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【インタビュー】ラプソディー・オブ・ファイア、2019年6月に来日。新たなるサーガが始動

山崎智之音楽ライター
Rhapsody Of Fire / courtesy M&I Company

イタリアの誇るシンフォニック/エピック・ヘヴィ・メタルの巨星、ラプソディー・オブ・ファイアが2019年6月にジャパン・ツアーを行う。

約3年ぶりとなる来日は、アルバム『ジ・エイス・マウンテン〜第八の山岳』に伴うものだ。新たなる英雄叙事詩“ネフィリムズ・エンパイア・サーガ”の第1章となる作品を引っ提げて行われるライヴは、バンドにとって新たな旅立ちとなる。

オリジナル・メンバーの1人にしてキーボード奏者のアレックス・スタロポリが、ジャパン・ツアーに向けての熱い意味込みを語ってくれた。

<ラプソディー・オブ・ファイアの名前で発表する作品は最高でなければならない>

●2019年6月の来日公演、楽しみにしています!

うん、俺たちもすごくエキサイトしているよ。2月から3月にかけてヨーロッパ・ツアーを行ったけど、オーディエンスの新曲への反応はポジティヴなものだった。俺たちは自分たちで「傑作だ!」と思わなければアルバムをリリースしないけど、『ジ・エイス・マウンテン〜第8の山岳』がストロングな作品であることをさらに確信したよ。日本のファンもきっと盛り上がると信じている。

●ヨーロッパ・ツアーでは『ジ・エイス・マウンテン〜第8の山岳』から「レイン・オブ・フューリー」「ウォリアー・ハート」「マーチ・アゲインスト・ザ・タイラント」「ザ・レジェンド・ゴーズ・オン」「マスター・オブ・ピース」など、多めの曲数をプレイしていますが、お客さんの反応はどんなものでしたか?

『THE EIGHTH MOUNAIN』ジャケット(キングレコード/発売中)
『THE EIGHTH MOUNAIN』ジャケット(キングレコード/発売中)

ヨーロッパでは2月21日にツアーが始まって、アルバムは22日に発売になったんだ。だからお客さんが新曲にまだ親しんでない状態だった。それでもアルバムから7曲プレイして、すごく盛り上がったんだ。最高の形でバンドの新章の幕開けを飾ることが出来たよ。

●新作の曲は、ライヴでどのような変化を遂げるでしょうか?

アレンジ自体は大きく変わることがない。でも、曲に込めるエモーションは、アルバムとライヴでは異なったものになるよ。今は新しい曲をステージでプレイすることに最高のスリルを感じている。新しいエネルギーが宿っているんだ。日本にもそのスリルとエネルギーをそのまま持っていくよ。「レイン・オブ・フューリー」は日本語ヴァージョンでやるつもりなんだ。ジャコモが日本語で歌うことになるから、ぜひ一緒に歌って欲しいね!

●2016年に加入したジャコモ・ヴォーリ(ヴォーカル)とマヌ・ロッター(ドラムス)は、バンドにどのように貢献していますか?

ジャコモとマヌはラプソディー・オブ・ファイアにとって不可欠なメンバーだし、今では彼らがいないバンドを想像することは難しいよ。3年前、特にジャコモにとっては大きなチャレンジだったんだ。ヴォーカリストはバンドの“顔”だからね。セルフ・カヴァー・アルバム『レジェンダリー・イヤーズ』(2017)を発表したことは、世界中のファンに新しいシンガーをお披露目する良い手段だったと思う。ジャコモがラプソディー・オブ・ファイアのシンガーとして十分以上の実力を持っていることを証明するベストな機会だったよ。『レジェンダリー・イヤーズ』は過去曲のセルフ・カヴァー・アルバムだから簡単に作れたと思うファンもいたかも知れないけど、決してそうではなかった。新しいラインアップで、オリジナルの完成度をどのように生かして、どのように変えていくか、試行錯誤を重ねたよ。再現するだけでは意味がないんだ。ラプソディー・オブ・ファイアの名前で発表する以上、最高でなければならないんだ。

●2017年はラプソディー・オブ・ファイアが『レジェンダリー・イヤーズ』を発表して、元メンバーのルカ・トゥリッリとファビオ・リオーネが“20th Anniversary Farewell Tour”を行うなど、バンドの軌跡を振り返る時期でしたが、それはどんな心境によるものだったのでしょうか?

確かにそういうノスタルジックなムードがあったね。理由なんてなく、誰でもそういう時期があるものだ。たまに自分の周囲を見回してみたくなる。そうして前方を見据えて、歩いていくんだ。『ジ・エイス・マウンテン』はそんなアルバムだった。まあ、元メンバー達がやっていることは、俺とまったく関係ないけどね。

●ルカとファビオから“20th Anniversary Farewell Tour”には誘われましたか?

