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アジア王座を争う戦いのカギを握る3人のサウスポー【第28回BFAアジア野球選手権大会展望】

横尾弘一野球ジャーナリスト
韓国の崔採興、日本の田嶋大樹、チャイニーズ・タイペイの呂彦青(左から)

 野球のアジア王者を決める第28回BFAアジア野球選手権大会は、10月2日から台湾新北市の新荘棒球場、台北市の天母棒球場で開催される。優勝は前回王者の韓国を筆頭に、開催地のチャイニーズ・タイペイ、そして、社会人代表の日本で争われるのは間違いないが、そのキーマンとなりそうなのが3人のサウスポーだ。

 24名のうち兵役中も含めてプロ20名、大学生4名と最強の布陣で臨む韓国の投手陣は10名だが、大学生で唯一選出されたのが崔採興だ。

 186cm・98kgの恵まれた体格から繰り出すストレートを軸に、名門・漢陽大のエースに君臨。今夏の第29回ユニバーシアード競技大会では日本との準決勝に登板し、6回途中まで8安打4失点で敗戦投手になったものの、8三振を奪うなど大器の片鱗も見せる。また、韓国プロ野球のドラフトでは、球団の縁故地出身者を1名指名できる一次ドラフトでサムスン・ライオンズから指名されており、今後はプロでの活躍も期待される。

 2015年のアジア選手権でも代表入りし、日本戦で1点を追う6回から二番手で登板。木下拓哉(現・中日)からは三振を奪った。ユニバーシアードの借りを返す意気込みで、パワー・ピッチングを見せるだろう。

チャイニーズ・タイペイのエースは日本球界入りを熱望する呂彦青

 社会人の合作金庫、台湾電力の主力を中心に、国際大会の経験が豊富なアマチュアで編成されたチャイニーズ・タイペイは、2001年以来となる優勝を目指す。その中心となるのが国立台湾体育運動大の呂彦青である。

 台湾南部・高雄市の三民高中時代から注目され、2013年のU-18ワールドカップに出場すると、大学1年だった2014年にはU-21ワールドカップでも代表入り。176cm・70kgと決して体格に恵まれているわけではないが、カーブ、スライダー、チェンジアップを器用に操り、低目への制球に長けている。韓国の崔と同様、2015年のアジア選手権にも出場し、日本戦に先発して6回を無失点。最速147キロのストレートもキレ味が増しており、日本でプロ入りしたいという夢を持っているだけに、特に日本戦には高い集中力で挑んでくるだろう。

 さて、今大会は出場8チームを韓国、チャイニーズ・タイペイ、スリランカ、フィリピンのグループA、日本、中国、パキスタン、香港のグループBと2つのグループに分け、総当たり3試合の一次ラウンドを行なう。上位2チームは、スーパーラウンドで他グループの上位2チームと対戦し、その通算勝率1位と2位で決勝を戦う。

心技に充実したドラフト注目株の田嶋大樹

 一次ラウンドで3勝するであろう日本は、スーパーラウンドでは韓国、チャイニーズ・タイペイとの対戦が必至で、連敗すれば決勝には進めない。アジア王座を奪還するには、スーパーラウンドからの3試合が重要だが、そこで2試合の登板が期待されるのがJR東日本のエース・田嶋大樹だ。

 10月26日のドラフトで注目される182cm・77kgのサウスポーは、連投をこなせるフォームを身につけ、早いカウントから打たせて取る投球術も完成させた。7月の都市対抗でも3試合連続先発でベスト8入りの原動力になるなど、メンタル面でも逞しくなり、今回はベテランの佐竹功年(トヨタ自動車)とともに左右の両輪を担う。ライバルの2人と同じく、社会人1年目だった2015年のアジア選手権にも出場しており、パキスタンを5回パーフェクトと鮮烈な国際大会デビューを果たした。

「韓国の崔は1歳上で、チャイニーズ・タイペイの呂は同い年。これからも国際大会では顔を合わせるでしょうし、意識はしています」

 そう言う田嶋は、負ければシーズンが終わる日本選手権関東最終予選でもSUBARUを3安打1失点の好投で破り、11月の日本選手権出場に貢献。国内での最終合宿を経て台湾へ乗り込む。来夏にインドネシア・ジャカルタで開催される第18回アジア競技大会の前哨戦である今大会で、日本は王座を手にできるか。3人の若きサウスポーのパフォーマンスからは目が離せない。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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