「河村市長、"菌メダル"獲得」新型コロナ感染で、こんな表現は許される?:私たちの病との戦い方
■河村たかし名古屋市長、新型コロナに感染
報道によれば、河村市長が新型コロナに感染しました。
■菌メダル?
河村市長は、ユニークな言動で注目を集めてきましたが、最近最も話題になったのは、「金メダルかじり」でしょう。多くの批判を浴びましたし、ご本人も謝罪文を出しています。
そして、今回の感染報道。さっそく、SNSなどネット上でも盛り上がっています。ツイッターのトレンドには、「菌メダル」が入りました。
「河村市長、ついに菌メダル獲得」
「名古屋市長コロナになって菌メダル」
「菌メダル獲得おめでとうございます」
「ほんとに菌メダルで草」
「バチが当たったねwww」
「笑いが止まらない!」
金メダルと菌メダル。面白いダジャレかもしれませんが、個人に向かってこんなことを公言しても良いのでしょうか。
たしかに金メダルかじりは、批判されて当然のことです。今までも、問題発言などありました。ユニークで、心身ともに強そうで、ふてぶてしくさえ見える風貌ですから、いじりがいがあるかもしれません。
けれども、今回は新型コロナに感染したというニュースなのです。
■誹謗中傷、病気への揶揄(やゆ)
相手が誰であれ、誹謗中傷は許されていません。侮辱することも許されていません。政治家でも有名人でも芸能人でも加害者でも、誰に対しても誹謗中傷はやめようと、いくつもの悲劇から私たちは学んできたはずです。
たとえば、ヤフーコメントでは、「『表現の自由』は無制限ではありません」として、「特定の個人(公人を含みます)に対する人権侵害、誹謗(ひぼう)・中傷に該当しうる投稿」や「人の自尊心を根本的に否定し、尊厳を傷つける投稿」「被害者・被害者の親族、加害者・加害者の親族および関係者などに対する心ない投稿や不謹慎な投稿」は、禁止されています。
ツイッターは、「深刻な疾患を理由にして他者への暴力を助長したり、脅迫または嫌がらせを行ったりする投稿を禁じます」としています。
「菌メダル」や、感染したことに対して「笑いが止まらない」と表現することが、これらのルールに違反するのかどうかは、微妙なのかもしれません。
でも、たとえば、安倍首相の持病である潰瘍性大腸炎を揶揄した人は、批判を浴び、謝罪することになりました。
プライベートな場なら何を言っても良いでしょう。しかし、現実の公の場で言っていけないことは、SNSのようなネット上の公の場でも言ってはいけないのです。
相手が政敵でも、悪人でも、強者でも、嫌いな人でも、批判は当然良いのですが、誹謗中傷はいけないのです。
■病気を笑うこと、新型コロナ感染をネタにすること
相手が誰であれ、新型コロナに感染した人を責めたり、笑いものにしては、いけないのではないでしょうか。
安倍首相の潰瘍性大腸炎が揶揄されたときには、政治的立場を越えて、同じ病に苦しむ人々から抗議の声が上がりました。潰瘍性大腸炎は、外から見てはわからない病気であり、周囲からの無理解のために苦しんでいる人もいます。
だからこそ、揶揄した人は批判されました。
新型コロナも、まだまだ差別と偏見に苦しむことがある病です。だからこそ、誰が感染したとしても、個人を責めたり侮辱するような言動は控えたいと思います。
そして健康を取り戻したら、また大いに批判し、議論を闘わせたいと思います。
新型コロナは、私たちの健康を害すだけではなく、私たちの心と人間関係に攻撃を仕掛けてきます。悪気がないとしても、冗談だとしても、感染者を笑いものにしたり、互いに傷つけあうことはやめましょう。
相手が誰であれ、感染者や患者に必要なことは、思いやりある態度ではないでしょうか。
新型コロナとの私たちの戦いは、感染を防ぐだけでなく、より良い人間関係を保つことなのです。