...ルカから話はあったよ。ただ、彼らはすべての条件を決めていた。俺の意見の入り込む隙がなかったんだ。俺は単に“オリジナル・メンバー”という名前を貸すだけのセッション・プレイヤーにはなりたくなかった。バンドの創始メンバーとして、自分の意見を言える立場にありたかったんだ。結果として彼らは、俺を交えずにツアーを行うことになった。それで彼らがハッピーなら、それで俺は構わないよ。ルカと俺は2011年、別々の道を進むことを約束したんだ。それ以降、俺は同じバンド名、同じアティテュード、新しい音楽を強い意志で創り続けてきた。過去のサーガと現在・未来のサーガをクロスオーヴァーさせることはないし、他の連中が何をしようが、もう気にしないことにしたんだ。彼らが「もう止める。おしまいだ」と言うのは自由だよ。俺の知ったことではない。ただ、よく事情を知らない人が「えっ?ラプソディー・オブ・ファイアが解散するの?」と誤解するのは困ってしまうけどね。

Rhapsody Of Fire / courtesy of M&I Company
Rhapsody Of Fire / courtesy of M&I Company

<ラプソディー・オブ・ファイアのサーガの住人は、現実世界よりも人間らしく生きているかも知れない>

●『ジ・エイス・マウンテン』は“ネフィリムズ・エンパイア・サーガ”の第1弾だそうですが、それは何作ぐらい続くのでしょうか?

うーん、たぶん3作になると思う。全体の構想はもう出来上がっているんだ。あとはディテールを固めていく必要がある。『レジェンダリー・イヤーズ』を作っている頃からロビー(デ・ミッケリー/ギター)と曲のアイディアを練っていたし、全体のストーリーについてバンド全員と話し合っていた。それからジャコモが歌詞を書き始めたんだ。サーガの完結についてもイメージは固まっているよ。今はまだ、それを明かすことは出来ないけどね!ラプソディー・オブ・ファイアの熱心なファンは、音楽はもちろん、歌詞やコンセプトにも耳を傾けてくれる。 世界中のファンが手の汗を握るようなビッグなストーリーにするよ。ただ、今は『ジ・エイス・マウンテン』ツアーを成功させることを最優先に考えている。次のアルバムに向けて幾つかアイディアはあるけど、急がず焦らず、良いものを作るようにするよ。

●「テイルズ・オブ・ア・ヒーローズ・フェイト」の俳優クリストファー・リーのナレーションはいつ録ったのですか?彼とは『シンフォニー・オブ・エンチャンテッド・ランズII』(2004)や「ザ・マジック・オブ・ザ・ウィザーズ・ドリーム」シングル・ヴァージョンで共演しましたが、2015年に亡くなっています。彼を墓場から蘇らせたのでしょうか?

俺とロビーでストーリーについて話し合っているとき、友人の映画監督ニール・ジョンソンに「生前のクリストファー・リーの未発表ナレーション音源がある」と言われたんだ。ニールは1990年代に俺たちのミュージック・ビデオを作ってくれたことがあって、彼が監督した映画『ローグ・ウォリアー 全面戦争』(2017)では俺が音楽を手がけた。彼の映画用にクリストファーがナレーションをしたけど、そのプロジェクトが完成に至らなかったんだ。音声ファイルを送ってもらって、俺たちが考えていたコンセプトと完璧に合致しているのに衝撃を受けた。信じられなかったね。全身に鳥肌が立ったよ。

●クリストファー・リーのナレーションに合わせて、サーガのコンセプト内容を変える必要はありましたか?

いや、全然なかった。まるで生前のクリストファーが我々のために録っておいてくれたようだった。君の言うとおり、彼が蘇ったんじゃないかと思ったよ。

●彼のナレーションなどの未使用トラックはまだ残っていますか?

いや、もう残っていない。これで彼との“共演”は終わりだ。残念なことだけどね。

●「I am become Death, the destroyer of worlds(我は死神、世界の破壊者となった)」というナレーションのセリフはヒンドゥー教の聖典『バガヴァッド・ギーター』の一節で、J・ロバート・オッペンハイマー博士(マンハッタンプロジェクトの指導者)が原子爆弾を開発したときに引用したことでも知られていますが、どんなメッセージを込めたのですか?どんな意味がありますか?

