場での試行錯誤もありますか?

大西 いつもより考えることは多いかもしれません。わからないことは、その場で監督に聞いています。お母さんが亡くなって、お墓のシーンでは結構質問していました。

――父親と一緒に泣いていたところですね。

大西 お母さんは自殺でしたけど、遥人が殺したようなもの。どういう心境で泣いているのか、すごく気になったんです。本当に悲しくて泣いているのと、人前で取り繕ったウソの涙では違いますから。ドライの前に、遥人はちゃんと悲しんでいると確認しました。

――日記には「死ぬべきは親のほうだ」と書いてはいても。

大西 それも含めて後悔していて、「なんであんなことをしてしまったんだろう?」という感情の元に、泣いていました。

――母親に平手打ちをするシーンもありました。

大西 遥人は感情のアップダウンが激しすぎます。母親にビンタして、死んでしまったあとに「ごめんなさい」となっていて。さらに(受験コーディネーターの)九条先生を恨んで、刃物で斬りつけにいくという。

――2話のラストのあのシーンは緊迫感がありました。

大西 遥人としての緊迫感もありましたし、ミスしたら小雪さんにケガをさせてしまう。自分に掛かる緊張もありました。

通学の満員電車で『ONE PIECE』に涙して

――大西さん自身は感情の起伏はあるほうですか?

大西 そんなにないほうで、わりとフラットかもしれません。急に怒ったりはしないです。

――演技だと、泣いたり怒ったりは自然に?

大西 それで苦労したのは『水は海に向かって流れる』くらいだったと思います。あそこで一度行き詰まって、ちゃんと考えることができたので、その後は大丈夫になりました。

――普段も泣くことはないですか?

大西 アニメを観て泣くことはあります。『ONE PIECE』のチョッパーの育ての親のDr.ヒルルクの「まったく、いい人生だった!」は、通学中の満員電車で携帯で観ていて泣きました。周りの人に「えっ? こいつ泣いてる」とすごく見られていたと思います(笑)。

――アニメが好きなんでしたっけ?

大西 よく観ます。『ヒロアカ(僕のヒーローアカデミア)』も好きですし、『ONE PIECE』は今のエッグヘッド編の最初のほうまで来ました。

勢いで始めたゴルフにハマりました

――『スカイキャッスル』の原作の韓国ドラマは観ました?

大西 母はこのお仕事が決まる前から普通に観ていて、僕もチラチラ観て内容はある程度知っていました。でも、衣装合わせのとき、監督から「あえて観直さなくてもいい」と言われて。日本版を作るから韓国版に引っ張られてほしくない、ということでした。

――韓国ドラマに限らず、普段ドラマや映画はよく観ますか?

大西 日本のドラマのほうがよく観ます。家で流れていて、面白かったら続きを観たり。あとは『不適切にもほどがある!』とか、面白いと言われたドラマが気になって観たりもします。

――「こういう作品に出てみたい」と思うことも?

大西 スポーツ系のドラマですね。熱くなっているシーンは楽しそうだなと思います。『下剋上球児』とか、小さい頃に観た『ルーズヴェルト・ゲーム』とか。アニメでも『忘却バッテリー』はコミックの1巻が発売されたときから読んでいました。

――大西さんはスポーツ関係の趣味も多いですが、今はゴルフが熱いようですね。

大西 そうですね。もともと両親がゴルフ大好きで、小学1・2年の頃まで、打ちっぱなしの練習場についていって、ちょっとやったり、キッズルームで遊んだり、多少は触れていました。それきりでしたけど、ゴルフをやっている友だちが多くて、僕も始めてみようと思ったんです。何ごとも始めるときは勢いで、めちゃめちゃハマって、今も続いています。

――去年の大みそかからということで、もうだいぶ上達したんですか?

大西 まだまだですけど、上達は早いほうだと思います。野球とかいろいろスポーツをやっていたので、打つコツを掴む感覚はある気がします。

スポーツドラマのオーディションをぜひ

――趣味に挙がっている野球、バスケ、フェンシング、サッカーと、全部自分でもプレイしていたんですか?

大西 サッカーはほぼ観るだけです。バスケは部活で、野球は小学生の頃にクラブチームでやっていました。小さい頃からジャイアンツファンで、プロ野球観戦はしていて、小学1年生から「やりたい」と親に言っていたんです。でも、仕事もしていて日焼けをするからと先延ばしにされて、チームに入るのは4年生になってしまいました(笑)。

――活躍したんですか?

大西 スタメンでした。いろいろなポジションをやって、多かったのはセカンドとサードです。

――スポーツはやれば何でもできる感じですか?

大西 自分で言うのもナンですけど、運動神経は良いほうだと思います。両親ともスポーツは得意で、おじいちゃんも野球をやっていて、受け継いだみたいです。

――スポーツドラマのオーディションがあったら、バッチリですね。

大西 実技があったら、ぜひという感じです。

どんな役もオールマイティにできます

――出演作の多い大西さんですが、主役も行きたい感じですか?

大西 そんなに急いではないです。20歳を過ぎたくらいで、できればいいかなと。

――磨いていきたいことはありますか?

大西 何かを磨くというより、いろいろな経験を積みたいです。たくさん作品に出たり、オーディションを受けたり、学校の友だちと遊んだり。

――今の時点での自分の役者としての強みだと思うことは何ですか?

大西 こういう芝居はすごくうまい、というのはないかもしれませんけど、どんな役もオールマイティにできるのは、強みかなと思います。役に対してこわばることはありません。自分と似ていても、離れていても。

――今回の遥人は、自分と近くはないですよね?

大西 受験勉強をしていたとか共通点もありますけど、親の強要はなかったし、僕はああいう闇は持っていません(笑)。でも、そこが面白いですよね。友だちにも「遥人、怖かったね」と言われました。

――10代の目線で、『スカイキャッスル』に作品として惹かれるところはありますか?

大西 家族間のバチバチは目が離せなくて、いろいろなキャラクターがどう動いていくか、見どころだと思います。展開が速くて、スカイキャッスルを出た遥人もどうなるのか、注目してください。

トップコート提供
トップコート提供

Profile

大西利空(おおにし・りく)

2006年5月16日生まれ、東京都出身。2011年にドラマデビュー。2012年に『ゴーイングマイホーム』で初レギュラー。主な出演作はドラマ『どうする家康』、『真夏のシンデレラ』、『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート』、映画『キングダム』、『るろうに剣心 最終章 The Final』、『水は海に向かって流れる』など。ドラマ『スカイキャッスル』(テレビ朝日系)に出演中。

木曜ドラマ『スカイキャッスル』

テレビ朝日系 木曜21:00~

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事