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【インタビュー】ラプソディー・オブ・ファイア、2016年3月来日。シンフォニック・メタルが鳴り響く

山崎智之音楽ライター
Rhapsody Of Fire

ヨーロピアンの香り漂うシンフォニック・ヘヴィ・メタルで世界的な人気を誇るラプソディー・オブ・ファイアが2016年3月、来日公演を行う。

イタリア北東の都市トリエステで結成、クラシカルなパワー・メタルとドラマチックな叙事詩の歌詞が支持されてきた彼らにとって、日本を訪れるのはこれが3度目、約2年ぶりとなる。ニュー・アルバム『イントゥ・ザ・レジェンド』を引っ提げてのライヴは、そのタイトル通り“伝説”に残るものとなるだろう。

来日を目前にして、バンドのオリジナル・メンバーにしてキーボード奏者のアレックス・スタロポリに語ってもらった。

彼はジャパン・ツアーへの意気込みに加えて、“シネマチック=映画的”ともいわれるサウンドの原点にまで遡ってくれた。

これからは毎年でも日本でプレイしたい

●日本でのショーは、どのようなものになるでしょうか?

今回の日本公演は『イントゥ・ザ・レジェンド』ワールド・ツアーの最初期のものなんだ。日本の前に台湾とインドネシアでショーをやるけど、ほぼワールド・プレミアに近い形だよ。今年初め、アメリカの『70,000トンズ・オブ・メタル・クルーズ』船上ライヴとメキシコ公演で「イントゥ・ザ・レジェンド」を演奏したけど、日本では新作から4、5曲をプレイする。ファンが聴きたいクラシックスも演奏するし、スペシャルなセットリストになるよ。『イントゥ・ザ・レジェンド』はアルバム全曲をライヴで再現可能なんだ。「ディスタント・スカイ」、「イントゥ・ザ・レジェンド」、「レイジ・オブ・ダークネス」、「ウィンターズ・レイン」、それから日本盤ボーナスの「スペランツェ・アモール」もプレイする。初めて日本をツアーしたのは2002年で、それから12年間、来ることが出来なかったんだ。でも2014年に再来日して、今回3度目のジャパン・ツアーをすることが出来て嬉しいよ。これからは毎年でも日本でプレイしたいね。

●15分を超える大曲「キッス・オブ・ライフ」をライヴでプレイすることは可能ですか?

「キッス・オブ・ライフ」は長い曲だけど、ライヴで演奏すること自体はそれほど難しいことではないよ。ただ、ライヴで演るには長すぎるかもね。この曲をプレイするあいだに3曲をプレイ出来るから、今回はパスすると思う。ただ俺たちにとって重要な曲だし、いつかこの曲をプレイするスペシャル・ライヴをやりたい。

●日本と台湾、インドネシア以外に、アジア圏でライヴをやったことはありますか?

2010年に北京と上海でショーをやったことがある。とても興味深い経験だった。中国では俺たちのCDを入手するのが困難だし、インターネットで音楽を聴くのも規制されているから、 俺たちの曲をひとつも知らないまま見に来る人も少なくなかったんだ。でも彼らはすごく盛り上がってくれたし、潜在的に凄く大きな市場だと考えているから、また近いうちに中国でプレイしたいね。

●中国本土でライヴを行うロック・バンドは、事前にセットリストと歌詞を提出しなければならないというのは本当ですか?

ああ、本当だよ。それが義務づけられているからね。ただ、元々俺たちの歌詞には反社会的な要素がないし、政治に批判的なメッセージもないから、特に問題はなかった。

●2人いたギタリストのうちトム・ヘスが脱退して、ロビー・デ・ミケーリ1人になったことは、バンドのライヴにどんな変化をおよぼしましたか?

やりやすくなった、の一言だね。誤解がないように言っておくと、トムは素晴らしいギタリストだ。でもラプソディー・オブ・ファイアの音楽にはギターやキーボードがあって、バンドの演奏以外にもオーケストラや効果音、ナレーションのプレイバックがあるし、十分以上の情報量がある。俺たちのサウンド・エンジニアは音の魔術師だけど、あまりに音が多くなってしまうと、音がごちゃごちゃしてしまうのは避けられないんだ。これからはギターは1人でいいと思う。しかもロビーは俺とルカ(トゥリッリ/ギター。2011年に脱退)がラプソディー・オブ・ファイアを結成する以前からのバンド仲間なんだ。だから彼は俺たちの音楽の世界観を最初から判っている。ルカがバンドを脱退したとき、彼に声をかけるのが自然だったんだ。

●ラプソディーは“エメラルド・ソード・サーガ”や“ダーク・シークレット・サーガ”など物語性のある作品を発表してきましたが、それに続くサーガは考えていますか?それともルカが脱退したことで、一段落でしょうか?