その軌跡を通じて、ラプソディー・オブ・ファイアは独自のサーガを追求してきた。北欧神話やケルト神話などからインスピレーションを受けながらも、既存の神話やサーガを題材にすることはなかったんだ。それに、我々の住む21世紀の世界を舞台にすることもなかった。そういう意味で、厳密にいえば、我々らしくないかもね。でも例外を設けてでも、クリストファーのナレーションをどうしても使いたかったんだ。

●確かに、重みのあるナレーションですね。

このアルバムには“例外”が幾つもあるんだ。「ザ・カレッジ・トゥ・フォーギヴ」の“許す勇気”なんてタイトルは珍しいよね。「エメラルド・ソード」とは異なった雰囲気がある。ラプソディー・オブ・ファイアらしさは貫かれているけど、現代社会との接点があるんだ。それが“ネフィリムズ・エンパイア”サーガ の特徴のひとつだと思う。虚構世界に旅しながらも、現実と照らし合わせて考えることが出来るんだ。

●“ネフィリムズ・エンパイア”サーガには原爆以上に強力な兵器は登場するでしょうか?

どうだろうね(笑)。ただ、大量破壊兵器はラプソディー・オブ・ファイアの世界観には似合わないと思う。ドラマ性を奪ってしまうからね。ラプソディー・オブ・ファイアの世界は常に血生臭いバトルが繰り広げられているけど、現実の世界よりも人間らしく生きているかも知れない。次のアルバムでは登場人物たちの人間性がより深く描かれることになる。そんなイメージは歌詞やコンセプトだけでなく、作曲にも影響を及ぼすことになるだろう。バンドにとって、今はとてもエキサイティングな時期だよ。

Rhapsody Of Fire / courtesy of M&I Company
Rhapsody Of Fire / courtesy of M&I Company

<ひとつの想いで繋がれた5人の仲間が熱気あふれるステージを繰り広げるライヴ>

●それにしてもラプソディー・オブ・ファイアの歌詞や曲タイトルでは“レジェンド”という言葉が多用されますね。『レジェンダリー・テイルズ』(1997)、『イントゥ・ザ・レジェンド』(2016)があって、新作には「ザ・レジェンド・ゴーズ・オン」という曲があって...。

“レジェンド”という語句は、想像力をかき立てるものがある。過去に何があったのか?それは本当にあったのか?...とかね。それがファンタジーの素晴らしいところだ。イマジネーションがどこまでも拡がっていくんだよ。決して我々がレジェンドだと言っているわけではないよ、念のため(苦笑)。実は今後、曲タイトルに“レジェンド”を使うことはもうないと思うんだ。俺たち自身もう使いすぎたし、後続バンドもさんざん使ってきたから、陳腐になってしまった気もするしね。

●ジャコモ・ヴォーリのヴォーカルをどのように評価しますか?

ジャコモは俺が知っている中で最もストロングで、メロディアスで、エモーショナルなシンガーだ。彼の存在を知ったのは、当時俺が住んでいたベルギーのテレビで見かけたときだった。何の気なしにチャンネルを変えていたら、凄いシンガーがレッド・ツェッペリンの曲を歌っていた。あまりに素晴らしいんでビックリして、すぐに調べて、彼がジャコモ・ヴォーリという人だと知った。それで彼をスタジオに招いてみたんだ。その後、ファビオ(リオーネ/ヴォーカル)が脱退することになって、すぐ彼のことが頭に浮かんだ。ファビオは突然、深夜にFacebookのメッセージを送ってきて、脱退すると言ってきたんだ。残念だったけど、彼は急速に過去の存在となった。それよりもジャコモと新しい歴史を築いていくことに興味が移ったよ。

●6月の来日公演で初めてラプソディー・オブ・ファイアのライヴを見る日本のファンに、どのように説明しますか?

ひとつの想いで繋がれた5人の仲間が熱気あふれるステージ・パフォーマンスを繰り広げる、エネルギーと緊張感に満ちたライヴだ。昔からのファンはもちろん、ぜひ新しいファンに大勢来て欲しいね。『ジ・エイス・マウンテン』はバンドにとって新しいラインアップによる新しいスタートだ。ぜひ一緒に、新しい旅立ちに参加して欲しい。夏にはヨーロッパのフェスティバルに幾つも出演するし、ニュー・アルバムの曲作りも続ける。エネルギーが流れているよ。今回、俺はジャパン・ツアーの1週間前に日本に入って、準備をするんだ。早めに入って、文化に触れたりしながら、心の余裕を持って日本でのライヴに臨みたいからね。俺自身、今回のジャパン・ツアーに凄く気合いが入っているんだ。

【THE EIGHTH MOUNTAIN JAPAN TOUR 2019 〜 Melodic Power Metal Night Vol.25 〜 】

- 6月6日(木)梅田クラブクアトロ

開場18:00/開演19:00

- 6月7日(金)渋谷クラブクアトロ

開場18:00/開演19:00

来日公演オフィシャル・サイト/M&Iカンパニー

http://www.mandicompany.co.jp/RhapsodyOfFire.html

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https://news.yahoo.co.jp/byline/yamazakitomoyuki/20160310-00055248/

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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