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井上尚弥戦を望むIBFフェザー級チャンプ

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Mikey Williams/Top Rank

 「WBO王者のラファエル・エスピノサとの統一戦でもいいし、井上尚弥だっていい。誰とだって戦う。すべてのチャンピオンとやりたい」

 新チャンピオンはそう言った。

 2024年8月10日、ニューメキシコ州アルバカーキ出身のアンジェロ・レオは故郷、ティングリー・コロシアムでルイス・アルベルト・ロペスに10回KO勝ちを収め、IBFフェザー級タイトルを獲得した。

Mikey Williams/Top Rank
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 30勝(17KO)2敗のロペスにとっては、4度目の防衛戦。レオはファーストラウンドから、自分の距離を保った。ロペスの攻撃を足で捌き、接近戦でも王者のパンチをブロックで封じた。そして、左フックに合わせた鋭いオーバーハンドライトのカウンターを放ち、勢い付いた。

 ラウンドを重ねるにしたがって、ロペスは消耗していく。5回、ショートレンジで起死回生の右アッパーをヒットして、やや劣勢を跳ね返したかに見えたが、6ラウンド2分にレオの右ストレートを浴びる。

Mikey Williams/Top Rank
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 7、8回はロペスがチャンピオンの意地で粘りを見せた。9回もクリンチを多用して凌ぐ。レオはボディブローを何度も放ち、顔面へは右ストレートでポイントを稼いだ。

 そして迎えた第10ラウンド1分、レオの放った左フックがロペスの顎を打ち抜き、チャンピオンはキャンバスに大の字になる。立ち上がりかけたが、レフェリーがカウント・テンを数えた。

 WBOスーパーバンタム級チャンピオンのレオは、同州出身のジョニー・タピアとダニー・ロメロに続き、2階級制覇を成し遂げた。

Mikey Williams/Top Rank
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 勝者は言った。

「故郷で戦うことは私にとって、大きな意味がある。この瞬間をずっと待ち望んでいた。前にも言ったように、世界タイトル戦をノックアウトで勝つほど幸せなことはない。

 この左フックは、キャンプで4~5か月練習してきた。ジムではなく、部屋の鏡の前で何度も左フックを放ち続けたんだ。10ラウンドにそれが功を奏した」

Amanda Westcott/SHOWTIME
Amanda Westcott/SHOWTIME

 2020年8月のWBOスーパーバンタム級空位決定戦に出場した折、レオは住居をラスベガスに移し、フロイド・メイウェザー・ジュニアのアドバイスを受けた。当初、同ファイトはレオと、ステファン・フルトンで決まっていた。が、試合3日前にフルトンの新型コロナウィルスの感染が明らかになり、急遽トラメイン・ウィリアムズが代役を務めることとなる。

 レオはウィリアムズに勝利したが、初防衛戦でフルトンに判定負けし、無冠となった。御存知のようにフルトンは昨夏、井上尚弥に2本のベルトを奪われている。レオが井上を意識するのは当然だ。

 レオも将来、モンスターの対戦候補に挙がるのか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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