どうだろうな、やらないとは言わないけど、ただやるのでは意味がない。やるとしたら特別なものでなければダメだ。かつてはルカと俺で曲を書いていたし、歌詞も彼が中心になって、彼のヴィジョンに基づいて書かれていた。ルカと一緒に作った音楽は誇りにしているし、これからもライヴでプレイし続けるだろう。でも『イントゥ・ザ・レジェンド』ではサーガよりも、1曲ごとに自由なイマジネーションを羽ばたかせるようにしたんだ。ファビオ(・リオーネ/ヴォーカル)は素晴らしいソングライターだし、バンドの音楽に新しい世界観をもたらしているよ。それに彼は初期の曲も歌いこなせるけど、自分の言葉で歌う方が本領を発揮できる。 新曲での彼のヴォーカルは本当に輝いているよ。

『イントゥ・ザ・レジェンド』(キングレコード/発売中)
『イントゥ・ザ・レジェンド』(キングレコード/発売中)

クリストファー・リーはドラキュラを嫌っていた

●1997年にファースト・アルバム『レジェンダリー・テイルズ』を発表したとき、海外盤には“ハリウッド・メタル”と書かれたステッカーが貼られていましたが、あれは誰のアイディアだったのでしょうか?あなた達の音楽のシンフォニックでオペラチックなアプローチはきわめてヨーロッパ的だし、やや違和感をおぼえたのですが…。

あのジャンル名を考えたのはアルバムを出した『リム・ミュージック』のオーナーで、当時のマネージャーのアイディアだよ。『レジェンダリー・テイルズ』を聴いて、彼はハリウッドの歴史超大作のような、壮大なスケールのドラマを感じたんだ。ただハリウッドというとショービジネスみたいな要素もあるし、それは俺たちの音楽とは異なっていたと思う。

●あなたがインスピレーションを得る映画音楽の作曲家と、その代表的作品は?

ジェイムズ・ホーナーの『ブレイブハート』、ハンス・ジマーの『グラディエーター』…最近ではブライアン・タイラーが天才だと思う。『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』や『ワイルド・スピード SKY MISSION』など、ロック楽器を使ったモダンな音楽性からクラシカルなオーケストラまでをこなす手腕は本当に素晴らしいよ。

●イタリアの映画音楽といえばエンニオ・モリコーネやニーノ・ロータのような大御所がいますが、彼らからは影響を受けましたか?

子供の頃からウェスタンが好きだったし、『続・夕陽のガンマン』なんかの音楽は大好きだったんだ。でも、その作曲家を意識するようになったのは、ある程度大きくなってからだった。エンニオ・モリコーネの映画スコアは映像をより効果的にする素晴らしいものだ。当時は映画音楽に予算を割くことが出来たから、本格的なフル・オーケストラを使ったりしてね。セルジオ・レオーネ監督の一連の映画で彼がやったことは、現代の映画音楽に多大な影響を与えたと思う。それぞれの登場人物のテーマとなるモチーフを書いたのも、彼が最初の一人なんだ。もしかしたら彼以前にもいたかも知れないけど、彼のおかげで普及したことは確かだ。

●あとイタリア映画の音楽といえばゴブリンが有名ですが、彼らの曲をカヴァーしていますよね?

その通り、『フェノミナ』から「クイーン・オブ・ザ・ダーク・ホライズンズ」、そして『スリープレス』のテーマ曲をカヴァーしている。ゴブリンのクラウディオ・シモネッティは尊敬する作曲家で、友人なんだ。

●名優クリストファー・リーとの交流について教えて下さい。

クリストファーはありとあらゆる映画シリーズに出演している。『ロード・オブ・ザ・リング』や『スター・ウォーズ』、『007』、ドラキュラ、フランケンシュタイン…でも俺たちはそれより彼の声が好きだったんだ。それでアルバム『シンフォニー・オブ・エンチャンテッド・ランズII』(2004)でナレーションをやってもらうことにした。ロンドンのスタジオで彼の語りをレコーディングしたけど、本当に素晴らしい経験だったよ。すぐにレコーディングは終わって、ミーティング・ルームで話をした。すると彼は「みんな私に演技やナレーションを求めるけど、本当は歌うのが好きなんだ」と言って、突然歌い出したからビックリしたね。イタリア語のオペラを、巧みなテナーとバリトンで歌ってくれたんだ。そのときは彼が9カ国語を話せるのを知らなかった。それで「ザ・マジック・オブ・ザ・ウィザーズ・ドリーム」のシングル・ヴァージョンで彼とファビオにデュエットをしてもらったんだ。彼は当時もう80歳を超えていたのに、新しい挑戦にすごくスリルを感じていたし、ヘヴィ・メタルという音楽の持つエネルギーを肌で感じてくれた。彼がその後、ヘヴィ・メタルのアルバム『シャルルマーニュ』を作ったのは、俺たちとの作業がきっかけになったと話してくれて、誇りに思ったよ。記憶に残っているのは、彼がドラキュラの役柄を嫌っていたことだ。「私の前では、その名前を出さないで欲しい」と言っていたよ(笑)。彼が亡くなってしまったのは、とても残念だ。いずれまた一緒にやろうって話していたんだ。

●それでは日本でのライヴを楽しみにしています!

俺たちも楽しみにしているよ。ラプソディ・オブ・ファイアのショーにはたくさんのエネルギーとエモーション、そして音楽がある。それらを日本のみんなと共有できるのは、最高の経験だ。

RHAPSODY OF FIRE『INTO THE LEGEND』 Japan Tour 2016

〜 Melodic Power Metal Night Vol.18 〜

ラプソディー・オブ・ファイア

【大阪公演】

■2016年3月10日(木)

梅田クラブクアトロ

開場18:00/開演19:00

【東京公演】

■2016年3月11日(金)

渋谷・TSUTAYA O-EAST

OPEN18:00/START19:00

来日公演オフィシャルサイト: M&Iカンパニーhttp://www.mandicompany.co.jp/RhapsodyOfFire.html

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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