ウクライナ空軍Su-24攻撃機からストームシャドウ巡航ミサイルを発射する新たな映像が公開
8月4日の「ウクライナ空軍の日(毎年8月の第1日曜日)」に、ウクライナ空軍は記念動画を公開しました。空軍司令官のミコラ・オレシュチュク中将は「ロシアとの2年半の戦いで、空軍は8000機以上の敵航空目標(数百機の飛行機やヘリコプター、数千機の巡航ミサイルや無人機)を撃墜した。ウクライナのパイロットは2万回以上出撃した。」と説明しています。
なおウクライナ空軍の創設はソ連から独立した翌年の1992年なので32周年ですが、2004年に空軍と防空軍が統合されており、この時から数えると20周年になります。
ウクライナ空軍20周年動画(2004年に防空軍と統合)
- 0:00~0:08:Su-27戦闘機とJDAM-ER滑空爆弾
- 0:09~0:12:IRIS-T SLM防空システム
- 0:13~0:15:NASAMS防空システム
- 0:16~0:18:パトリオット防空システム(PAC-2) ※ただしアメリカ陸軍の映像
- 0:19~0:25:Mi-8輸送ヘリとロケット弾ポッド斜め上発射戦法
- 0:26~0:35:対空警戒レーダー「P-18スプーンレストD」「80K6KS1フェニックス」
- 0:36~0:37:Su-27戦闘機とSDB(GBU-39)滑空爆弾
- 0:38~0:46:MiG-29戦闘機とAGM-88 HARM対レーダーミサイル
- 0:47~0:50:Su-25攻撃機とロケット弾ポッド斜め上発射戦法
- 0:51~1:04:Su-24攻撃機とストームシャドウ巡航ミサイル
- 1:05~1:29:携行地対空ミサイルと対空機関砲(機動射撃班)
- 1:30~1:35:ホーク防空システム
- 1:36~1:37:IRIS-T SLM防空システム
- 1:38~1:43:F-16戦闘機 ※複座型、ウクライナ国外での訓練の様子?
- 1:44~1:52:パトリオット防空システム(PAC-2)
※兵器名は推定。80K6KS1フェニックスとしたものは同系列の79K6ペリカンである可能性もある。ウクライナ国産レーダー。
※0:16~0:18のパトリオットの映像は2022年11月5日のニューメキシコ州マクレガー射撃場でのアメリカ陸軍の演習での様子。参考:Patriot Live Fire, November 5, 2022 | DVIDS
初出のウクライナ空軍の実戦映像が多く含まれていますが、ロシア軍に情報を与えない目的なのか一部の映像はアメリカ陸軍の演習映像が使われています。配備位置や運用の傾向を知られないように、パトリオットの実戦映像はなるべく出したくないのでしょう。
Su-24攻撃機から発射されるストームシャドウ巡航ミサイル
今回の記念動画には、ウクライナ空軍のSu-24攻撃機が英仏から供与されたストームシャドウ/SCALP-EG巡航ミサイルを発射している様子が映っています。公式からの発射映像はおそらくこれが初公開となります。
※英仏共同開発のストームシャドウ(英名称)/SCALP-EG(仏名称)は同じミサイルで異なる名前が与えられている。この記事ではストームシャドウと呼称する。
ストームシャドウ投下の瞬間
ストームシャドウの発射シークエンスは以下の通りです。
- ミサイル本体を投下前にミサイル空気吸入孔の蓋を投棄
- ミサイル本体を投下すると同時にミサイル後部下の垂直安定翼を展開
- ミサイル本体の投下後に主翼を展開、ジェットエンジンを始動して巡航開始
今回のウクライナ空軍から公開された動画では2と3の様子が映っています。なお1の蓋を投棄する様子は映っていませんが、2の垂直安定翼がミサイル本体から飛び出す理由は、1で投棄した蓋が安定翼に当たって損傷しないように収納しておく目的だと思われます。
参考:BAE Systems & Eurofighter Typhoon: Stormshadow missile release
(BAE公式よりストームシャドウ試験映像の発射シークエンス)
ウクライナ空軍Su-24攻撃機のストームシャドウの投下高度は正確には分かりませんが、低高度ではないですが高高度というわけでもない、中高度くらいで発射しているように見えます。
Su-24攻撃機は可変翼ですが、後退角度は4段階を選んで固定する方式です。
- 16度:離着陸
- 35度:巡航(亜音速)
- 45度:空戦機動
- 69度:超音速および遷音速
おそらく35度の巡航用の形態だと思われます。