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城南人気が落ちている今が狙い目? マンション騰落率からみる世田谷区の穴場の街は

櫻井幸雄住宅評論家
世田谷区豪徳寺にある「豪徳寺」は招き猫で有名。その近くにマンション購入の穴場が。(写真:Nobuyuki_Yoshikawa/イメージマート)

 都内23区のなかでも、品川・目黒・大田・世田谷の4区は「城南」と呼ばれる。江戸城の南側という意味で、都内でも神奈川県寄りの場所だ。

 この城南には、全国的に有名な住宅地が多い。

 田園調布、自由が丘をはじめ成城、三軒茶屋、碑文谷、駒場、八雲、奥沢、等々力……有名人が住んでいそうな地名が次々に出てくる。

 だから、城南は23区内でも特別な場所とされてきた。一言でいえば、高級住宅エリアというわけだ。

 が、近年、その人気には陰りが出ていた。「世田谷区の人気が落ちている」とか、「大田区内では、不動産価格が下がっている場所が多い」といった記事を見ることが多くなったのである。

 今、マンションで人気が高いのは、再開発エリアに立地する超高層。品川区と目黒区なら「再開発・超高層」物件があるものの、世田谷区と大田区には再開発が進んでいる場所も超高層マンションもしばらく出ていない。そのため、地味な場所と見なされるようになったのかもしれない。

 実際、城南エリアでは、中古マンション価格が下がる場所も出てきた。

 すると、今度は、「値段が下がったのなら、狙い目」と考える人もいる。東京23区内の中で、マンション価格が変動している「城南」は、割安に高品位なマンションを手に入れやすい場所でもある。

 その城南で、中古マンション価格が高い場所、そして値下がり幅が大きい場所はどこなのか。「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインド社が、9月8日、城南における中古マンション坪単価と騰落率を発表した。

 これは、「東京23区のマンション相場変遷10年」と銘打った調査シリーズの第4弾として発表されたもの。これまで、千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷といった純都心部や城東エリアのデータが発表されてきた。

 今回データが発表された城南の4区は、都心近接で高級住宅地であるため、どんな場所のマンション価格が上がり、どこが下がっているのか気になる。興味深いデータから、多くの人にとって、マンション購入の狙い目となる場所はどこか、を探った。

城南で、中古マンション価格が高い場所は?

 まず、城南エリアで、中古マンション価格が高い場所について。

 当然ながら、人気が下降気味とされる城南エリアでもマンション価格が相変わらず高い場所がある。

 それは、どこか。マンション価格が高い場所を1位から5位まで並べてみた。

城南エリアで、中古マンション価格が高い場所。「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインド社の発表データから作成。5位まではすべて、70平米のマンション住戸が8000万円を超える。やはり、高い。
城南エリアで、中古マンション価格が高い場所。「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインド社の発表データから作成。5位まではすべて、70平米のマンション住戸が8000万円を超える。やはり、高い。

 1位の世田谷区玉川は東急田園都市線二子玉川駅がある場所で、近年、再開発によって新しい街区「二子玉川ライズ」ができあがった。楽天グループが本社を移転したのも、この二子玉川ライズだ。

 以下、2位から5位まで品川区と目黒区の町名が並ぶ。いずれも、静かな住宅地ではない。

 2位の品川区大崎は、再開発によって新しい街ができあがっている。公立の小中一貫校があることでも人気が高い。

 3位の目黒区上目黒は、東急東横線と東京メトロ日比谷線が利用できる中目黒駅を中心とした街で、芸能人が通う飲食店も多い場所として知られる。

 4位の目黒区三田は、JR山手線の恵比寿駅と目黒駅の間で、恵比寿ガーデンプレイスの一部が含まれるエリアである。

 以上4位まで、城南といっても、静かな住宅地ではなく、再開発などによって活気がある街区が並ぶ。

 5位の目黒区青葉台は、住宅地系の場所といえる。が、目黒区青葉台は代官山駅や渋谷駅に近い場所。必ずしも「静かでのんびりした住宅地」ではない。

 結局、城南エリアの住宅地といっても、人気があり、マンション価格が高いのは、活気ある場所や活気ある場所に近いエリア。落ち着いた住宅地が人気を高める時代ではない、ということか。

10年間で値下がり幅が大きい場所は

 次に、今回発表されたデータからこの10年で、マンション価格の値下がり幅が大きい場所をみてみよう。簡単にいえば、城南でマンション価格が下がっている場所だ。

 値下がり幅が大きかった場所としては、世田谷区南烏山(−19.21%)や、大田区大森中(−9.40%)、大田区田園調布本町(−9.30%)、世田谷区岡本(−7.70%)などがあった。

 世田谷区南烏山は、京王線の芦花公園駅・千歳烏山駅間の両側に広がる場所で、一戸建てが中心となる住宅地だ。

 大田区大森中は、京浜急行の大森駅と梅屋敷駅間の東側に広がる場所で、かつては町工場が目立ったが、今は一戸建てとマンションが主体となる住宅地だ。

 大田区田園調布本町は、その地名から田園調布の中心地を連想しがち。が、実際は田園調布の邸宅街から離れ、多摩川と環八通りの間に挟まれた場所。田園調布の本筋ではないが、一戸建てが多く、落ち着いた住宅地である。

 そして、世田谷区岡本は、ケタ外れに敷地の大きな邸宅が目立つ、文字通りの高級住宅エリア。つまり、10年間で価格が下がっている場所には、城南らしい落ち着いた住宅エリアが多く含まれることになる。

 わかりやすくいえば、再開発で活気ある場所はマンション価格が上がり、落ち着いた住宅エリアではマンション価格が下がっていることになる。

 これは、静かな場所のマンションを購入したい、と考えている人には好都合といえる。23区内の歴史ある住宅地内で、割安な価格で中古マンションを購入できるチャンスといえるからだ。

城南で、お勧めの住宅地を探すと……

 では、10年間でマンション価格が下がっている場所を子細に検討し、お勧めできる場所はないか、考えてみた。

 単に、マンション価格が下がっているだけでなく、都心への出やすさや電車の混雑度も加味した上でお勧めできる場所である。

 その結果、浮かび上がってきた地名は、「世田谷区宮坂」。10年前の2011年と比べて、中古マンション価格は約7.7%下落し、坪単価は233万円ほどだ。

 といっても、世田谷区宮坂の知名度は低く、それがどんな場所か思い浮かぶ人は少ないだろう。

 世田谷区宮坂は小田急線の豪徳寺駅と経堂駅の間に位置し、その周辺で有名な場所としては招き猫が並ぶ豪徳寺(住所は世田谷区豪徳寺・冒頭の写真)があるくらい……と説明しても、まだピンと来ない人が多いだろう。

 が、そのくらい知名度が低いほうが、穴場としてふさわしい。

 そして、経堂駅、豪徳寺駅がある小田急線は近年複々線工事が完了し、朝夕の電車混雑度が軽減。朝の通勤時歓待も電車の運行がスムーズだ。城南エリアから都心に向かう路線のなかでは、通勤のストレスがないことも高評価のポイントとなる。

 現在の坪単価から計算すると、世田谷区宮坂の中古マンション価格は70平米で4900万円台となる。現在、23区内の新築マンション価格は70平米で7000万円台半ばに達しているので、この価格水準は納得感があるだろう。

 世田谷区宮坂は、城南エリアでマンション探しをするとき、覚えておきたい地名のひとつである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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