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小説を書いて見つけた「全てが財産」の世界。元「NMB48」三田麻央が語る価値観の進化

中西正男芸能記者
小説家デビューした元「NMB48」の三田麻央さん

 4月20日にライトノベル「夢にみるのは、きみの夢」(小学館・ガガガ文庫)で小説家デビューしたアイドルグループ「NMB48」の元メンバー・三田麻央さん(25)。2019年に「NMB48」を卒業後はタレントや声優、イラストレーターとして活動しつつ、2年前から原稿を書きためてきました。迷いと挫折の2年間でもありましたが、そこを経てたどり着いたのは「全てが財産」の境地でした。

2年の旅路

 本当に正直に言うと、ウチの事務所の社長からライトノベルを書いてみないかというお話をいただきまして。

 これまで書くという分野の実績はなかったけれども、イラストはずっと描いてきたので「何かを生み出すこと」はやってきた。

 そういうところからのお声がけだったようなんですけど、私としては本当に軽いノリというか(笑)、瞬間的に「じゃ、書きましょうか」と返したことから始まったんです。

 ただ、文章を書くことは本当に経験がなかったので、結局、本ができるまでに2年かかりました。

一文字目が書けない

 最初に、小説の設計図となるようなプロットを出してくださいと言われたんですけど、まず、これが全く出てこなくて。

 なので、編集者の方が二人三脚というか、そもそも、プロットというものをどう作ったらいいのかみたいな基礎的なところから教えてくださって、考えていきました。

 ただ、これが本当に進まなくて。

 やると決めたら、どんなことでも生半可なことはできない。その私の信念もありましたし、編集者の方も「最初の作品だからこそ、良いものにしましょう」と言ってくださる。その情熱に何とかお応えしたいという気概もあいまって「中途半端なものは作れない」という思いから、なかなか作業が進まなくて。

 なんとか、設計図的なものを作り上げて、さぁ、ここからは自分一人で原稿を書いていくとなったらなったで、やっぱり、経験がないことでもありますし、一文字目が書けないんです。全く書けない。

 なので、そこは週に1回という締め切り日を定めてもらって、その日までに何ページでもいいから、なんなら何行でもいいから書く。そういった流れで積み重ねていきました。

書いてみての思い

 書いている途中は「もう、二度と書かない!」と思っていたんですけど、最後の方は本当に書くのが楽しくて。

 自分の中で元々いくつか書きたい部分があって、ラストも最初から定めていたんです。自分が出したい部分に向けての道を作っていく。

 その感覚がおぼろげながら掴めてきたのか、書き終える前は最初一文字も書けなかったことがウソのように、書くことに没頭していました。

 ただ、言っても、時間としては大変で、楽しくない時間の方が圧倒的に長かったので、やっぱり、もう書かないだろうなと思っていたんです。

 でも、作品を見てくださった方々からの感想が届いた瞬間に「これを、もらいたかったんだ…」となって「また書いてみたい」になりました。

 今回、大きな垣根を超えたからこそ、今は小説だけでなく、何にでも挑戦してみたいと思うようになっています。

 やってみて分かったのは、私は一人でコツコツ何かをやるということに、かなり向いてるみたいだということですね(笑)。

全てが財産

 お話をもらったのが「NMB48」を卒業した直後。なので、私自身について再認識する意味でも、今回の執筆は本当に大きかったと思っています。

 これまで、自分の心の中をカタチに残せるのはイラストだけだと思っていたんですけど、今回で文章という選択が増やせたので、ここは一生大事にしていきたいと思います。せっかくここまで頑張ってきましたからね(笑)。これで終わりはイヤだなと。

 書いて、一番変わったことは、日々の感じ方ですね。

 日常ってずっと流れていくものですけど、その一日一日、一秒一秒に重きを置くようになったと感じています。

 書いてみて分かったんですけど、この小説に出てくるものって、創作物とはいえ、8割くらいは実際に存在しているものなんです。

 お話自体は作られたものですけど、出てくるお店とかは実在のものが反映されている。となると、日常で何気なく目に入っていたものも、きちんと意識を持てば、全てがヒントだし、全てが財産なんだと思うようになりました。

 例えば、桜を見ていても「あ、ピンクで綺麗に咲いているな」というボーッとした視点じゃなく、花びら一枚一枚が落ちていくスピードとか、落ち方とか、そういうところにも細かく目が向くようになりました。

 逆に言うと、今まではかなりボーッと生きてきたのかなとも思いましたけど(笑)、書くことでいろいろなものが発見できました。これは間違いないですし、これからも書くことを大切にしていきたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■三田麻央(みた・まお)

1995年9月9日生まれ。大阪府出身。Showtitle所属。2011年に「NMB48」2期生オーディションに合格。19年にグループを卒業し、タレントとして活動をスタートさせる。今年4月20日にライトノベル「夢にみるのは、きみの夢」(小学館・ガガガ文庫)で小説家デビューを果たした。恋愛経験がないオタクOLの美琴と、AIの美少年のナオがひょんなことから同居するラブストーリー。SFやミステリー要素も加わった新感覚のライトノベルとなっている。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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