WBCフェザー級チャンピオン、3階級制覇ならず
テキサス州アントニオで行われたWBCスーパーフェザー級空位決定戦は、同級1位のオシャキー・フォスターが、現WBCフェザー級王者のレイ・バルガスを3-0の判定で下してタイトルを獲得した。
フォスターはトランクスに“Ice water(氷水)”、“Shock the world(世界に衝撃を与える)”という文字を縫い付けていたが、この一戦に賭ける思いが表れていた。
サウスポーである筈のフォスターが、バルガスを困惑させる為に12ラウンドを通してオーソドックスで戦い、116-112、117-111、119-109のスコアで圧勝した。
フォスターは戴冠後、リング上で語った。
「言葉では表せない感情だ。母も、叔父も、祖父も、みんな天国から、俺を見守ってくれているよ」
新チャンピオンは、SHOWTIME社が設けた若手育成番組『The New Generation』に4度出場した29歳のベテランである。12歳のときに母親を癌で亡くすなど、苦難を乗り越えてきた。9戦目で判定負けを喫し、その3戦後には1-2の判定で2度目の黒星を喫した。
しかし、この日のフォスターは、自信たっぷりに32歳の2階級制覇王者、バルガスにジャブを浴びせ、後半のラウンドではフットワークで1階級下の世界チャンプを苦しめた。右ショートを随所に当て、リズムに乗る。そして迎えた第11ラウンド、バルガスの目の下の腫れが目立つ中、フォスターは強烈な左をぶち込んでバルガスの意識を失わせた。
CompuBoxによると、フォスターはバルガスより101発上回る手数を出し、43発多く(ジャブ22発、パワーパンチ21発)命中させた。文句無しの勝利だった。
フォスターは続けた。
「献身的、かつ懸命に取り組んだ結果だ。俺は素晴らしいチームに恵まれている。気が散ることが無いよう、精神的にも肉体的にも周到な準備をした。それがとても重要だった。何度もバルガスのテープを見たし、コンビネーションを駆使した。彼がこれまでの対戦相手に上手くカウンターで応対したことは知っていた。自分のやってきた戦い方を変えてみた。
130パウンドを統一したい。誰とだって戦うよ」
37戦目で初の敗北を経験したバルガスだが、フェザー級のWBC王者であることに変わりはない。3回終盤、フォスターはボディブローでダウンを奪ったかに見えたが、レフェリーがスリップと判断。フェザー級王者のまま1階級上のタイトルに挑んだ点といい、このジャッジといい、主役はバルガスでフォスターは斬られ役を宛がわれていた。
が、過去にスーパーライト級でリングに上がったこともあるフォスターは、下のクラスの選手に負ける訳にいかなかった。
私は、フォスターを目にしながら、トーマス・ハーンズをKOしたアイラン・バークレー、あるいはアレクシス・アルゲリョの4階級制覇を阻んだアーロン・プライアーの姿を重ね合わせていた。